この日、鳥取出身のデザイナー山縣良和さんと共に訪ねたのは鳥取県東部の特産品である「因州和紙」を4代に渡り生業とする中原商店。16-17AWコレクションで鳥取の素材を使ったクリエーションを披露した山縣さんは、中原商店にショーで使うあるアイテムの制作を依頼していた。
鳥取駅から東に約25キロの場所にある因州和紙の里・青谷町。鳥取の物づくりを語る上で欠かせない、因州和紙の里で和紙を作り続けている中原商店は、伝統工芸士である中原剛さんと息子の寛治さん親子で営まれている。この土地で作られる因州和紙は、その筆運びの良さから、全国で使われる書画・水彩画に使われる画仙紙の約6割から7割を占めているというから、その品質もお墨付き。
山縣さんと共に訪ねた中原商店で、奥から中原さんが取り出してきたのは和紙で出来たハット。その出来映えを見た山縣さんも「すばらしい」と一言。どうやら、山縣さんから届いたフェルト素材のハットを見本に、中原さんが発泡スチロールで型を作り、その上に手漉き和紙を重ねては乾かし、という作業を繰り返して和紙のハットを制作していったのだという。中原さんは和紙のハットを作るごとに改良を重ね、幾つかのプロトタイプがこの日完成していた。そのハットを手にした山縣さんと中原さんで、ツバの広さが広げられるか、また帽子のシルエットについてアイデアを出しあって、この日の打ち合わせは終了。
山縣さんから送られたフェルトの帽子を見本に、和紙を張り合わせて中原さんが作った因州和紙のハット
寛治さんに今回のプロジェクトの意気込みを訊ねると「生業とは違う形で和紙の創作が出来るのは我々にとっても楽しいこと」と語ってくれた。また、新しい試みに柔軟に対応していくことが、職人としての喜びにもつながるとした上で、「伝統と伝承は違います。伝承は、昔ながらのやり方をそのままに伝えていくこと。そして、伝統は新しさを加えることで受け継いでいくことです」と話してくれた。
そして、ショーで披露された因州和紙のハットがこちら
山縣さんも1617AWのコレクションテーマでもある妖怪について「日本の自然と妖怪は切っても切り離せないもの。古くから日本人は自然と妖怪と共存した世界観を持っており、コレクションでもそれが共存する世界を表現した」とコメントしている。
中原商店では、工房の裏手から和紙の原料となる木を育て、刈り取るところから自分たちで手掛けている。良質な原料を入手するため、木の芽を丁寧に摘み取ることで、まっすぐで加工しやすい状態の楮(こうぞ)の木を手にすることが出来る。原料となる木の表皮から、ゆっくりと時間をかけ不純物をアルカリで煮出し、さらに清流にさらし白さを際立たせていく。晒の作業を数日間経て、さらに手作業で繊維の中からチリを取り除いていく。その後、やっと和紙を漉く工程にうつるというから、まさに根気と体力勝負の作業ばかり。
手で芽を摘み取ることで、加工しやすい状態になる楮(こうぞ)
ゆっくりと時間をかけて不純物をアルカリで煮出す
生命力のある素材に理由があるとすれば、そのルーツが確かであることが理由として挙げられるだろう。今回、山縣さんが自身のルーツである“鳥取”という場所で、時代を越えて受け継がれてきた日本の自然、日本の暮らしと共にある和紙をコレクションに取り入れたことは、ファッションを通じてルーツを辿ることと同義に思えてきた。
――緑、白、黒が織りなす凛とした器をつくる「因州・中井窯」を訪ねます。
鳥取駅から東に約25キロの場所にある因州和紙の里・青谷町。鳥取の物づくりを語る上で欠かせない、因州和紙の里で和紙を作り続けている中原商店は、伝統工芸士である中原剛さんと息子の寛治さん親子で営まれている。この土地で作られる因州和紙は、その筆運びの良さから、全国で使われる書画・水彩画に使われる画仙紙の約6割から7割を占めているというから、その品質もお墨付き。
山縣さんと共に訪ねた中原商店で、奥から中原さんが取り出してきたのは和紙で出来たハット。その出来映えを見た山縣さんも「すばらしい」と一言。どうやら、山縣さんから届いたフェルト素材のハットを見本に、中原さんが発泡スチロールで型を作り、その上に手漉き和紙を重ねては乾かし、という作業を繰り返して和紙のハットを制作していったのだという。中原さんは和紙のハットを作るごとに改良を重ね、幾つかのプロトタイプがこの日完成していた。そのハットを手にした山縣さんと中原さんで、ツバの広さが広げられるか、また帽子のシルエットについてアイデアを出しあって、この日の打ち合わせは終了。
山縣さんから送られたフェルトの帽子を見本に、和紙を張り合わせて中原さんが作った因州和紙のハット
寛治さんに今回のプロジェクトの意気込みを訊ねると「生業とは違う形で和紙の創作が出来るのは我々にとっても楽しいこと」と語ってくれた。また、新しい試みに柔軟に対応していくことが、職人としての喜びにもつながるとした上で、「伝統と伝承は違います。伝承は、昔ながらのやり方をそのままに伝えていくこと。そして、伝統は新しさを加えることで受け継いでいくことです」と話してくれた。
そして、ショーで披露された因州和紙のハットがこちら
山縣さんも1617AWのコレクションテーマでもある妖怪について「日本の自然と妖怪は切っても切り離せないもの。古くから日本人は自然と妖怪と共存した世界観を持っており、コレクションでもそれが共存する世界を表現した」とコメントしている。
中原商店では、工房の裏手から和紙の原料となる木を育て、刈り取るところから自分たちで手掛けている。良質な原料を入手するため、木の芽を丁寧に摘み取ることで、まっすぐで加工しやすい状態の楮(こうぞ)の木を手にすることが出来る。原料となる木の表皮から、ゆっくりと時間をかけ不純物をアルカリで煮出し、さらに清流にさらし白さを際立たせていく。晒の作業を数日間経て、さらに手作業で繊維の中からチリを取り除いていく。その後、やっと和紙を漉く工程にうつるというから、まさに根気と体力勝負の作業ばかり。
手で芽を摘み取ることで、加工しやすい状態になる楮(こうぞ)
ゆっくりと時間をかけて不純物をアルカリで煮出す
生命力のある素材に理由があるとすれば、そのルーツが確かであることが理由として挙げられるだろう。今回、山縣さんが自身のルーツである“鳥取”という場所で、時代を越えて受け継がれてきた日本の自然、日本の暮らしと共にある和紙をコレクションに取り入れたことは、ファッションを通じてルーツを辿ることと同義に思えてきた。
――緑、白、黒が織りなす凛とした器をつくる「因州・中井窯」を訪ねます。