鳥取・延興寺窯ーたとえ二流の土でも、一流の美を作りたい【鳥取の旅 vol.3】

2016.03.21
鳥取砂丘から程近い鳥取空港より、東へ約25キロ車を走らせた山間部に延興寺窯は位置する。ここで山下清志さんと娘の山下裕代さんが親子2代で作陶している。

この窯は、昔の民藝に近いスタイルで使える土が出る」ということもあり、清志さんが1979年に築いたもの。以来、40年近くこの土地の土を使って作品を作り続けている。

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延興寺窯では、山下さんの作品に季節のが生けられていた


白釉、瑠璃色、飴色と、暮らしにすっと溶け込む色合いと、凛とした佇まいが魅力の清志さんの。「ここ延興寺の土は決して一流の土というわけではありません。でも、二流、三流の土でも一流のものを作る。そういった気概でこの窯を続けてきました。」と清志さんは語る。

かつて、民衆が作り出す“下手物”扱いされていたものの中に美しさを見いだした民藝運動。“日常の中にある美”には、美術品と同等以上の美しさがあるのではないか、という思いがこの言葉にも込められているようだ。

娘の裕代さんは、やちむんの里として名高い沖縄県読谷村で焼き物を学んだ後、2004年から父・清志さんと共に延興寺窯で作陶する。彼女の作品もまた、清志さんと同じ土、同じ窯で焼き上げているはずなのに、どこか清志さんの作品とは佇まいが異なる。素朴な風合いの中にぽっと温もりが宿る「白掛色差飛鉋皿(しろかけいろさしとびかんなざら)」の丸皿に目がとまった。

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同じ土、同じ窯で焼き上げていても作り手によりその佇まいは異なる


窯を見渡すと、清志さんの作品には頭をもたげた稲穂のようなモチーフが度々見られる。このモチーフは、その美しさに清志さんが心惹かれたという朝鮮の李朝時代の器を原点にしているのだという。そこに盛り絵という技法を使い、自分なりに解釈を加えて作り上げたのがこの絵柄だ。「じっくりと土と向き合いながら、時間をかけて温めてきたものがこうして作品に結びつきます」と清志さん。

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この土地にあるものを受け止め、時間をかけて自分なりに咀嚼をすることで新たな表現が生まれてゆく器の世界。自然の恵みと、作り手の思いがこの器には込められている。

返り際、見えなくなるまでいつまでも手を振ってくれた山下さん親子。の記憶は、こういう瞬間の積み重ねなのかもしれない。

【窯情報】
住所:鳥取県岩美郡岩美町延興寺525-4
電話:085-773-1219
時間:10時から17時(訪問時は要連絡)

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Shigematsu Yuka
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