手跡を残さず手づくりの温かみを感じる、使い手の心ときめかせるプロダクトを生み出す器作家のイイホシユミコさん。 伊勢丹新宿店本館5階=センターパーク/ザ・ステージ#5では、3月29日より彼女が参加するプロジェクト「Meets.-イイホシユミコ&鹿児島睦展」
が開催される。器作家イイホシユミコさんにとっての印象的な、ヒト・コト・モノとの出会い、“Meets.”を尋ねるためにアトリエへとうかがった。
■今のスタイルへと導いてくれた芸大の師
ーー2016年に続き、2回目となる“Meets.”プロジェクトへの参加ですね。器作家イイホシユミコさんにとっての忘れられない“Meets.” (出会い)を教えていただけますか。
芸大時代の教授との出会いですね。近代陶芸の父、富本憲吉さんに師事されていた先生には、実技はもちろん今に通じる考え方や作品への姿勢など学び、大いに影響を受けました。短大を卒業後、器や雑貨を輸出入する会社に勤めていたんです。食器がすごく好きで、趣味で器づくりをしていました。でも器を作る人になりたいと強く思うようになり、技術を身につけるためにろくろを学べる京都の美大へ入学しました。
ーー今のイイホシさんにつながる、思考や姿勢に影響と言われましたが具体的にはどのようなことですか。
自己満足な器づくりなのか、世に出すための器づくりなのか、そして世に出すならばどのようにして届けるのか、それらを考えてモノ作りすることを叩き込まれました。職人を目指すのか、スタイルのあるプロダクトづくりをするのか、常に将来と対峙して学ぶことができたことに感謝しています。
ーーイイホシさんがよく言われる、手跡を残さず、でも手づくりの温かみを感じさせるモノづくり、ということにもつながっているのでしょうか。
卒業後は、器のスタイルを作って量産していく道を選びました。そのなかで作り手の気配はできるだけ消して、使い手自身の記憶や思いが、浮かんでくるようなツールにしたいと思うように。とはいえ、すべて窯元の職人さんの手仕事で作られています。だから釉薬の施し具合で、同じお皿であっても一枚一枚が少し違う表情が出るように、人の手を経ている温かみはどこかには残っているんです。
ーー師匠である、先生には時々会いにいかれるそうですね
今でも時々会いに個展にお伺いしますね。先生は、私の個展に来てくれたことはないんですけどね(笑)。
■人気作家・鹿児島睦さんやハンガリーのガラス工房
ーー昨年のMeetsプロジェクトでも大好評だった、人気作家の鹿児島睦さんとのコラボコレクション「フローロ(floro)」。このたび制作中の第二弾は、どんな仕上がりになるのですか?
「フローロ」は、一点ものとしてデザインし、美味しいものをすこし盛りつけるようなイメージで、飾り皿としても使えるように作りました。今回は、日々使うことを考え、お皿を重ねても傷つきにくいような器に仕上げています。その後、名前をみんなで考えて「フローロ ドロップ」となりました。
ーー第一弾と比べるととても軽いですね。そしてキュッと絞られた愛らしい形ですね。鹿児島さんの絵が楽しげで躍動的な感じがします。
お花のつぼみをモチーフに4色で展開する予定です。2回目となり、おたがいのよさがわかっているので、より満足できる器になっています。信頼する有田焼の職人さんにご制作を依頼していますが、原型にに鹿児島さんの絵が入ると、彼らのテンションがまったく違ってくるんです(笑)。かわいい、楽しい、だけではなく人に力をあたえる絵なんですね。鹿児島さん自身、明るくてステキなキャラクターで、いつも力をいただいています。
ーーハンガリーの工房で作られた新作のガラス器コレクションも“Meets.”で発表されるそうですね。どのようなモノづくりをされたのですか?
ハンガリーのガラス工房をいくつか訪ねたのですが、今回依頼した工房は入った瞬間からほかとはまったく違いました。吹きガラスの工房ですが、職人の志や技術力の高さが、工房の雰囲気につながっているんでしょうね。ぜひここで作ってもらいたいと思いました。デザートカップやお皿など6型作っています。サイズを大きくしたい、ここを均一にしたいなど、細かい要望にきちんと応えていただき、今まで見たことがないガラス器に仕上がっていると思います。
ーーいつも扱っている磁器とは違う、ガラス素材ゆえの楽しさや難しさを教えてください。
ガラス器は、磁器にはない透明感や薄さが表現できます。磁器では作ることができない形やデザインを考えられることがとてもおもしろいんです。ガラス器のルールにとらわれずモノづくりをした器が、どのように見てもらえるか今から楽しみです。
■イイホシユミコであるための“ゆとり”
ーー「yumiko iihoshi porcelain」として2007年にプロダクトをスタート以来、さまざまなコレクションを展開されています。今、モノづくりにあたり大事にされていることは?
