現在、16才の現役高校生ながら、目覚ましい活躍をみせるアーティスト、SASUKEが8月28日に新曲「夏ぼっち」と、自身が作詞・作曲を担当したVtuber「カミナリアイ(ヤッターマン2号)」とのコラボ楽曲「ウラオモテ(Veil Real)」を同時に配信リリースした。
トラックメイカー、シンガー、ダンサーといった多面的な顔を持ち、そのどれもが大人顔負けのスキルでありながら、同時に人懐っこさを感じさせるポップネスも擁した楽曲で、すでに幅広い層からの支持を得ているSASUKE。先日行われたサマソニにも飛び入りで出演。また今年のSpotifyが注目のニューカマーを年間を通じて応援するプログラム「Early Noise」にも選出されている。無邪気な少年の顔と、思慮深い大人の表情を持つ彼は、新時代を迎えたこの日本において、日々何を感じ、アーティスト活動を行っているのだろうか。
連載企画「音色が映す新時代」の第4弾は、フレッシュな才能溢れるSASUKEにフィーチャー。目まぐるしく移り変わる新時代を築くアーティストたちの、現代を生きるスタンスやマインドに迫る同企画。16歳のアーティストが語る、リアルな本音に耳を傾けてほしい。(編集部)
——SASUKEさんは作曲、ダンス、DJ、フィンガー・ドラムなど、自分が好きなことをとことん突きつめてきたと思うんですけど、これまでの歩みを振り返ってみてどう感じますか?
振り返ってみると、意外といろいろやってきたなと思います。普段は振り返ることをまったくしないし、先のこともほぼ考えないんですよ。今だけを見ているというか。元からやりたいことが多すぎたのもあってか、緊張もクヨクヨもしない性格のせいか、テンションはずっと高いままで。たぶん感覚がおかしくなっているんです(笑)。いきなりメジャーで曲をリリースするのも想定外で、MVも本格的に撮影して、気付いたら「めっちゃプロっぽいな」って。テレビに出させてもらったり、楽曲提供やリミックスができたり。今は作曲がいちばん楽しいですね。
——新しい地図 join ミュージック(稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)に「#SINGING」を提供したのも印象深かったです。
僕、音楽ばかりをやっていて、テレビもあまり観ていなかったので、昔の活動のこともそこまで詳しいわけではなかったんですけど、もちろんビッグな方々じゃないですか。だから、そのお話をいただけたときは光栄でした。これまでの楽曲をあらためて聴いた上で一生懸命作った曲を、3人に喜んでもらえたのが何より嬉しかったですね。
——やれることがどんどん広がっている感じですよね。
何も考えず「やってみたい! 」って気持ちだけで、衝動的に歌とラップで曲を出してしまったものの、発声にもだいぶ慣れてきました。歌い始めたのは小6あたりなんですけど、そこからは時間が過ぎるのが早かったですね。
——小〜中学時代はどんな子どもでしたか?
小学校のときは周りから見たらやんちゃというか、迷惑だったと思います(笑)。昼休みに運動場の真ん中でずっと踊ってたり、休み時間に友達を廊下に連れ出して勝手にレッスンを始めてダンスを覚えさせたり。でも、みんな成長してくるじゃないですか。そんな中で僕だけはしゃいでいて成長していないみたいな、取り残された感じがあったので、中学ですごく変わりました。自分を抑えて何もしないほうが楽で、教室で本を読んでいるしゃべらないキャラになって。家で本当の自分を出すスタンスでしたね。
——今は地元・愛媛で、通信制の高校に通っているんでしたっけ?
はい。学校に行くのは年に5日くらい。だいぶ慣れてきましたけど、レポートの期限に追い込まれてたり。夏休みもあまり関係ない感じです。
——今年の夏はフジロックに行って、公開収録もされていましたね。
「フジロックで聞こえてくる音」縛りで、1日目にフィールド・レコーディングをして、その日中に1曲仕上げるっていうのをやって。レコーダーを持って、たぶん誰よりも歩いて、誰よりもいろんな場所へ行って録ってきて、ホテルで朝4時くらいまでかけて作りました。次の日にInterFMさんのブースでその曲をパフォーマンスしたんですけど、天気が大雨で「自分は濡れても機材は守らなきゃ」みたいな(笑)。初めてのフジロックは何かと思い出になりました。
——SASUKEさんはファッションも好きなイメージがあります。
ダンスをやっていたので、ストリート系のファッションが好きなんです。今まではネットで買うことが多かったんですけど、東京に来るようになってからは原宿のお店も行きます。モンキータイム(monkey time)とかビリオネアボーイズクラブ(BILLIONAIRE BOYS CLUB)とか。その日の気分で服は変えますね。
——シングルを数作リリースしてきての感触はどうですか?
