メンズのコレクションをウィメンズに統合するなどこの数シーズン、ランウェイショーが減少傾向にあるミラノメンズ。展示会オーダーだけでショーはスキップというバイヤーが増える中で、彼らの足をミラノに向かわせるのはプラダの存在が大きい。単にメンズのコレクションと言うだけでなく、3ヶ月後に発表されるウィメンズのプロローグの要素も含んでおり、その背景にあるミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)の感じている時代感を知るには、ショー会場の空気感を知っておく必要があるからだ。
毎シーズン、AMOがデザインするショーの会場デザインは、そのシーズンのプラダのファッションストーリーを解読する重要な手がかりとなる。今シーズンはネオンライトと透明のシート。客席はすべて透明のインフレータブルスツール。ヴェルナー・パントン(Verner Panton)の60年代の作品だが、ピンクのネオンライトがビニールに透過、反射する不思議なトリップ感が包む。60年代米アニメの『宇宙家族』(原題: The Jetsons)のような空間。
インナーにグリーン、ピンク、ブルー、マスタード、バーガンディーのハイネックにブラウンのレザーコート、広いラペルのシングルジャケット、サーファーブームの時に流行したホップサックパンツを思わせるベルテッドのニットパンツと無地のアイテム。オープニングは明るいカラーでコーディネートされた70年代カレッジルックを思わせるタイニーなルックが続いた。
ショートスリーブのニットシャツの胸や、インに着たハイネックシャツの首元にはプラダのロゴ。ミントグリーンのハイネックにクリースの入ったデニムパンツ、黒のローファーに代表されるキャンピーなインテリスタイルながら、インフレートされたかのようにデフォルメされたフライトキャップ(あるいは闘牛士帽/モンテラ)が、年代やライフスタイルを超越した不思議なバランスを描く。
ジャケットだけではなくブルゾン、シャツ、大きな衿のハーフジップのニットプルオーバーなど、ほとんどのトップスがショート丈で、すべてボトムとのボーダーをはっきりさせるシルエット。それは昨今のオーバーサイズのトレンドと袂を分かつプラダの宣言にも映る。特に、超ミニとも言えるショートパンツは白、黒、デニム、オレンジ、バーガンディーなどさまざまなカラーで展開され、新しいイタリアンスタイルを生み出している。
北欧のミッドセンチュリーモダンのインテリアファブリックを代表するかのようなフラワーやオプティカルのモチーフ、サイケデリック、アニメ、フォトコラージュなどプリントアイテムはいつもながらの楽しさ。ヴェルナー・パントンのスペイシーなデザインのなかでミウッチャ・プラダのレトロスペクティブが、独特の新しさを感じさせたコレクション。
Text: Tatsuya Noda