イタリア・ミラノに本拠地を置くショップ「ディエチ・コルソ・コモ(10 Corso Como)」のディレクター、カルラ・ソッツァーニ(Carla Sozzani)が来日した。9月に中国初進出となる上海店のオープンを控え、上海、ソウル、東京を視察するという。
ディエチ・コルソ・コモは1990年に『Italian ELLE』『 Italian Vogue』などの編集者だったソッツァーニ氏により設立された複合ショップ。ファッションブティックに加え、アートギャラリー、ブックストア、カフェ、ホテル等を併設し、ソッツァーニ氏という目利きの編集による最新カルチャーの発信地となった。現在人気を集めるライフスタイル提案型ショップの原型と言えるだろう。
「今、このようなショップが人気なのも、私が店を始めた時と同じ考えに基づいていると感じます。ファッションはその人のすべてではない、ということです。私は雑誌の編集をしていたので、洋服だけでなく、デザインやアート、音楽なども同様に興味がありました。それで、“スローショッピング”というコンセプトの店をつくったのです。訪れた人はある視点で編集された空間を歩きながら、セレクトされたモノと会話を交わします。ブックストアとギャラリーはアイデアを伝える私の店の一番重要な最終目的地なのです」
その斬新なコンセプトにより成功を収めたディエチ・コルソ・コモは、2002年にコムデギャルソンのデザイナー・川久保玲と共同編集する「ディエチ・コルソ・コモ・コムデギャルソン」を、東京・青山にオープン(現在は東京・銀座の「ドーバーストリートマーケット・ギンザ」6階に移転)。08年にはサムソングループと提携しソウルに進出。現在ソウル市内に2店舗を構える。そして今回、LVMHグループの子会社であるLキャピタルが出資する中国のファッション企業、トレンディーインターナショナルと提携し、上海に進出を決めた。
「1980年に初めて中国を訪れ、列車で地方を旅し、とても好きになりました。それから急速に変わりましたが、今の中国の若者達は世界中を旅行して、情報感度が高く、好奇心に溢れています。彼らに単一ブランドではない、新しいタイプの店がどう受け入れられるのか非常に楽しみです」
Nanjing West Roadに面した上海店は4階建ての路面店。ギャラリー、レストラン、バーも併設する。ギャラリーではミラノ本店のエキシビションが巡回する。取り扱いブランドはコムデギャルソン(COMME des GARÇONS)、アライア(ALAIA)、ランバン(LANVIN)、カルヴェン(CARVEN)等の他、アジアのデザイナーも発掘して行きたいという。
「私はいつも異なる文化に興味を持って来ました。東アジアの国々と多く仕事をするのは、ビジネスだけではなく、学びにもなるからです。今は韓国のファッションシーンが面白いですね。また、才能ある中国人のデザイナーも見つけました。今年イタリアのトリエステで開催されたファッションコンテスト“ITS”でディーゼル賞を受賞したXiao Liです。昨年受賞した日本のテーラー、鈴木一郎(Ichiro Suzuki)にも注目しています。いずれ、彼らと上海店でコラボレーションできれば面白いですね」
23年前にソッツァーニ氏が考えた “スローショッピング”は、ネットショップでもファストファッションでもない、現在のリアルショップが模索する方法論でもある。そのコンセプトを持つ新店舗が世界第2のラグジュアリーマーケットとなる中国で受け入れられるかどうか、今後のライフスタイルショップの中国展開を占う試金石となるだろう。