芸術家のジェームス・ローゼンクイスト(James Rosenquist)は1933年11月29日生まれ。アメリカ合衆国・ノースダコタ州出身。
52年からミネソタ大学で絵画と素描を学ぶと、55年には奨学金を得てアート・スチューデンツ・リーグ・オブ・ニューヨークへと進学する。この頃、ローゼンクイストは看板屋のアルバイトをしており、卒業後もしばらくはこの職で日銭を稼いでいた。
当初は抽象表現主義に影響された作品を描いていたローゼンクイストだったが、50年代の終わりに近づくと、その作風に広告用看板のスタイルを取り入れるようになる。食品や生活雑貨、自動車といった身近にあるものをコラージュし、それらを巨大なカンバスに街頭広告のようなテイストで描画。こうした大衆消費社会のイメージをモチーフとした作風は、60年代にポップアートとしてアメリカを席巻することになり、その中でローゼンクイストは時代の寵児としてもてはやされていく。
中でも、代表作となっているのが65年に公開された「F-111」だ。この作品でローゼンクイストは、当時の最新鋭戦闘機F-111と共に、ヘア・ドライヤー、水爆実験のきのこ雲、臓物をイメージさせるスパゲッティーなどを描き込み、全長86フィートに及ぶ巨大な作品を完成させた。この頃、アメリカはベトナム戦争に参戦しており、ローゼンクイストはこの作品に反戦へのメッセージを込めたと言われている。
88年にはアメリカを代表する版画工房タイラー・グラフィックスと共同で、着色した紙パルプを巨大な手漉き紙に吹き付けるという新たな技法を考案。『水の惑星へようこそ』及び『火の家』シリーズを発表すると、その鮮やかな発色が大きな話題となった。また、92年に発表した『Time Dust』は、世界最大級の版画として今なお注目されている。