光と緑、建築美が織り成す現代の“桃源郷”。「ミホ ミュージアム」で自然とアートの刺激的な融合体験

2018.08.11

滋賀県甲賀市、緑豊かな湖南アルプスの山中に位置する「ミホ ミュージアム(MIHO MUSEUM)」は、上質なアートと雄大な自然を一度に満喫できる日最高峰の美術館として人気を博している。

「美術を通して、世の中を美しく、平和に、楽しいものに」との想いから生まれた同館は、書画、陶磁茶道具、漆工芸を始めとした多彩な日本美術品とともに、エジプト、ギリシャローマアメリカ、中央アジア中国など、世界各地の古代美術品約3,000点を収蔵。常時250から500点が公開され、質の高いコレクションは海外からも高い評価を得ている。しかし、ミホ ミュージアムの魅力はその貴重なコレクションだけではない。

圧巻は自然と一体化した建築美。パリ・ルーヴル美術館のガラスのピラミッドなどで知られる建築家のI.M.ペイ氏が手掛けた遊歩道からトンネルと橋を経て美術館へと至るアプローチは、中国の古典『桃源記』に描かれた桃源郷がモチーフになっている。多くの建築評論家が“時空を越えるトンネル”と評したことからもわかるように、トンネル内部は時を忘れる異空間。銀色の壁が山の緑やの薄桃色を映し、季節の中で微妙に表情を変えていく。


トンネルを抜け、渓谷に渡された全長120メートルの吊り橋を経て到達する美術館棟。そのエントランスホールは不思議な律動感で満たされている。丸窓のついた大きなドアが音もなく左右に開くと、ルーバー越しに柔らかな光を浴びて、狭い風除室に入る。さらに内側の扉が開くと、ガラスルーフが歩調に合わせてゆっくりと上昇。視界の広がりとともにルーバーが複雑に角度を変えながら、穏やかな山々が連なる大パノラマへと導いてくれる。


「自然と建物と美術品の融合」をテーマに、美術館棟の約8割が地中に埋設された構造になっているが、明るい太陽の光や豊かな木々のぬくもりを直に感じられる空間は、それをまったく感じさせない。幾何学模様に張り巡らされたガラスのアトリウム構造は、光との調和に加えて、窓の向こうに見える樹齢180年の松の枝ぶりや、その先に望む湖南アルプスの山並みまでも見事に計算し尽くされており、その幻想的な風景は屏風絵のような美しさだ。

また、館内のレストランカフェ、ミュージアムショップも訪れる楽しみの一つだろう。レストランとカフェでは、そば、うどん、おむすびなど、和食の魅力を凝縮したメニューの他、季節の和洋菓子、コーヒー、ハーブティー、ワインなどを用意。無肥料・無農薬の厳選食材を使用したメニューはファンも多い。3つのミュージアムショップでは、オリジナルグッズ、ステーショナリー書籍雑貨の他、オリジナルワインの販売も行っている。

なお、現在は8月26日まで夏季特別展「赤と青のひ・み・つ   聖なる色のミステリー」が会期中。修復後、初公開となる江戸時代を代表する絵師・伊藤若冲筆「達磨図」の展示を始め、古代から近世における美術品に表された赤と青に焦点を当て、人々と色との関わりを紹介する他、色のエネルギーを感じられる様々な体験コーナーとワークショップを実施。

夏の休暇を利用して、都会の喧騒から遥か離れた滋賀の“桃源郷”へ足を延ばしてみては。


【展覧会情報】
2018年夏季特別展 夏休みスペシャル企画
「赤と青のひ・み・つ   聖なる色のミステリー」
会期:6月30日~8月26日
会場:MIHO MUSEUM
住所:滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
時間:10:00~17:00 ※入館は16:00まで
休館日:月曜日
入場料:一般1,100円、高・大生800円、小・中生300円 ※20名以上の団体は各200円割引
Akiko Hanazawa
  • 夏には木々の緑色がステンレスの壁に反射し、「緑色のトンネル」に
  • 美術館棟全景
  • 美術館棟エントランス
  • トンネルから望む美術館棟
  • 美術館棟入口(夢の扉)
  • 美術館棟 北館回廊外観
  • 美術館棟エントランス
  • 南館地下1階 ディオニュソス・モザイク
  • トンネルから望む美術館棟
  • 美術館棟
  • 伊藤若冲筆「達磨図」/江戸時代 18世紀 絹本著色 一幅 MIHO MUSEUM蔵
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