2年目を迎え、突然発表された「ザ・プール青山」の終了宣言。期間ごとにテーマを変え、姿を変えるポップアップショップの究極の形態ながら、2年という時間の中でストーリーが完結するというのは、ハイスピードで動く東京スタイルの最たる例かもしれない。まだ何も考えていないと言いつつ、すでにその次の新しいアイデアに向けて、走り出しているように見える藤原ヒロシへのロングインタビュー第3回。
ーー「ザ・プール青山」を2年で終了することを発表されましたが、その理由は?
スタートから1年経ち、スタッフと話していた時に、マスに広げていくのであれば人材を増やして考えて行かなければならないし、3年目の方向性をどうしていくかという話をしていた場で、プールの役割はすでに達成したということで、一旦終わっても良いのではと言う意見が出ました。それで良いのなら是非やめましょうと(笑)。今回は僕からそれを提案したのではないことだけは言っておきます(笑)。それなら、また次の新しいことができるので。ただ、スペース自体をスクラップするわけではないので、あのスペースは何か違う活用を「JUN」さんが考えられると思います。
ーーザ・プールで出来ることはやりきったという感じですか?
一つやり残したことがあるんです。「ザ・プール」は当初から3つアイデアがあって、一つは今回のプールバー。もうひとつはモータープールです。駐車場の中でお店をやりたいというのが実現できていない。銀座で駐車場のなかに中華料理屋があるのですが、ああいうイメージの店。
ーー銀座8丁目の「帝里加(デリカ)」ですね。伊勢丹にも駐車場ありますが(笑)?
伊勢丹やらせてくれますかね? 車2台分くらいのスペースがあれば良いんですが。それが出来れば、そのときだけ「ザ・プール」は延長するかもしれません。
ーーそれは今回の「ザ・プール新宿」の計画以前からあったコンセプトなんですか?
はい。青山は本当にプールがあったから出来たのですが、地方に出店していく場合、本物のプールがある物件を見つけるのは難しい。それで古いビリヤード屋さんやモータープールでやることを考えていました。
ーー次の新しいことはすでに進めているのですか?
終了すると言っても「ザ・プール青山」はまだ1年間残っているので、まだ何も準備はしていません。ただ、次はコの字カウンターの店がやりたいとは話しています。以前アメリカを旅していたときに質屋(ポーンショップ)があって、コの字カウンターに金網が張ってあって、その向こうで商品が並んでいるというのが面白かったんですね。バーのようなスタイルですが、言えば時計とかを取ってくれるんですね。
ーーコの字カウンターの店というのは、以前からやりたいと考えていたのですか?
いいえ。あと1年で終了する「ザ・プール青山」の次に何をやろうかと考えていたときに、10数年前に行ったアメリカのその店を思い出したんです。今はネットなどで簡単に物が買えるようになって便利になったのですが、人との距離感が大事なのではと改めて考えています。百貨店などは接客をきちんとされているんですが、カウンター越しに話をしながら物を買うというのが、なんか良いのでは、と思っただけです。最近、食事に行く時もカウンターの店が多いのですが、テーブルでウエイターが運んで来るパンより、カウンター越しに出されるパンの方が美味しいと感じるんです。人との距離もそうですが、空間のマジックがある。伊勢丹で買う人も、「ザ・プール青山」で買う人もそれぞれその空間が好きなんだと思います。その空気感は大切ですね。
ーーeコマースの影響も影響も大きいのでしょうね。
昔は同じスニーカーでも、百貨店で買うよりショップで買う方がオシャレだったりしたんですが、今はネットならどこで買っても同じ。仲の良い店だったり、雰囲気のいい店で買うというのがなくなっていくのが寂しいなあ、と少し思います。
■interview & text:野田達哉
>次回(最終回)は、インターネットのことについて話を伺います。
(vol.4へ続く)