自己満足な道具ではなく、使う人の暮らしが少しでも豊かになるモノを作っていきたいということ。また、ともに仕事をしている窯元や工房には、一回限りではなく少量であってもずっと取引を続けられる関係を紡ぎたいこと、ですね。
ーー天井が高く明るくて心地よいアトリエですが、ここでの過ごし方や、日々の暮らしのなかで、大切にされていることはなんですか?
いろんなことを詰め込みすぎないようにしています。旅行とかも余裕があると見えてくることって多いですよね。仕事や暮らしにもそういう部分が必要だなと思います。手掛ける器もそうなんですが、少し余裕のある器が好きなんです。窯元にはこのサイズでいいの?って、はじめは何度も確認されたんですけどね(笑)。大きな器は盛り映えしますし、器の余白に使い手の個性が出せる。そしてゆとりや余白が暮らしを少し豊かにすることにつながっているのだと思っています。
伊勢丹新宿店本館で開催される“Meets.”では、yumiko iihoshi porcelainの既発コレクションに加えて、鹿児島睦さんとのコラボコレクション「フローロ ドロップ」 やハンガリーのクリスタルコレクションなどの新作までフルラインナップで展開する予定。あなたの暮らしをちょっぴり豊かにする、余白のある器たちにきっと出合えるはずだ。
【イベント情報】
「Meets.-イイホシユミコ&鹿児島睦展」
会 期: 3月29日~4月11日
会 場: 伊勢丹新宿店本館5階=センターパーク/ザ・ステージ#5
第一弾では、昨年に引き続き、大きな反響を呼んだイイホシユミコとの共作「フローロ」の第二作目を発表。第二弾では、イギリス在住の海外アーティストとのコラボレーション作品を紹介する。
<第1弾>
3月29日から4月4日まで
・陶芸家イイホシユミコ × 鹿児島睦によるコラボレーション作品「フローロ ドロップ」
<第2弾>
4月5日から4月11日まで
・鹿児島睦 × ジョン&ジュリアン・セインズベリーによるテーブルウエア
・鹿児島睦 × ドナ・ウィルソン によるクッション・人形・チャーム
【取材協力】
yumiko iihoshi porcelain
住所:東京都渋谷区神宮前 6-35-3 コープオリンピア221号室
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜日
が開催される。器作家イイホシユミコさんにとっての印象的な、ヒト・コト・モノとの出会い、“Meets.”を尋ねるためにアトリエへとうかがった。
■今のスタイルへと導いてくれた芸大の師
ーー2016年に続き、2回目となる“Meets.”プロジェクトへの参加ですね。器作家イイホシユミコさんにとっての忘れられない“Meets.” (出会い)を教えていただけますか。
芸大時代の教授との出会いですね。近代陶芸の父、富本憲吉さんに師事されていた先生には、実技はもちろん今に通じる考え方や作品への姿勢など学び、大いに影響を受けました。短大を卒業後、器や雑貨を輸出入する会社に勤めていたんです。食器がすごく好きで、趣味で器づくりをしていました。でも器を作る人になりたいと強く思うようになり、技術を身につけるためにろくろを学べる京都の美大へ入学しました。
ーー今のイイホシさんにつながる、思考や姿勢に影響と言われましたが具体的にはどのようなことですか。
自己満足な器づくりなのか、世に出すための器づくりなのか、そして世に出すならばどのようにして届けるのか、それらを考えてモノ作りすることを叩き込まれました。職人を目指すのか、スタイルのあるプロダクトづくりをするのか、常に将来と対峙して学ぶことができたことに感謝しています。
ーーイイホシさんがよく言われる、手跡を残さず、でも手づくりの温かみを感じさせるモノづくり、ということにもつながっているのでしょうか。
卒業後は、器のスタイルを作って量産していく道を選びました。そのなかで作り手の気配はできるだけ消して、使い手自身の記憶や思いが、浮かんでくるようなツールにしたいと思うように。とはいえ、すべて窯元の職人さんの手仕事で作られています。だから釉薬の施し具合で、同じお皿であっても一枚一枚が少し違う表情が出るように、人の手を経ている温かみはどこかには残っているんです。
ーー師匠である、先生には時々会いにいかれるそうですね
今でも時々会いに個展にお伺いしますね。先生は、私の個展に来てくれたことはないんですけどね(笑)。
■人気作家・鹿児島睦さんやハンガリーのガラス工房
ーー昨年のMeetsプロジェクトでも大好評だった、人気作家の鹿児島睦さんとのコラボコレクション「フローロ(floro)」。このたび制作中の第二弾は、どんな仕上がりになるのですか?
