ピッティ・イマージネ・ウオモ92(PITTI IMMAGINE UOMO 92)が6月13日から4日間、イタリア・フィレンツェで開催された。2018年春夏シーズンを占うメンズファッションのトレードフェアとして、世界中からバイヤー、プレスが集まる同イベントは、急速に変化するマーケットの変化に対応して、会場構成を大きくリニューアル。セクション、ブースなどの入れ替えを大々的に行い、新しいメンズマーケットの再編に向けてその姿勢を明確に打ち出した。
今回のテーマ「BOOM, PITTI BLOOMS」に象徴されるポップなフラワーモチーフのウォールアートがまずお出迎え。前回、トイレットペーパーのポップアップショップが各所に設置されたのに引き続き、このカラフルなフラワーアイコンのグッズや生花とフルーツ、ボタニカルなトレンドが会場全体を包んだ。
特に今回、アスレジャー、アウトドア系の好調なブランドが集結したゾーンの「TOUCH」が、最も人の流れが多い会場入り口に続くエリアに実験的に移設された。日本からはナナミカ(nanamica)、スノーピーク(snowpeak)が出展しており、今回2度目の出展となったスノーピークは着物のYAMATOとコラボした撥水素材のキモノコートが人気を集め、試着を求めるバイヤーやプレスでブースは常に賑やか。すでにピッティ・ウオモの常連で海外に100店舗以上、欧州だけで50店舗以上の取引先を持つナナミカの「この数年のイタリアでのアメリカンカジュアルのブームもあって、アウトドアブランドのマーケットも既存の小売店ではほぼ一段落。ここに来てストリートブランド系のショップとの綱引きが始まっている」(本間永一郎社長)という声は、現在のメンズマーケットを象徴しているようだ。
同エリアからの動線として従来の2倍の面積に拡大して打ち出された「UNCONVENTIONAL」はピッティ・ウオモが推すストリート系のラグジュアリーブランドが集約され、日本からはレザーのバックラッシュ(BACKLUSH)が出展。さらに今回JFWとのコラボで東京ファッションアワードに選ばれた6ブランド(BED J.W. FORD、Chika Kisada、doublet、Roggykei、TAAKK、YOHEI OHNO)が急遽参加が決定し、ブースを出展した。
ピッティを代表するイタリアンクラシコブランドが並ぶメインパビリオン。同館の地階では、今回のゲスト国のオーストラリアのデザイナーがブースを出展。この数年、クラシコブランドにとって好調なマーケットでもあるオーストラリアの新世代ブランド初の本格的な海外デビューに際して、伊のマッティオ・レンツィ前首相が訪れるなど、同展がイタリアのファッション産業の重要な位置づけであることを伺わせた。また、アーティザルなモダンクラフトの商品を世界中から集めた新しいゾーン「MAKE」も今後、同展の重要なカテゴリーとなることが予想される。
メイド・イン・イタリーを訴求したアクセサリーを始めとしたポップアップも従来以上に拡大され、イタリアンクラシコのゾーニングを打ち出すなどピッティ・ウオモ本部の姿勢は明快だが、世界的な高級品マーケットの低迷もあって、出展者からは商談は芳しくなかったという声は多い。クラシコ系は市場の2極化からミレニアム世代に向け価格を抑えた商品と、本来自分たちの得意とする専業アイテムのハイエンド商品を再び提案する戦略が昨年あたりから動き出している。さらにこれまでのアイテム分野を拡大し、ライフスタイルブランドへのイメージを訴求する動きも目立ち始めている。しかしながら、百貨店や大手専門店のバイヤーたちはピッティの後に開催されるミラノ、パリのショールームを回ってから、再びイタリアにという慎重なバイイングが今季の特徴のようだ。
主催者側の発表によると、最終的な来場者は前回並の3万人を予想。内、海外からの来場者の順位は1位がドイツ。日本、スペイン、英国、オランダ、中国、フランス、スイス、トルコ、米国、韓国、ベルギー、オーストリア、ポルトガル、ロシア、スウェーデン、ギリシャ、デンマーク、ポーランド、カナダという順。昨年6月開催時に過去10年で最高の入場者数を記録したことから、イタリア人バイヤーは6~8%減となる見込みだ。
今回のオフィシャルイベントのJ.W.アンダーソン、オフホワイト c/o ヴァージル アブロー、ハンティング ワールドなどのショーの詳報、会場スナップなども追って掲載する。
Text: Tatsuya Noda