今シーズンよりメンズ アーティスティック ディレクターに就任したキム・ジョーンズ(Kim Jones)率いるディオール(DIOR)のメンズ 2019サマーコレクションが6月23日、パリファッションウィークで発表された。前任アーティスティック ディレクターのクリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)はベルルッティ(BERLUTI)に移籍している。
パリ4区のフランス共和国親衛隊兵舎で行われたコレクションは、円形会場の中央にカウズ(KAWS)の代表作であるBFFの巨大なオブジェが設置され、7万本のピンクと黒のピオニーやバラでキムのファーストコレクションを祝った。KAWSは同ブランドのアイコンである“BEE”(蜂)も今回デザインしており、ショーの招待状にも使用されたこの新しいアイコンは、今回のコレクションでも様々なアイテムに登場した。
コレクションは前シーズンまでキム・ジョーンズがアーティスティック ディレクターを務めてきたルイ・ヴィトン メンズで仕掛けてきたストリートでのバズを狙ったものではなく、ディオールのエレガンスのコードに沿った構成となった。
それはKAWSのオブジェの手の上に乗った陶器の犬が代弁しており、ムッシュ ディオールの愛犬“ボビー”をモデルにしたもの。当時に発売された香水「ミス ディオール」の記念ボトルを再現している。全編に使用された花柄はムッシュ ディオールの自然への愛と、花のような女性への情熱をオマージュしたもの。またムッシュが愛用したティーカップ、同様に当時アヴェニュー モンテニュー 30番地のブティックのために選ばれたフランスを代表する伝統的なパターンのトワル・ド・ジュイも様々な形で登場している。
彼が宣言したのはディオールのオートクチュール メゾンとしてのメンズライン。今シーズンよりブランド名も「DIOR」に変更され、“HOMME”がなくなった。
各アイテムは、チュールや刺繍が贅沢に使用され、ピンクやイエローなどスーツのカラーパレットもウィメンズと言われても違和感がない。スーツのシルエットはショルダーが丸みを帯び、ポケットなどもウィメンズのディテールがデザインのヒントになっているように見える。
特筆すべきはウィメンズのアイコンバッグである「サドル」バッグをモチーフにしたクラッチやリュック、ウエストバッグなどへの展開。それに“BEE”や“ボビー”のチャームで華やかな遊びを持たせ、コレクターマインドを刺激するなど、ジェンダーの垣根がない。かつてエディ・スリマン(Hedi Slimane)がデザインしたディオール オムのスーツを女性たちが先を争って着た時代が、華やかになってよみがえったかのようだ。
さらに帽子デザイナーのスティーブン・ジョーンズ(Stephen Jones)がデザインしたキャップ、マシュー・ウィリアムソン(Matthew Williamson)がデザインしたCDロゴのバックルのベルト、スニーカーなど、アクセサリーアイテムの充実はSNS時代にぴったりだ。
なによりキムが今回のために起用したアンブッシュ®のデザイナー、ユン(YOON)の手掛けたジュエリーは、DIORのロゴモチーフのリング、キーチェーンなどクラブやスケーターシーンとのラインをうまくコネクトしており、ラグジュアリーブランド層へのストリートカルチャー伝道師としてのキムの本領発揮といったところだ。