「フローロ」は、一点ものとしてデザインし、美味しいものをすこし盛りつけるようなイメージで、飾り皿としても使えるように作りました。今回は、日々使うことを考え、お皿を重ねても傷つきにくいような器に仕上げています。その後、名前をみんなで考えて「フローロ ドロップ」となりました。
ーー第一弾と比べるととても軽いですね。そしてキュッと絞られた愛らしい形ですね。鹿児島さんの絵が楽しげで躍動的な感じがします。
お花のつぼみをモチーフに4色で展開する予定です。2回目となり、おたがいのよさがわかっているので、より満足できる器になっています。信頼する有田焼の職人さんにご制作を依頼していますが、原型にに鹿児島さんの絵が入ると、彼らのテンションがまったく違ってくるんです(笑)。かわいい、楽しい、だけではなく人に力をあたえる絵なんですね。鹿児島さん自身、明るくてステキなキャラクターで、いつも力をいただいています。
ーーハンガリーの工房で作られた新作のガラス器コレクションも“Meets.”で発表されるそうですね。どのようなモノづくりをされたのですか?
ハンガリーのガラス工房をいくつか訪ねたのですが、今回依頼した工房は入った瞬間からほかとはまったく違いました。吹きガラスの工房ですが、職人の志や技術力の高さが、工房の雰囲気につながっているんでしょうね。ぜひここで作ってもらいたいと思いました。デザートカップやお皿など6型作っています。サイズを大きくしたい、ここを均一にしたいなど、細かい要望にきちんと応えていただき、今まで見たことがないガラス器に仕上がっていると思います。
ーーいつも扱っている磁器とは違う、ガラス素材ゆえの楽しさや難しさを教えてください。
ガラス器は、磁器にはない透明感や薄さが表現できます。磁器では作ることができない形やデザインを考えられることがとてもおもしろいんです。ガラス器のルールにとらわれずモノづくりをした器が、どのように見てもらえるか今から楽しみです。
■イイホシユミコであるための“ゆとり”
ーー「yumiko iihoshi porcelain」として2007年にプロダクトをスタート以来、さまざまなコレクションを展開されています。今、モノづくりにあたり大事にされていることは?
自己満足な道具ではなく、使う人の暮らしが少しでも豊かになるモノを作っていきたいということ。また、ともに仕事をしている窯元や工房には、一回限りではなく少量であってもずっと取引を続けられる関係を紡ぎたいこと、ですね。
ーー天井が高く明るくて心地よいアトリエですが、ここでの過ごし方や、日々の暮らしのなかで、大切にされていることはなんですか?
いろんなことを詰め込みすぎないようにしています。旅行とかも余裕があると見えてくることって多いですよね。仕事や暮らしにもそういう部分が必要だなと思います。手掛ける器もそうなんですが、少し余裕のある器が好きなんです。窯元にはこのサイズでいいの?って、はじめは何度も確認されたんですけどね(笑)。大きな器は盛り映えしますし、器の余白に使い手の個性が出せる。そしてゆとりや余白が暮らしを少し豊かにすることにつながっているのだと思っています。
伊勢丹新宿店本館で開催される“Meets.”では、yumiko iihoshi porcelainの既発コレクションに加えて、鹿児島睦さんとのコラボコレクション「フローロ ドロップ」 やハンガリーのクリスタルコレクションなどの新作までフルラインナップで展開する予定。あなたの暮らしをちょっぴり豊かにする、余白のある器たちにきっと出合えるはずだ。
【イベント情報】
「Meets.-イイホシユミコ&鹿児島睦展」
会 期: 3月29日~4月11日
会 場: 伊勢丹新宿店本館5階=センターパーク/ザ・ステージ#5
第一弾では、昨年に引き続き、大きな反響を呼んだイイホシユミコとの共作「フローロ」の第二作目を発表。第二弾では、イギリス在住の海外アーティストとのコラボレーション作品を紹介する。
<第1弾>
3月29日から4月4日まで
・陶芸家イイホシユミコ × 鹿児島睦によるコラボレーション作品「フローロ ドロップ」
<第2弾>
4月5日から4月11日まで
・鹿児島睦 × ジョン&ジュリアン・セインズベリーによるテーブルウエア
・鹿児島睦 × ドナ・ウィルソン によるクッション・人形・チャーム
【取材協力】
yumiko iihoshi porcelain
住所:東京都渋谷区神宮前 6-35-3 コープオリンピア221号室
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜日