絹の魅力や可能性を伝えると共に、絹を日常の中で楽しんでもらいたいという思いが込められたポップアップイベント「絹のみちー遊ー」が伊勢丹新宿店で3月2日からスタートする。
今年1月、日本有数の織物産地として知られる栃木県足利市と群馬県桐生市にファッションディレクター山口壮大さんの姿があった。目的は、「絹のみちー遊ー」で展開する新ブランド「cilk(シルク)」の商品開発。今回FASHION HEADLINEでは、そのトワルチェックやサンプルチェックに同行し、店頭に商品が届けられる前にある物語を伝えたい。
■絹を日常で楽しむ新ブランドを立ち上げるガチャマンラボの思い
今回、関東の事業者5社(ガチャマンラボ、井清織物、トシテックス、廣瀬染工場、丸加)が協力し、「絹の日常使い」をコンセプトにした新ブランドcilkがデビューする。
栃木県足利市のガチャマンラボの高橋仁里さんは、同ブランドを、100年前に日本女性たちを彩った着物「足利銘仙」のものづくりを継承し、シルクのカジュアルな着方を提唱するブランドとして立ち上げるという。絹を日常使いしてもらうためには、自宅で洗えることも大切なポイント。同ブランドでは絹を洗える生地として活用。この日は、アトリエで山口さん監修の元トップスやワンピースのトワルチェックを居合わせた全員で試行錯誤しながら進めていく。各アイテムに採用するシルク混のテキスタイルについても、どう絹らしさと手に取りやすさを両立させるかで談義に。「何がリアルな絹の日常使いか」、その答えがcilkのアイテムには込められている。
cilkのトワルチェックは、絹の素材感をイメージしながら行われた
■編みでも織りでもない表現“ニードルパンチ”の可能性Tex.Box
もともとはテキスタイル会社の営業だったという群馬県桐生市のTex.Box(テックスボックス)の澤利一さん。「現場の声を紙や文字で伝えるのは無理。それより自分で手を動かしたほうが楽しい」という思いから、ニードルパンチの作り手になったという経歴の持ち主だ。織りでもなく、編みでもない、ユニークな技法でテキスタイルに表情を加えていくニードルパンチの技に触れ、山口さんの頭の中でも色々なインスピレーションが湧いた模様。ここでは、後日、このテックスボックスをデザイナーの山縣良和さんが訪ね、「絹のみちー遊ー」のためにオリジナルのテキスタイルを作る。この時の澤さんと山縣さんの物語は後日別途紹介したい。目の前で新たなテクスチャーや柄を備えたテキスタイルが生まれていくライブ感。そして、素材が持つ個性を引き立ててくれることがニードルパンチの可能性だと感じた。
Tex Box.の澤利一さんとファッションディレクターの山口壮大さん
■国内外のデザイナーズブランドも手掛けるトシテックスのレース
昭和30年頃から群馬県桐生市ではじまったとされる編レースの歴史。トシテックスの金子俊之さんは、オリジナルの編機を使って、金属チェーンをレースに編み込む技術を開発するなど、常に新しい表現を創意工夫する作り手。工房の横にあるサンプルルームを案内してもらうと次から次へと表情豊かなレース編を見せてくれた。その素材も、金属、紙、ニット、ファーと様々。好奇心旺盛な目で、いつもユニークで新しい編み表現を生み出していくトシテックス。この場所から世界へと旅立った素材が数多くあることを教えてもらった。
新しい素材を次々と提案するトシテックスの金子俊之さんと山口壮大さん
■着物の帯の織元、井清織物の挑戦
新年早々に訪ねたこともあり、群馬県桐生市の井清織物さんを訪ねると玄関の奥に立派な正月飾り。もともと着物の帯の織元である井上義浩さん、忍さんが生活雑貨ブランド「OLN」を立ち上げたのは2014年。そんな織元の井清織物さんらしく、畳の上にサンプルや糸を並べてさっそく山口さんとサンプルチェック。サイズや織柄の異なるストールを並べて、色やデザインを調整していく。洋装にも和装にもあう色柄が印象的。そして、柔軟に周囲の意見を採用しながらも、作り手の哲学は守るという姿勢が感じられた。
井清の井上義浩さんとも絹素材のストールの色柄を調整していく
明治時代から昭和40年にかけて、絹は日本を代表する輸出品の一つだった。しかし、その後化学繊維の台頭もあり日本の絹産業は衰退していく。そして現在、国産絹のシェアは日本で消費される絹の1%にも満たないという現実もある。
「絹のみー遊ー」で興味深いのは、一つの絹の産地には拘っていないこと。そして、絹100%ではなく、絹と別の素材の混紡でもよいという点。つまり今日、最高品質とされるブラジル産の絹だったとしても、アイテムに絹が含まれていることがポイントというスタンス。そのことついて山口さんは「プロジェクトのキックオフ当初、絹の産地や絹の混合率についてみんなとも相談しました。結果、純国産のシルクではやれることは限られてしまうから、ポリエステルと混紡したりした方が絹を日常で楽しめる」という考え方でプロジェクトを進めることになったとコメントする。
【イベント情報】
タイトル:絹のみちー遊ー
期間:3月2日から8日
場所:伊勢丹新宿店本館2階=TOKYO解放区
期間:3月9日から15日
