今年4月に発売されたApple Watchをはじめ、ウェアラブルデバイスに注目が集まる中、「SXstyle」でのウェアラブル・テクノロジーは、次の未来を見せてくれた。
次世代のウェアラブルは、ウェアラブル・テクノロジーを身につけているということが、見た目にわからないほど、ファッションに溶け込んでいくらしい。ウェアラブル・テクノロジーの進化は、デバイスのみならず、ファブリック素材へもおよんでいる。
■「スマートファブリック」が変えるデジタルとファッションの未来
スマートファブリックとは、電気を通すことが可能なファイバー性の糸を織り込んだファブリックや、布帛にチップやスマート機能を備えた高分子ポリマーを塗布するなどして、環境変化や刺激を感知したり、変化に反応できるテキスタイル素材のこと。
環境変化や外からの刺激にも対応可能なスマートファブリックは、周囲環境に応じてファブリックでカモフラージュしたり、怪我をした兵士の傷をケアするような軍事や医療の領域で発達しているが、これをクリエイティブに活用するアーティストやデザイナーが出はじめた。周囲の環境や着る人のパーソナルな状態に適応する「セカンドスキン=第二の皮膚」のような洋服が創造されつつある。
「Wearable Experiments」は、ハードウエア、ソフトウエアとアパレルデザインの融合に特化したデザインコンサルティングエージェンシーだ。回路基盤や触覚フィードバック技術、GPS、ウォシャブルエレクトロニクスの研究開発やプロトタイプ制作を専門に行っており、スノーボードブランドのオークリー社と共同で、スノーボード用の空飛ぶジャケットのコンセプトモデルを開発した。同モデルは、スノーボーダーがより衝撃を軽減し、軽やかに跳べるようにとデザインされている。つまり、スノーボーダーという過酷な環境でハードなスポーツをする人の要望にテクノロジーで応えていこうという試みだ。
ブルックリン拠点の「Manufacture NY」は、ファッションとテクノロジーという異なる分野を繋ぐハブ的機能をった、ファッション専門のコ・ワーキングスペースだ。「Manufacture NY」は、ファッションデザイナーやアパレル企業のためのファッションインキュベーター機能とコ・ワーキングスペースを運営しており、新しいアプリ、ハードウエア、テキスタイル、ファッションブランドなどの生産プロセスにおけるサポートを受けることが出来る。CTOのAmanda Parkesは、ファッションに求められる感受性や創造性にテクノロジーを掛け合わせた新たな発展の場を構築している。
アメリカやイギリスではスマートファブリックやウェアラブルデバイスやスマートファブリックの開発のサポートに特化した専門研究機関やエージェンシー、コーワーキングスペースが出来はじめている。彼らがファッションとテクノロジーを繋ぐブリッジ的機能を果たすことで、積極的にスマートファブリックを自身のクリエイティブワークに活用するクリエーターも出現している。
「Francis Bitonti」は、コンピューターを使ったデザイン手法で3Dプリンティングを使ったプロダクトをつくるファッションデザイナーだ。彼が制作したカッティングエッジなデジタルデザインのドレスは、スタイルアイコンのディータ フォンティース(Dita von Teese)が13年にニューヨークのACE HOTELのオープニングに着用したことで一躍有名になった。
■スマートファブリックがファッションのスタンダードになるために
スマートファブリックには、布地にどうやって電気的要素を加えるかという技術面に加え、それが着心地やファッション性を維持できるかという視点が求められる。技術面では電気伝導力のあるファイバー繊維の開発だけでなく、形状記憶合金、温度変化により色が変化するサーモクロミック塗料、洗えるバッテリーやチップなど、多岐にわたるアプローチがある。
スマートファブリックがファッションとして成立する品質やデザインを供えるためには、テクノロジー領域に長けたひとたちと、ファッションデザイナーやアパレル企業、繊維企業がひとつのチームとなるようなプロジェクトが数多くうまれることを期待する。
この原稿の校正をしていた5月の最終週の土曜日、スマートファブリックに関する、すばらしいニュースが飛び込んできた。Googleと「Levi's(リーバイス)」が共同で、スマートジーンズを開発するというものだ。しかもテキスタイルの開発リーダーは日本人、デニムの工場も日本という嬉しいニュースである。
>次回は、3Dプリンティングの出現によって、マスに普及するカスタマイズ。