第87回「装苑賞」公開審査会が4月23日、東京・代々木の文化学園遠藤記念館大ホールで行われた。
公開審査会では2次審査を通過した16組の候補者が各3体のコレクションをショー形式で披露。美数値空間をテーマに、たくさんの小さな三角形パーツで構成したグラデーションドレスをデザインした桑原啓が装苑賞を受賞。また、近藤晃裕と協働した作品も佳作2位に選ばれ、W受賞となった。
桑原は1990年京都生まれ、文化服装学院ファッション工科専門課程アパレルデザイン科を卒業し、現在はフリーで活動している。「ここからの景色を眺めることが一つの目標だったので、とても嬉しい」とステージ上で話した。
また、佳作1位は森をプリントしたモアレジャカードにフェイクファーとオリジナルの木製パーツをプラスし、木が鳥になって飛んでいくイメージを表現した長元春恵。佳作2位は公開審査会に選ばれた2人の候補作品を混ぜ合わせ1着のドレスをデザインした桑原啓と近藤晃裕が、それぞれ受賞。イトキン賞はロシア出身のヴェセロヴァ・ビクトリア、ルームス賞は萩原和紗に決まった。
同賞の審査員を務めるのは岩谷俊和、コシノジュンコ、田山淳朗、津森千里、菱沼良樹、廣川玉枝、丸山敬太、皆川明の8名。岩谷氏は、「上位3組はとても完成度が高かったが、装苑賞の作品は抜群に完成度が高い。見たことのないようなものではないが、説得力のある美しさがあった」とコメント。今回から審査員に加わった廣川氏は「服に対する思いが伝わってきた」と評価した。
また、菱沼氏は「完成度は高いが、意外性が少ない。次はびっくりするようなものを作ってもらいたい」、皆川氏は「仕事量と完成度はすばらしいが、布やニットにこだわった作品や仕事量だけではない新しいアプローチの作品も見たい」とアドバイスを送った。
装苑賞は1956年に日本で初めて開催されたファッションコンテストで、高田賢三や山本耀司、やまもと寛斎、津村耕佑らを世に送り出している。この日、会場には特別ゲストとして野田佳彦前首相も訪れた。