【INSIDE】ビッグジョン再建に見るジーンズ業界の苦境

2013.04.11

4月5日に岡山・児島のジーンズメーカー、ビッグジョンの再建計画が発表された。官民ファンドが金融機関から債権を買い取ることで40億円の借入金を大幅に圧縮するという。また計3億円の金融支援も実施するとともに、社工場は閉鎖して、今後は中国の子会社と地元の協力工場による生産へと移行する。今回の措置に伴って創業家の尾崎博章会長と尾崎篤社長は退任して、市原修・東京支社東日本エリアマネージャーが新社長に昇格した。ピーク時の93年1月期の売上高は182億円あったが、2013年1月期にはこれが25億円にまで減っていた。

昨年6月にボブソンが倒産。同じく8月末にはエドウインの巨額損失隠しが発覚したため経営再建問題で揺れ続けている。国内大手ジーンズナショナルブランドとして君臨してきた3社だがいずれも経営破綻に見舞われた。また国内メーカーではないがリーバイ・ストラウス・ジャパンも売上高が100億円未満に低下し、赤字決算が続く。

大手ジーンズメーカー各社が苦境に陥った理由について一般紙や経済誌では紋切り型に「低価格ジーンズに押されて」と分析する。しかし、これは一要素であってすべてではない。とくにボブソン、ビッグジョンは90年代後半以降は量販店向け3,900円商品が主力商品の一つだった。このため「低価格に押された」と分析するとつじつまが合わない。

ボブソン、ビッグジョンの経営破綻は、ジーンズチェーン専門店における壁面棚から弾き飛ばされたことにあるだろう。現在のジーンズチェーン専門店の壁面はリーバイス、エドウイン、リーが独占している。

しかし、当のジーンズチェーン専門店もピーク時から売上高を落としているし、その市場では勝者となったはずのリーバイス、エドウインも苦境に立たされている。これはナショナルブランドのジーンズというアイテムに極度に依存していた従来型専門店が消費者から支持を失ったということだろう。これまでジーンズ専門店はトップス類はそろえてこそいたものの、売り上げの主体は大手ナショナルブランドのジーンズであり、高度経済成長期・バブル期とそれさえ並べておけば売れるという状況が長らく続いたため、百貨店アパレルやSPAブランドが熱心に取り組んできたマーチャンダイジングやビジュアルマーチャンダイジングにはほとんど無頓着だった。

一方、ジーンズメーカー側もその構図に浸りきってしまった。多くのジーンズ専門店は買い取りではなく消化仕入れの形態を採っていた。買い取りだったメーカーはリーバイスくらいだろう。ジーンズメーカーは毎シーズン大量に自家工場で商品を製造し(リーバイスは除く)、ジーンズ専門店に配送する。定番品を除いてコーデュロイやライトオンスデニムなどの季節性の高い商品はシーズンごとに入れ替わる。売れ残りをメーカーが引き取って代わりに新アイテムを投入するのである。メーカーには引き取った在庫が貯まる一方となる。90年代後半以降、各ジーンズメーカーが必ずアウトレットモールに出店したのはそういう在庫問題が背景がある。しかし、自家工場は日々製造し続けているから在庫は容易に減らない。自家工場を構えていたジーンズメーカーが苦境に陥った原因はここにある。

さらに90年代半ば以降、ビンテージブランド、高級インポートブランド、SPAブランドなどが台頭すると消費者の嗜好性が多様化した。当然ながら消費者の購買先も分散したため、ナショナルブランド中心のジーンズ専門店チェーンの売上高は減少した。

大手ジーンズメーカー、ジーンズチェーン専門店の苦戦はこれらの複合要因によるものであり、改善は容易ではないだろう。
ファッションライター南充浩
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