6月17日より伊勢丹新宿店で「ザ・プール新宿」のポップアップストアがスタートした。わずか2年間だけの営業として来年春に終了を宣言し、まさに東京を体現する限定コンセプトスペース「ザ・プール青山」の、最初で最後のポップアップストア。オープン初日までその内容が明らかにされなかったテーマは、なんと“ビリヤード”。伊勢丹の1階に架空のプールバー、「ザ・プール新宿」が誕生した。
「ザ・プール」のディレクションを手がける藤原ヒロシの真骨頂ともいえるウイットとプロットは、「アッセンブル」や「ステューシー」などのブランドを巻き込んで、最新の東京のストリートスタイルマナーのポップアップストアを提案した。ザ・プール青山のスタートから1年、藤原ヒロシの今の頭の中をのぞき見した。
ーー「ザ・プール青山」は2014年4月にオープンしましたが、そもそもなぜあのコンセプトスペースが始まったのですか?
海外に行くと古い薬屋や八百屋などを改造したカフェや店舗があるのですが、日本は古い建物は壊してしまいます。そういう面白い物件があったら何かやりたいから連絡して欲しいと、以前から友達に話していました。それで、たまたま見に行ったあの物件が気に入ったということがスタートのきっかけです。「JUN」とは30年来の付き合いなので、何かやりたいねという話は常々していて、最初にあそこを見に行った時は本当にボロボロの状態だったのですが、できる限りプールを活かして使いたいと思いました。
ーー当初から今のような期間限定でテーマが変わっていくというコンセプトスペースという形態を考えていたいのですか?
最初はたまに開くギャラリーでも、何をしても良いという話だったのですが、せっかくなのでショップ形態にしました。元々がプールなので、床が傾斜しているんです。従業員の平衡感覚などの問題などで傾斜しているスペースを水平にしなければならないということもあって、フロアをガラスにしてそちら側を期間ごとに変わっていくスペース、反対側は古いまま残して物販にと、構造上の背景からスペースの性格が決定していったというプロセスがあります。
ーー最初のテーマが“white”でというのはいつ決まったのですか?
プールというのが決まったので、最初のテーマが白というのはすぐに決まりました。元々はもう少しセレクトショップ的なスペースを想像していたのですが、実際にオーダーしなければならない時期とのタイムラグなどの問題から難しく、自分たちで作る物が中心になりました。国内だけではなく、世界中から東京に来た人たちが立ち寄ってくれるような場所を目指したので、お土産物的なアイテムをラインナップに入れています。ロゴ入りのキャッチーなTシャツなど、日本のお土産というより、パリに行ったらコレットで何か買って帰るような感覚。キーホルダーでも何でも良いので、東京に行ったから「プール」で何か買って帰ろうというような。
ーーお土産でもいわゆる“ジャポニズム”“和”ではないファッションからのアプローチですよね。
一緒にやる相手は東京のブランドばかりになりましたが、それを意識したというより、たまたまそうなったというだけです。いまや世界中どの都市でも、ブランド自体はそんなに違いはないので。個人的には“和コラボ”と言われる物が嫌いなんです。和柄の刺繍デニムやプリントなどが苦手なので、それを前に出してやる気はない。和の建築は美しいとは思うけれど、実際に何かやるとなると難しい。神戸などでも、古くからある建物をリノベーションしたショップがあり、きれいだったという記憶があります。
ーー「ザ・プール青山」のアイテムは基本的にベーシックな物が多いですが、やはり、藤原さんが自分で着たいアイテムを商品化するという視点ですか?
自分で着るものがシンプルな物が多いので、自然とそうなります。たまに派手な物を着たいと思うこともありますが。基本的にはそうですね。自分が身につけることが想定できないものを考えるのは得意じゃないですね。
ーー“ノームコア”と呼ばれるファッションの現象に関して、藤原さんはどういう意見ですか?
“ノームコア”という動きに対して何も信頼を置いていないです。“ノームコア”自体がオシャレなのに、それを言っていることが違うんじゃないかと思います。そう呼んでいる人たちが一番トレンディだということを分かってないのかなと。口に出した時点でダメですね。
■interview & text:野田達哉
>vol.2 架空のプールバー「ザ・プール新宿」に関しての話。vol.2へ続く。