アンダーカバー(UNDERCOVER)の2019年春夏メンズコレクションが、6月20日にフランス・パリのパレ・ド・トーキョーで発表された。
今シーズンから9月のウィメンズのパリコレでのショーをやめ、6月のパリメンズでの発表にシフトしたことでも注目が集まった。メンズのランウェイは今年1月にイタリア・フィレンツェでピッティ・ウオモのゲストデザイナーとして、ショーを開催。タカヒロミヤシタザソロイスト.の宮下貴裕とのジョイントショーだったが、ピッティでの2回目のコレクション発表となり、高橋盾のメンズデザイナーとしての評価を世界的にさらに高める結果となった。
一貫してシーズンコンセプトのストーリーが明確なのはウィメンズのコレクション同様。ピッティ・ウオモで発表された前シーズンは映画『2001年宇宙の旅』へのオマージュだったが、今回のテーマは「ニュー・ウォーリアーズ(THE NEW WARRIORS)」。『2001年宇宙の旅』が公開された約10年後の1979年に公開された米映画『ウォリアーズ(The Warriors)』が下敷きとなっている。
会場外にはニュー・ウォーリアーズのロゴのフラッグが掲げられ、計8チームのグラフィックが大きく描かれたフラッグを掲出。ショーはその8グループ各6人の不良チームがフラッグを掲げて次々にランウェイに登場するという構成。モデルとして本木雅弘・内田也哉子夫妻の長男であるUTAが同ショーでパリコレデビューを果たした。
各チームは80年代初めにロンドンの4ADレーベルからデビューしたゴシック系の先駆者とも言えるバンド、バウハウス(Bauhaus)の世界観を白と黒のグラフィックでチームカラーを構成した「VLADS」や、アーガイルやタータンなどブリティッシュトラッドを『時計仕掛けのオレンジ』を思わせるシルクハットとライダースなどでポップにまとめた「Bootleg Truth」、ヲタク文化をイメージさせる「Bloody Greekers」はアニメのスウェットにセンタークリースのデニムパンツで手に金槌、フルフェイスのヘルメットやマスクに“禅”の文字をフロントにあしらったブルゾンやライダースパンツで現れた「Zenmondooo」など、それぞれのチームの背景を想像するのが楽しくなるパーツが随所に潜んでいる。
各チームのコンセプトワーク、秀逸なグラフィックに心と目が奪われがちながら、全48ルックスのアイテムは、アンダーカバーの得意とするワークウエア、アウトドア、スポーツウエアなどをベースに、ブリティッシュトラッド、パンクなどの要素をミックスし、現在のメンズファッションの本流となるマーケットコンシャスなアイテムに落とし込まれている。
特に「X SHADOW HOPPERS」のテーラードのテクニックとミリタリー、アウトドアの機能性をミックスしたアイテムや、アスレジャーをパンクにこなした「THE LARMS」などは、その素材使いの先取精神と反骨精神といったブランドの魅力が十分に伝わってくる。
ショー終了後の楽屋では海外メディアのベテラン記者たちが目を輝かせながら、「この場面のインスピレーションソースは○○だと思うんだけど? 」「僕はこのチームが気に入ったんだけど、ジュンはどれが一番好き? 」とデザイナーに質問している姿は、“ストリート”と評されるブームの背景がサブカルチャーであり、その震源地のひとつが紛れもなくこのブランドであることを確信する。そして、その質問に楽しそうに答える高橋盾の楽しそうな顔を見ると、ウィメンズからメンズにステージを変えた理由は言わずもがなだ。
Text: Tatsuya Noda