3月16日、東京・銀座のドーバーストリートマーケットギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA、以下DSMギンザ)がオープン1周年を迎えた。クロムハーツやマスターマインド・ジャパン、コールハーンなどが限定アイテムを発売した他、アニバーサリーに合わせ3人の外国人デザイナーが来日。彼らの創造性へと迫った。
1人目は1970年から80年に掛けて、ロンドンのファッション、音楽、クラブカルチャーといった文化に多大な影響を与えたマイケル・コスティフ(Michael Costiff)。様々なクリエーティブシーンで活躍し、1995年、世界中を旅する中で見つけた様々なモノを販売するショップ「ワールド(WORLD)」をロンドンにオープン。妻が他界後、一時は閉店したものの、DSMロンドンにて「ワールド・アーカイブ(WORLD ARCHIVE)」として復活。同ギンザにもコーナーを持つ。この度DSMギンザ1周年記念に際し、自著サイン会を開催。
――1年ぶりの来日ですが、最近の日本をどう見ています?
日本のファッションを見るのは、来日の楽しみの一つ。もちろん原宿のカフェで若い人達の個性的なファッションを見ているのも楽しいんだけど、特に日本は年を重ねた女性がオシャレなことに感銘するね。皆、ジュエリーなども上手に使ってファッションを楽しんでいるという感じ。美しいよ。
――日本のストリートファッションは世界的にも注目されていますが、大人の女性のファッションが目を引いたというのは、意外ですね。
女性達が皆、ファッションを楽しんでいるという雰囲気が伝わってくるよね。
――ではご自身のファッション観は?
メインストリームにあるものはあまり興味がないね。大量生産されたものにも興味がないし、上から下まで同じブランドで決めるというのもあまりオシャレじゃないと思う。エスニックなものとか、ビンテージとトレンドのアイテムをミックスするとか、自分なりに組み合わせることで、その人らしい新しいスタイルが生まれると思う。
――でも70年代、80年代はとてもエキサイティングでした。今と比べてどうでしょう?
現在のようなネット時代は、全員がすべてを知っているよね? つまり、以前なら何かに興味を持ったら、本を読んだり、自分でその場に行って調べたりするしかなかった。でも今は、ガイドブックを見て、素敵なホテルだなと思ったら、すぐにネットで検索すれば、部屋の中の様子まで分かっちゃう。服をデザインしたって70年代なら、「素敵ね」って言われて、誰かに見出してもらって、少しずつ人気が出たりするけど、今は、ネットに載せれば、瞬く間に世界中が知ることになる。つまり、ミステリーが無くなってしまったと感じるよ。でも僕だって、以前は、旅に出たらゆっくり本を読んだり、街を歩いたりって感じだったけど、今はホテルに帰ったら「メールの返事、書かなくちゃ」って思うしね。
――忙しい時代ですね。
僕にとっては世界中を旅することも、服をデザインして友達から評判になることも、全部経験済みだから、今の時代も楽しんでるけどね。
――今回出版される本について伺えますか?
これは僕が30年も前から続いている日記で、とても私的な記録だったんだ。人に見せるつもりもなかったんだけど、キム・ジョーンズが僕の本棚の奥から見つけてきて「これ、出版するべきだよ!」ということで、話が進んじゃった(笑)。
リオのカーニバル、僕の撮影したスージー&ザ・バンシーズのジャケット、ロンドンで経営していたクラブ「キンキー・ガーリンキー」、京都で舞妓さんと一緒に撮った写真、コムデギャルソンのショーでモデルをした僕……とにかくあらゆるものを、あえて時系列やテーマに則することなく、ごちゃまぜにして載せたんだ。僕はいつでも人に興味がある。大企業の社長でもカフェの店員でも関係ない。その人が面白いかどうかに興味があるんだけど、だからこの写真集にも、とにかく色々な人達が映っているんだ。
――マイケル自身も、本当に多才であり多彩ですね。
僕はアートスクールに通ったわけでもないし、専門的なキャリアを積んだわけでもないんだけど、「何か新しい、面白いことがないかな」といつも思っている。そして友人たちから、「こんなことやってみない? ここに来てみない?」って誘われるまま、流れに身を任せているだけなんだ。その結果、ファッションデザインやフォトグラフィー、あるいはインテリアデザインなど、様々なことを経験できた。けれど今振り返れば、そういう、僕独自のセンスっていうか、嗅覚みたいなものを皆、面白がって信じてくれていたんだと思う。もし、神様が与えてくれたギフトがあるとすれば、僕の場合は、そういったセンスなんだろうね。
vol.2はケンゾーのアクセサリーも担当するジュエリーデザイナー、デルフィナ・デレトレ(Delfina Delettrez)が登場。