ずっと書きたかったことを好機が訪れたので書く。前回三島由紀夫を予告したがそんな場合ではない。10日売りの月刊ニュータイプ5月号(角川書店)にて、遂に!!永野護の『ファイブスター物語(The Five Star Stories、FSS)』の連載が再開したのだ。
実に9年ぶりの再開。書籍界では12日発売の村上春樹新刊の方が話題かもしれないが、そんなことはどうでもいい。春樹は3年ぶりだが、こちらは3倍の9年ぶりなのだ。
首を長くして待ち望んでいた。正直初めてニュータイプを買ってしまった。当日のツイッターでは“FSS”がトレンドワードとなり、ニュータイプ5月号は現在アマゾンで品切れ。中古品が1000円前後の値がついている。そして増刷が決定したという。
今回驚天動地だったのは、今までの設定が大幅に改変されたこと。昨年末に公開の永野がすべて制作したアニメーション映画『ゴティックメード』を踏襲した内容になったのだ。正直イヤな予感がしていたのだが本当にこうなるとは……。飽きちゃったのかな。86年スタートだからね。
こんなことができるのは本当に永野しかいないだろう。描きたい時に描きたいものを描く。神みたいな存在だ。今までも連載休止の度にデザインが変わってきた。その時々で自身が興味あることを取り入れてマンガをデザインしている。しかも「俺だったらこうするね」とバージョンアップさせて表現する。
FSSの最大の魅力とは大河ロマン的な物語構成もあるが、やはりデザインだろう。登場人物の服、ロボットがとにかく美麗でカッコイイ。実は永野の肩書きはマンガ家ではなくメカニックデザイナーなのだ。だから私は最もファッションなマンガだと思っている。ファッションを直接題材に採ったマンガなど内容もカッコよさもFSSの足下にも及ばない。精神がファッションなのだ。
ユリイカ2012年12月増刊「永野護特集」では、服飾研究家の蘆田裕史と「モトナリオノ」デザイナー小野原誠がFSSのスタイルについて語り合っている。また、スタイリッシュなキャラクター達と共に、シャマスクのスーツ、マノロ・ブラニクのミュール、ピエール・エルメのイスパハンなどが登場する。キャラクター達のコスチュームスタイルにはクチュリエや素材など詳細な背景が設定されている。
現在永野のデザインに影響を与えているファッションデザイナーはいないようだ。ディオールオムが流行ろうが、トムブラウンが話題になろうが、カルヴェンが売れようが永野には関係無かった。神様の琴線に触れることは無い。
永野は好きなデザイナーとしてアズディン・アライアを答えている。なるほど、神様は神様にしか影響を受けないのだ。