パリへは何度も訪れているが、行くたびに何かやり残したこと、見過ごしたことがある気がして、さほどの理由もないままに機上の人になる女性たちも多いと聞く。パリはそんな不思議な魅力を持つ街だ。しかも世界中のエグゼクティブたちがビジネスのために訪れる都市でもある。
エールフランスのファーストクラスは、そうしたリピーター女性やビジネスのエグゼクティブのために、空港、機内、地上で極上のサービスを用意している。ファーストクラス特集の第2回目は、パリでのサービスを紹介する。
地上でのサービスを行う部署には、ヤン・チップ氏を始め6名の精鋭が配置され世界中からパリを訪れる顧客のコンシェルジュの役割を果たすという。例えば、ファーストクラスの乗客から新しくオープンした美術館を案内して欲しいという要望があれば、早速コンタクトを取りアレンジするのが彼らの仕事だ。
今回の取材のために、用意された美術館ビジットのプログラムは、2014年10月、パリのブーローニュの森にあるアクリマタシオン公園の一角にオープンした美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」だった。
「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」は、LVMHグループを率いるベルナール・アルノーの提唱により誕生したルイ・ヴィトン財団が運営する美術館だ。美術館の設計は、世界的建築家のフランク・ゲイリーによるもので、ガラスとスチール製の建物は、1900年パリ万博のために建てられたグランパレと対比されるという。
まず案内されたのは最上階、ただこの建物には階層の認識がないというのも特徴であり、1階下ったスペースにも空が見える窓があり、自分の位置を見失いそうになる。最上階からの眺めは、パリの歴史が刻まれたエッフル塔やモンマルトルのサクレクール寺院のエリア、新しいパリを象徴するデファンスの凱旋門とパリの新旧を一望できる。館内は、現代アートを中心に展示されている常設展と企画展のスペース、コンサートやパフォーマンスのためのスペースもある。数ヶ月ごとに新しい展示が始まるので、何度も訪れるファンが増えている。この6月にも新しい企画展が始まったばかりだ(展覧会の詳しい情報は http://www.fondationlouisvuitton.fr/ja.html)。
エールフランスのファーストクラス顧客担当者は、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの他に、なかなか立ち入れないラグジュアリーブランドが運営する美術館や博物館への案内も可能という。またレストランもアレンジし同行してくれる。そのときの体調や嗜好を聞き、パリ中のレストランにいつでも予約をとれるシステムも整っているというから、常に万全の用意がされているのだ。
今回は、マドレーヌ寺院のロワイヤル通りにある老舗サロン・ド・テのラデュレへ案内された。1871年パティスリーとして誕生したラデュレの店内は、オペラ座のガルニエの天井画を手がけたジュール・シェレによって「パティシエ天使」が描かれた気品にあふれる空間だ。店内には、おしゃれなマダムたちが、パティスリーと紅茶をいただきながらおしゃべりの花を咲かせていた。お昼時になるとサラダやクラブハウスサンドイッチなどのスナッキングと呼ばれる軽食が人気で、その時間にはビジネスランチをとるスーツ姿の紳士が増えるという。もちろん、ラデュレといえばマカロン、本国のマカロンは心なしか濃厚な味がするのは、フランス人と日本人の味覚の差によるものか、レシピが変えてあるのかと思いを馳せてみた。
フォンダシオン ルイ・ヴィトンでは最新のパリを堪能し、ラデュレではクラシックなパリが今も存在するティータイムを満喫した。エールフランスのファーストクラスのおもてなしは、知的で軽快なフレンチシックの香りがした。