J.W.アンダーソン(J.W. Anderson)の2018年春夏メンズコレクションが6月14日フィレンツェで行われた。ピッティ・イマージネ・ウオモ92のゲストデザイナーとして招待されたもので、フィレンツェ郊外のヴィラ・デ・ピエトラ(Villa la Pietra)の庭園を会場に、これまでロンドンでしかレギュラーコレクションを発表してこなかったアンダーソンにとって、初の海外でのコレクションとなった。
「今回は“普通であること(normality)”がテーマ。デビューして今年がちょうど10年目にあたり、あらためて普通であることとは何かを考えた」とアンダーソンは今回のショー当日の記者会見で話し出した。彼にとって今回のピッティ・ウオモへの招待に際して、フィレンツェが彼や一般の人々にとって観光の街であり、今回のシーズンコレクションのテーマがこの地で開くことが前提になったと話した。
会場はニューヨーク大学が所有する宮殿。幾重にも設計された幾何学的な花壇と無数の彫像、テラコッタの花瓶、装飾欄干から臨むフィレンツェの街というまさに庭の劇場のような、イタリアルネッサンス様式庭園にはグランドレベルにJWの刺繍が施されたアイリッシュリネンの白いクッションが両脇に置かれている。ゲストはそこに座ってランウェイを鑑賞するというスタイル。
「フィレンツェに来るといつも見上げている」ということから考えられたという観客の視線はシューズ、ボトムスにどうしても眼が行く。ニューストピックスはコンバースとのコラボ。グリーンとブルーのスパンコールで覆われたチャックテイラーや、コカコーラを想起させる字体でパンツ全体に“J.W.Anderson”のロゴが大きくプリントされたパンツなど、コマーシャライズされたアイテムも特徴的。
特にデフォルメされたハートモチーフが今シーズンのアイコンとして、ファーストルックのトレンチコートを始めさまざまなアイテムで展開。風刺画風のイラストもニットやフライトジャケットの背中などポップにあしらわれた。映画監督のオーソン・ウエルズにまつわるスキャンダラスな話題などもアイテムのストーリーの背景には潜んでいるという。
ジェンダーレスな作風でモードシーンをセンセーショナルに扇動したJ.W.アンダーソンが、新しい階段を上ったハートフルなコレクションとなった。
Text: Tatsuya Noda