パリのボ・ザール(国立高等美術学校)ホール内に会場を設営して2019年春夏コレクションショーを行ったコム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)。今季も川久保玲は独自の手法を用いて強烈な世界観を描いて見せた。
コレクションは、上質な素材と高いカッティング技術によって作り上げられたテーラードに、あえてハサミを入れ、ジグザグの切り込みから下の地が覗き、肌に直接服をまとっているかのような効果を出したルックで構成。一見妊婦のようにも見えるが、あくまでも肌を強調するための造形だったよう。それらのプロテーゼのようなボディは、樹脂を含ませた布を固めて作り上げられ、タトゥのようなバラのモチーフのプリントを施したポリエステル素材や、ブランド名をグラフィカルにあしらったプリント、新聞記事のプリントで覆われている。
冒頭に登場したテーラードはジャンプスーツ仕立てで、リボン刺繍を施したレースや妖しい光を放つリュレックスの起毛素材をあしらったり、羽を全面に刺繍するなどし、クチュールの世界を想起させた。オーバーサイズのコートジャケットは、横に広がった身頃を巻き付けるシステムで、様々な着こなしが可能。袖とヒップからヘムにかけてカットされているコートドレスなどには、ヒップを強調するかのようなボディが合わせられ、不思議なシルエットを見せる。
美しいテーラードと肉感的なボディとの組み合わせに始終違和感を覚えながらも、ファッションの中でも前人未踏のクリエーションを垣間見る喜びがあり、それが毎シーズンのことであるのだから感服せずにはいられないのだった。