想像以上に「いい! 」と言ってもらえて嬉しかったです。僕、小6くらいまでは「自分すごい! 」みたいな感情が強すぎて、その頃にはもう今のように、テレビに出たりインタビューを受けたりするもんだと思い込んでいたんですよ。でも、実際はぜんぜんイケてない状況だったんで、当時かなりショックを受けまして。あと、地元の中学に行くのもショックで、それを知ったときはめちゃくちゃ泣きましたね。音楽の才能とかで、東京の中学へ通えると勝手に思っていたんです。だけど、よくよく考えたらまともな曲も作っていないし、「まあ、そうだよな……」って。そこで「自分はまだ何もできていない」という意識が付いたから、今こうやって素直に喜べる気がします。もし、自惚れたままだったら危なかった(笑)。
——時代や用語的なものがモチーフの曲が多いですよね。
僕は自分のことがけっこう他人事なんですよ。自分がどう見られているかもどうでもよくて、あまり興味がないので、どっちかと言うと世間や時代について考えちゃうんだと思います。
——そんなSASUKEさんにとって、いい曲の基準というのは?
わかりやすいメロディーで、なんとなくお洒落で、聴いていてただ気分がいいような曲ができることもあるんですけど、そういうのは「なんかダメだな」「おもしろくないな」って思っちゃいますね。なんだろう……「まだヘンにできるでしょ! 」みたいな。僕の中でのいい曲って、どこか気持ち悪いところがあるヘンな曲なんです。
——「平成終わるってよ」の1番と2番の間のブリッジのような?
そうです! あんなふうにいきなりマヌケになるというか(笑)。MVでヘンなダンスをしたいイメージがもう浮かんでいたので、あの部分ができたときはめっちゃテンション上がりましたね。
——曲名の通り、平成が終わり、元号も新たになった今の時代に対して、何か感じることはありますか?
16歳の僕が言っていいかわからないですが、いろいろ変わらなきゃいけない状況になってきていて、元号にしても、嫌な事件が起こったあともそうで。そういうときに、ネットで「ここから時代が変わってよくなるといいな」とつぶやく方ってけっこう多いんですよ。でも、言うだけじゃなくて、本当によくするために自分もしっかり参加してほしいなって思います。「◯◯、動きます」じゃないですけど、動かないよりも動く方がいいですよね。
——そうですね。
あとはSNSが社会的にも中心になってきて、ああいうのってグンと進化して慣れてきた頃に悪い点が見えてくるものじゃないですか。それが今なのかなって思います。SNSが発端で始まる問題や事件もよく目にするので。炎上にしたって、悪いのが本人だけじゃない場合もありますし、当人を必要以上に傷つけることになったり、その間にもっと注目すべきことを見逃していたり。声高に反対したいわけじゃないけど、「何やっているんだろうな」「やめたらいいのに」って感じる自分はいますね。
——「J-POPは終わらない」では「日本人はまだ終わらない」とも歌っています。
日本の音楽について書こうとしていたんですけど、書いていたタイミングでやっぱり日々いろいろ起こるので、日本全体のことを歌うようになっていったんですよね。
——新曲の「夏ぼっち」はどんな作品になりましたか?
「J-POPは終わらない」を時間かけて作り込んでいたので、その反動もあって一日でパッとできちゃった曲なんです。あれこれ考えずに自由に作ったら、今思っていたことがまんま曲になった感じで。「夏らしいことを何もやってないな」「ひとりぼっちの夏でも楽しいって自分に言い聞かせてる」っていう曲になりました(笑)。家で録音したセミの鳴き声が入っていたり、ウクレレを弾いたり、買ってきた風鈴の音を入れたり、あまり使ったことがないコードを試したり、久々に歌よりもラップに重点を置いてみたり、歌詞を読むだけでもおもしろみが出るようにストーリーっぽくしてみたり、新鮮な部分は多いですね。
——今後やってみたいことは?
自分で曲を作って、歌って、演奏して、ダンスもやるっていう、やりたい放題なパフォーマンスを世界の大きなステージで実現させたいです。フェスではなく、イメージしているのはワンマンですね。昔の考えのまま言うと、日本ではドーム・ツアーを通過点としてやっておきたいです。新しい音楽のジャンルも作りたい。
——新しい音楽のジャンルはどう作っていきたいと考えていますか?
教授(坂本龍一)といっしょにやりたいという希望はあります。音楽を研究するために何日間か籠るとか、新しいジャンルの定義からお話していきたい。実現できるかわからないですけど。今いちばんお会いしたい人です。
SASUKE『夏ぼっち』
Release Date:2019年8月28日(水)
Label:WARNER MUSIC JAPAN
Tracklist:
1. 夏ぼっち
カミナリアイ feat.ボヤッキー『ウラオモテ(Veil Real)』
Release Date:2019年8月28日(水)
Label:YattermanV
Tracklist:
1. ウラオモテ(Veil Real)