大宮エリー―“円”になった14年の仕事歴1/2【INTERVIEW】

2013.08.15

CMディレクター/プランナーであり、映画監督・脚家・作家・演出家、そして最近では音楽番組のMCも務める大宮エリーの14年間の仕事を振り返る「大宮エリー展」が銀座のギンザ・グラフィックギャラリー(ggg)で8月28日まで開催されている。

電通時代に制作した広告作品も含め、CM、ミュージックPV、ドラマなど、合計14年間の多岐に渡る数々の仕事の写真展示。また、地下では新作インスタレーション作品も披露されている。

会社員を7年、独立して7年を過ごして節目の年となる今、これまでの仕事を“総ざらい”するこの企画展開催にあたり、大宮エリーのこれまでと現在、そしてこれからについて本人に聞いた。

——展覧会で、ご自分のお仕事を振り返られていかがですか?

不思議と、「この作品、いいでしょ?」とか「最高だよね」みたいなのは1個もなくて。昔の仕事って恥ずかしいっていう感じはありますよね。

——今回の展示は来場者に観てもらいたい部分は?

これまで色々なことをしてきたので、「どれがやりたいことなんですか?どれが本当のエリーさんなんですか?」ってよく聞かれるんですけど、全部一緒なんですよね。それを今回全部見てもらって「あ、この人おんなじことやってるんだ」って思ってもらえたらいいな、と。でも、どれもクライアントさんから依頼されて制作したのものなので、一つの例でしかない。「自分だったらどんなものを作る?」と思いながら観てもらえたら楽しいかなって思います。

——大宮さんの仕事の原点である広告というクリエーションについて、どう捉えていらっしゃいますか?

そうですね、広告はクライアントさんあっての仕事ですので、「私がこれをやりたいからこれをやるんだ」ということではなくて、「何を期待されているんだろう?」とか「どんなニーズがあって、どんな風に応えたらいいだろう」っていうところから作っていく。広告って作品じゃないんです。

例えば、ミンティア(MINTIA)の広告をやったときのこと。まだ人がミンティアのことを知らない頃だったので、「フリスクみたいなやつ」と説明しなくてはいけないのが悲しくて、認知度を上げるためにどうしたらいいか考えて、でも予算が少なかったので、バドガールみたいなミンティアガールを登場させて、街でもそのままサンプリングしてもらった。CMは尾瀬沼や山も舞台になって、おじいさんが出てきたり。そんなことを続けてたら売り上げが1位になったんです。広告って、目立って話題になるだけじゃなくて商品が売れるようにしないと意味がないので、それが嬉しかった。

——今までも個展を開かれていますが、テーマ設定が大宮さんらしいですよね。

2012年に『思いを伝えるということ展』、2013年に『生きているということ展』っていう個展をやったんですけど、興味があるのは「幸せって何だろう?」とか「何のために生きてるんだろう?」みたいなテーマ。それはCMとかPVとか演劇のどれにも入れている感じがする。

ある時、カウンセリングをしている友達に「精神的に安定しないときはどうしたらいい?」と聞いたら、「心をちゃんとじっと見た方がいい」って言われたんです。それでまず、心の箱をイメージしたんですね。そしたら、その箱の中がチクチクしていて、私は自分が嫉妬していることに気付いたんです。感情が「俺は嫉妬してんだ!ここにいるよー!無視すんなー!」って言っていた。それで一回、「あー嫉妬してんだ、私は。そっかそっかあ。嫉妬いいじゃん、人間らしいじゃん、嫉妬イェーイ!」って思ったら落ち着いたのね。

それがきっかけで、心の箱を始めとする“思い”を具体的な形にしていったのが『思いを伝えるということ展』。またあるとき、アメリカで森を歩いていたら、「生きているってこういうことだ」ってずーっと歩きながら自問自答できたんですね。それでみんなもやってみたら自問自答できていいかもよって思って、森の中を歩きながら言葉を追って行くインスタレーションをつくったのが『生きているということ展』。

自分が伝えられることってこういうことしかないし、それ以外思い付かない。仕事で作る作品も、例えば、お気に入りのハナレグミのPVも、「こういう暮らしとかいいよねー」とか「ちょっと人生のスピード落とそうかな」とかいう風に思ってくれたらいいな、と思いながら作りました。

2/2は今夜掲載予定。
奥麻里奈
  • 大宮エリーさん
  • 大宮エリーさん
  • 「大宮エリー展」で披露された新作インスタレーション
  • 「大宮エリー展」では、豊富な写真や映像と共に14年間の仕事を紹介
  • ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で開催中の「大宮エリー展」
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