1970年代にニューヨーク州ブロンクスのストリートシーンにおいて、スプレーやフェルトペンなどを用いて壁や電車などに落書きすることから始まったと言われるグラフィティーカルチャー。近年では「リーガル・ウォール」と呼ばれる街の壁を清掃し、合法的な壁画キャンバスとして生まれ変わらせる活動も広まるなど、日本国内でも徐々に社会の中での認知が高まり、人々の生活へと溶け込んでいる。
さらには次第にファッションとアートも従来より密接な関係に。2019年春夏コレクションでも、多くのブランドが様々なアーティストとのコラボレーションを発表するなど、近年ではもはや両者の関係性は切り離せないほど深く繋がっている。
伊勢丹新宿店では、9月12日から17日にイベント「SOUL CAMP 2018 at ISETAN」が開催される。2015年にスタートした都市型音楽フェス「SOUL CAMP」の舞台を百貨店に移して行われるという異色のこのイベントでは、音楽ライブをはじめフェスファッションにグッズ、フェス飯などが楽しめる。さらに会期中には、9人の日本人ペインターたちが参加しライブペインティングも行われる。
その内の一人、ヒロットン(Hirotton)は、パンクやハードコアといったレベルミュージック、そしたスケーター文化から影響を受け、動植物といった自然をモチーフにした作品や、ポリティカルなメッセージ性を感じさせる作風で知られるペイントアーティスト。記録的な猛暑となった7月末に、原宿HENRY HAUZにて開催された個展「NO TOMORROW」に在廊中であった彼に話を訊いた。
「今回の個展のタイトル“NO TOMMOROW”には、“Paint As If There's No Tomorrow(明日がないつもりで描け)”っていう意味を込めているんです。一見、“明日はない”というネガティブな言葉のように思えて、ポジティブな言葉(“明日がないつもりで描け”)が隠れている。今回、騙し絵みたいな作品も飾ってるんですけど、角度を変えると、違ったものが見えてきますよね。実はそういうものをテーマとしていて。受け手にもアンテナを張ってもらいたいし、その人それぞれの感性で感じてもらいたいんです」。
そう語る通り、今回の個展では禍々しいドクロと、自然の動植物といった彼の得意とするモチーフが混ざりあった作品が数多く展示されていた。彼の作品は繊細な線使いや、写実的なタッチが特徴的だが、意外にも高校卒業後に進学した大阪芸術大学では、絵ではなく金属溶接などを学んでいたという。そんな中、彼の価値観、人生を大きく変えたのは、イギリスはロンドンへの滞在。元々ロンドンパンクなどが好きだったいう彼は、在学中に旅行で訪れたロンドンに感化され、大学卒業後再び渡英。長期滞在することになった。
「何も具体的な目的とかはなかったけど、とりあえず行ってみて。向こうで一緒に住んでたスケーターのやつらが、ZINEとかを自分たちで作ってたんです。クオリティーは決して高くないけど、彼らの“とにかく自分で発信する”っていうスタンスだったり、その熱量にすごく影響を受けて。もちろん向こうでは素材や道具もないので、金属加工とかはできない。だから、とりあえずパッと始められたのが絵だったんです。ロンドンに行ってなかったら絵は描いてなかったと思いますね」。
そこからポスカをメインに使用した、彼のペインターとしてのキャリアがスタートした。「ポスカってどこにでも持ち運べるし、インクもたっぷり出るので、壁とかにペイントする時もかすれたりせずに、スムーズなラインとかを描くことができるんですよね。イギリスでも日本からポスカを取り寄せて使ってるやつもいるんですよ。それくらいクオリティーの高いツールなんです。昨年、アメリカのBB Bastidasっていう同い年のペインターと開催した合同展で、コラボ作品を作ってみたんですけど、そこで今回使ってるようなアクリル絵の具の魅力にも気づいて。今回は大々的に取り入れてみました」。
また、細部のディティールにこだわる自身の作風や、多用する動植物のモチーフについては、こう語る。「昔からグラフィティーでも、すごく細かく描いているものに惹かれてました。よく考えたら、昔から動物図鑑とか、NHKの自然のドキュメンタリーとかが大好きでした。虫とかも好きで、小さい頃は昆虫博士になりたいと思ってたくらいで(笑)」。
また、今回の個展でも多数展示されていた、「5minutes Drawing」というシリーズも、彼のペインターとしてのスタンスをよく表している。中にはシンプルながらも強い社会的メッセージを感じさせるものや、感情を発露させたような作品も見受けられる。「普段、メッセージが先かモチーフが先かっていうのはバラバラなんですけど、この『5minutes Drawing』っていうシリーズに関しては、好きな曲の歌詞や映画のセリフ、あとは日常の中で思いついたアイディアを基に、そこから5分くらいでバーって描くことにしていて。最近ではこだわりが出てきてしまって、実際は30分くらいかかってるんですけど(笑)」。
最後に、ペイントアーティストHirottonとして核となる、パンクやスケーター文化について聞いた。彼はそういったカルチャーから、何を得たのだろうか。「やっぱりD.I.Y.の精神だと思います。Tシャツとかも業者とかに出さずに、自分で刷ってるんですけど、それはそうした方がやっぱり熱量みたいなものが伝わるんじゃないかなって思ってるからで。できる範囲なら、自分たちでやってみる。それが大事だと思いますね」。