場所:三越銀座店3階=ル プレイス プロモーションスペース・ジェイアール京都伊勢丹5階=特設会場
今年1月、日本有数の織物産地として知られる栃木県足利市と群馬県桐生市にファッションディレクター山口壮大さんの姿があった。目的は、「絹のみちー遊ー」で展開する新ブランド「cilk(シルク)」の商品開発。今回FASHION HEADLINEでは、そのトワルチェックやサンプルチェックに同行し、店頭に商品が届けられる前にある物語を伝えたい。
■絹を日常で楽しむ新ブランドを立ち上げるガチャマンラボの思い
今回、関東の事業者5社(ガチャマンラボ、井清織物、トシテックス、廣瀬染工場、丸加)が協力し、「絹の日常使い」をコンセプトにした新ブランドcilkがデビューする。
栃木県足利市のガチャマンラボの高橋仁里さんは、同ブランドを、100年前に日本女性たちを彩った着物「足利銘仙」のものづくりを継承し、シルクのカジュアルな着方を提唱するブランドとして立ち上げるという。絹を日常使いしてもらうためには、自宅で洗えることも大切なポイント。同ブランドでは絹を洗える生地として活用。この日は、アトリエで山口さん監修の元トップスやワンピースのトワルチェックを居合わせた全員で試行錯誤しながら進めていく。各アイテムに採用するシルク混のテキスタイルについても、どう絹らしさと手に取りやすさを両立させるかで談義に。「何がリアルな絹の日常使いか」、その答えがcilkのアイテムには込められている。
cilkのトワルチェックは、絹の素材感をイメージしながら行われた
■編みでも織りでもない表現“ニードルパンチ”の可能性Tex.Box
もともとはテキスタイル会社の営業だったという群馬県桐生市のTex.Box(テックスボックス)の澤利一さん。「現場の声を紙や文字で伝えるのは無理。それより自分で手を動かしたほうが楽しい」という思いから、ニードルパンチの作り手になったという経歴の持ち主だ。織りでもなく、編みでもない、ユニークな技法でテキスタイルに表情を加えていくニードルパンチの技に触れ、山口さんの頭の中でも色々なインスピレーションが湧いた模様。ここでは、後日、このテックスボックスをデザイナーの山縣良和さんが訪ね、「絹のみちー遊ー」のためにオリジナルのテキスタイルを作る。この時の澤さんと山縣さんの物語は後日別途紹介したい。目の前で新たなテクスチャーや柄を備えたテキスタイルが生まれていくライブ感。そして、素材が持つ個性を引き立ててくれることがニードルパンチの可能性だと感じた。
Tex Box.の澤利一さんとファッションディレクターの山口壮大さん
■国内外のデザイナーズブランドも手掛けるトシテックスのレース
昭和30年頃から群馬県桐生市ではじまったとされる編レースの歴史。トシテックスの金子俊之さんは、オリジナルの編機を使って、金属チェーンをレースに編み込む技術を開発するなど、常に新しい表現を創意工夫する作り手。工房の横にあるサンプルルームを案内してもらうと次から次へと表情豊かなレース編を見せてくれた。その素材も、金属、紙、ニット、ファーと様々。好奇心旺盛な目で、いつもユニークで新しい編み表現を生み出していくトシテックス。この場所から世界へと旅立った素材が数多くあることを教えてもらった。
新しい素材を次々と提案するトシテックスの金子俊之さんと山口壮大さん
■着物の帯の織元、井清織物の挑戦
新年早々に訪ねたこともあり、群馬県桐生市の井清織物さんを訪ねると玄関の奥に立派な正月飾り。もともと着物の帯の織元である井上義浩さん、忍さんが生活雑貨ブランド「OLN」を立ち上げたのは2014年。そんな織元の井清織物さんらしく、畳の上にサンプルや糸を並べてさっそく山口さんとサンプルチェック。サイズや織柄の異なるストールを並べて、色やデザインを調整していく。洋装にも和装にもあう色柄が印象的。そして、柔軟に周囲の意見を採用しながらも、作り手の哲学は守るという姿勢が感じられた。
井清の井上義浩さんとも絹素材のストールの色柄を調整していく
明治時代から昭和40年にかけて、絹は日本を代表する輸出品の一つだった。しかし、その後化学繊維の台頭もあり日本の絹産業は衰退していく。そして現在、国産絹のシェアは日本で消費される絹の1%にも満たないという現実もある。
「絹のみー遊ー」で興味深いのは、一つの絹の産地には拘っていないこと。そして、絹100%ではなく、絹と別の素材の混紡でもよいという点。つまり今日、最高品質とされるブラジル産の絹だったとしても、アイテムに絹が含まれていることがポイントというスタンス。そのことついて山口さんは「プロジェクトのキックオフ当初、絹の産地や絹の混合率についてみんなとも相談しました。結果、純国産のシルクではやれることは限られてしまうから、ポリエステルと混紡したりした方が絹を日常で楽しめる」という考え方でプロジェクトを進めることになったとコメントする。
【イベント情報】
タイトル:絹のみちー遊ー
期間:3月2日から8日
場所:伊勢丹新宿店本館2階=TOKYO解放区
期間:3月9日から15日
場所:三越銀座店3階=ル プレイス プロモーションスペース・ジェイアール京都伊勢丹5階=特設会場