グッチ(GUCCI)の不朽のアイコン「フローラ」へのオマージュとなる展覧会「ランゲージ・オブ・フラワーズ(The Language of Flowers)」が、9月20日までイタリア・フィレンツェの「グッチ ミュゼオ(GUCCI MUSEO)」で開催されている。
グッチ ミュゼオにとって第7回目のコンテンポラリーアート展となる同展。ヴェネチアの美術館「パラッツォ・グラッシ」、及び「プンタ・デラ・ドガーナ」でディレクターを手掛けるマーティン・ベスノッドがキュレーターを務めた。会場では1967年から2012年にかけて、4人のアーティストが手掛けた様々な作品が一堂に展示される。ありふれたモチーフを用いた一見シンプルな作品は、繊細でありながらも深遠な曖昧さが吹き込まれ、虚栄、回想、政略、芸術的価値などのテーマが表現された。
物体と肉体、静物と人物などの緊張感のあるコントラストが印象的な作品を生み出すフランスのフォトグラファー、ヴァレリー・ブラン(Valerie Belin)は「Calerndua(Marigold)」と、ダリア・レッドスキンとの共作「Phlox New Hybrid」を出展。女性の顔と花のモチーフを組み合わせることで、人間と植物、自然と人工、現実と仮想現実、実在と不在、魅惑と冷淡といった曖昧な境界によって特徴づけられる、様々なタイプのハイブリッドを生み出した。
一方、オランダで最も有名なアーティストの1人、マルネーヌ・デュマス(Marlene Dumas)は、これまでに絵画、コラージュ、ドローイング、彫刻、インスタレーションなど多彩な作品を手掛けており、現在では油彩画や紙に描くインク画にも取り組んでいる。新聞の切り抜きや個人的な思い出、フランドル絵画、ポラロイド写真などの多岐にわたるインスピレーションを源とする彼の作品は、その多くが人物画に分類されているものの、実際にはそのときの感情や気分が描写されてる。今回出展される「Einder」で濃紺の海に浮かぶ花々は、最近亡くなったデュマスの母の棺に飾られていたもの。繊細な色使いで、追想や悲嘆などが込められた。
また、ラティファ・エシャクシュ(Latifa Echakhch)は記号や象徴、文様、標識などを複雑に組み合わせ、多彩な解釈を奨励する一方、社会的、政治的論争を中心に据えた作品を制作。今回出展される彫刻作品「Fantome」は、中東の街角の路上で露天商が売るジャスミンの首飾りが素材に使用された。これは、彼女が香りと繊細さを保つために自分のシャツをかぶせてジャスミンを売り歩いていた、ベイルート時代の思い出とリンクしたもの。いかにも脆そうな印象に、「アラブの春」の革命と混乱を起こした抵抗運動が象徴されている。
初めて撮影した静物のカラー写真が43年に『Vogue』誌の表紙を飾って以降、同誌とのコラボレーションを行なってきたアーヴィング・ペン(Irving Penn)の作品からは、「Cottage Tulip:Soebet,New York」と「Single Oriental Poppy」が登場。両作は同じ構図で撮影されたもので、過ぎ去っていく時間のはかなさや虚無感が表現された。古典的な構図に加え、モノクロ写真にはプラチナプリント、カラー写真にはダイトランスファーといったプリント技法を用いられており、彼の絶対的な完璧主義を伺わせる。
【イベント情報】
ランゲージ・オブ・フラワーズ
会場:グッチ ミュゼオ
住所:10,Piazza della Signoria,Florence
会期:3月13日から9月20日まで
時間:10:00から20:00まで(木曜日は10:00から23:00まで)
料金:7ユーロ