さらには次第にファッションとアートも従来より密接な関係に。2019年春夏コレクションでも、多くのブランドが様々なアーティストとのコラボレーションを発表するなど、近年ではもはや両者の関係性は切り離せないほど深く繋がっている。
伊勢丹新宿店では、9月12日から17日にイベント「SOUL CAMP 2018 at ISETAN」が開催される。2015年にスタートした都市型音楽フェス「SOUL CAMP」の舞台を百貨店に移して行われるという異色のこのイベントでは、音楽ライブをはじめフェスファッションにグッズ、フェス飯などが楽しめる。さらに会期中には、9人の日本人ペインターたちが参加しライブペインティングも行われる。
その内の一人、ヒロットン(Hirotton)は、パンクやハードコアといったレベルミュージック、そしたスケーター文化から影響を受け、動植物といった自然をモチーフにした作品や、ポリティカルなメッセージ性を感じさせる作風で知られるペイントアーティスト。記録的な猛暑となった7月末に、原宿HENRY HAUZにて開催された個展「NO TOMORROW」に在廊中であった彼に話を訊いた。
「今回の個展のタイトル“NO TOMMOROW”には、“Paint As If There's No Tomorrow(明日がないつもりで描け)”っていう意味を込めているんです。一見、“明日はない”というネガティブな言葉のように思えて、ポジティブな言葉(“明日がないつもりで描け”)が隠れている。今回、騙し絵みたいな作品も飾ってるんですけど、角度を変えると、違ったものが見えてきますよね。実はそういうものをテーマとしていて。受け手にもアンテナを張ってもらいたいし、その人それぞれの感性で感じてもらいたいんです」。
そう語る通り、今回の個展では禍々しいドクロと、自然の動植物といった彼の得意とするモチーフが混ざりあった作品が数多く展示されていた。彼の作品は繊細な線使いや、写実的なタッチが特徴的だが、意外にも高校卒業後に進学した大阪芸術大学では、絵ではなく金属溶接などを学んでいたという。そんな中、彼の価値観、人生を大きく変えたのは、イギリスはロンドンへの滞在。元々ロンドンパンクなどが好きだったいう彼は、在学中に旅行で訪れたロンドンに感化され、大学卒業後再び渡英。長期滞在することになった。
「何も具体的な目的とかはなかったけど、とりあえず行ってみて。向こうで一緒に住んでたスケーターのやつらが、ZINEとかを自分たちで作ってたんです。クオリティーは決して高くないけど、彼らの“とにかく自分で発信する”っていうスタンスだったり、その熱量にすごく影響を受けて。もちろん向こうでは素材や道具もないので、金属加工とかはできない。だから、とりあえずパッと始められたのが絵だったんです。ロンドンに行ってなかったら絵は描いてなかったと思いますね」。
そこからポスカをメインに使用した、彼のペインターとしてのキャリアがスタートした。「ポスカってどこにでも持ち運べるし、インクもたっぷり出るので、壁とかにペイントする時もかすれたりせずに、スムーズなラインとかを描くことができるんですよね。イギリスでも日本からポスカを取り寄せて使ってるやつもいるんですよ。それくらいクオリティーの高いツールなんです。昨年、アメリカのBB Bastidasっていう同い年のペインターと開催した合同展で、コラボ作品を作ってみたんですけど、そこで今回使ってるようなアクリル絵の具の魅力にも気づいて。今回は大々的に取り入れてみました」。
また、細部のディティールにこだわる自身の作風や、多用する動植物のモチーフについては、こう語る。「昔からグラフィティーでも、すごく細かく描いているものに惹かれてました。よく考えたら、昔から動物図鑑とか、NHKの自然のドキュメンタリーとかが大好きでした。虫とかも好きで、小さい頃は昆虫博士になりたいと思ってたくらいで(笑)」。
また、今回の個展でも多数展示されていた、「5minutes Drawing」というシリーズも、彼のペインターとしてのスタンスをよく表している。中にはシンプルながらも強い社会的メッセージを感じさせるものや、感情を発露させたような作品も見受けられる。「普段、メッセージが先かモチーフが先かっていうのはバラバラなんですけど、この『5minutes Drawing』っていうシリーズに関しては、好きな曲の歌詞や映画のセリフ、あとは日常の中で思いついたアイディアを基に、そこから5分くらいでバーって描くことにしていて。最近ではこだわりが出てきてしまって、実際は30分くらいかかってるんですけど(笑)」。
最後に、ペイントアーティストHirottonとして核となる、パンクやスケーター文化について聞いた。彼はそういったカルチャーから、何を得たのだろうか。「やっぱりD.I.Y.の精神だと思います。Tシャツとかも業者とかに出さずに、自分で刷ってるんですけど、それはそうした方がやっぱり熱量みたいなものが伝わるんじゃないかなって思ってるからで。できる範囲なら、自分たちでやってみる。それが大事だと思いますね」。
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