木曜日連載、アート・ブックショップ「NADiff(ナディッフ)」各店による今読むべき1冊。今週は、山崎博の『山崎博 計画と偶然』。東京・恵比寿の東京都写真美術館内にあるミュージアム・ショップ、NADiff BAITEN(東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内 東京都写真美術館2F)によるご紹介です。
■『山崎博 計画と偶然』山崎博
たどり着いた「自分のやるべきこと」は「被写体を探すんじゃなくて、僕とカメラとの関係がないと成り立たないようなこと」であった。――(本書160ページより抜粋)
写真家・映像作家、山崎博。1946年長野県生まれ。20代前半から本格的に写真を始め、当時交流のあった寺山修司、土方巽、赤瀬川原平といったアーティストのポートレートや作品を撮影していたが、「いい被写体を探して撮る」という行為に疑問を感じ、被写体にとらわれない写真というものを模索する。写真や映像を「光」と「時間」の関係性と捉え、そこから様々な方法論を導き出した。
山崎はしばしば、長時間露光という、通常であれば一瞬で開閉するシャッターを1秒以上(山崎の場合は数時間)開けたまま相応の光を取り込む技法を用いる。強力なフィルターを通して太陽を撮影した代表作〈HELIOGRAPHY〉は、その軌道がくっきりと浮かび上がり、まさしく「太陽による画」のようである。太陽を同じ位置に捉えるようにカメラを少しずつ動かして撮影した映像作品も、その計画性が伺える。
ほかにも、コピー機にレンズと鏡で像を落とし込み、コピー機のスタートボタンを押して印刷した作品、カメラを使わず、暗闇(暗室)で印画紙に直接光を当てることで撮影するフォトグラムという技法で、波紋や手、桜を収めた作品などその手法は様々である。
ある瞬間を捉えることを目的とした写真、また一定時間のある動作を収めることを目的とした映像、両者の本質と相反するところを突く山崎の作品は「写真とは何か」「映像とは何か」を考える良い機会ではないだろうか。
本書は東京都写真美術館で開催されている同名展覧会の公式図録であるが、展覧会には収録されてない新作なども展示されているので、ぜひ展覧会と合わせてご覧頂きたい。
【書籍情報】
『山崎博 計画と偶然』
著者:山崎博
版元:武蔵野美術大学出版局
言語:日本語
ハードカバー/192ページ/A4
発売:2017年3月7日
価格:2,750円
【展覧会情報】
「山崎博 計画と偶然」
会場:東京都写真美術館 2階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
会期:3月7日~5月10日
時間:10:00~18:00(木曜・金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
観覧料:一般600円(480円)、学生500円(400円)、中高生・65歳以上400円(320円)、小学生以下・都内在住・在学の中学生・障害者手帳所持者とその介護者は無料
※( )は20名以上の団体料金、第3水曜日は65歳以上無料
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合は翌火曜日、5月1日)