3月20から22日の3日間、渋谷ヒカリエ8、9階で「メルセデス・ベンツファッション・ウィーク東京」と連動した合同展示会「ニュースタンダード(N/E/W/S/T/D)」が開催された。
「N/E/W/S/T/D」は、トレードショー、インスタレーション、アートエキシビジョンが一体となった複合型のエキシビションで、“新しい時代の価値観とは何か!?”を検証し、そこから生まれるクリエーティブを“NEW STANDARD”と位置づけ、新しい価値観を持ったクリエーターの創作物や活動を国内のみならず世界へ発信していくプロジェクトだ。
期間中、渋谷ヒカリエには総勢70組以上のブランドやアーティストが集結。実力派から若手まで注目ブランドのコレクションが一堂に介した展示ブース、ファッション、アート、音楽、各業界の著名人による時代の新しい価値をボックスにつめて表現する企画展、豪華DJ陣によるプレイ、アート作品の展示やトークセッションなど、3日間限りのスペシャルエキシビションとあって、多くのファッション関係者を中心ににぎわいを見せた。
なかでもメインとなったのが、9階フロアで開催された国内及び海外のバイヤーへ向けた展示商談会「N/E/W/S/T/D-トレードショー(TRADE SHOW)」。会場には伊勢丹やビームス、トゥモローランド、ルミネ等で取り扱いのある人気ブランドから、新進のブランドまで全39のブランド・クリエーターのブースがところ狭しと並び、それぞれに新作コレクションを並べた。
毎回、デザイナーが世界を旅してインスパイアされたコレクションを展開する「アーキ(archi)」の13-14AWのテーマは“ベルギー”。枯れたバラやダイヤモンドをモチーフにしたテキスタイルを用い、ヨーロッパの上品でクラシックな雰囲気の中にちょっぴりファンタジックさも感じられる世界観を表現した。また、ヘンリー・チャールズ・ブコウスキー著の『くそったれ!少年時代』『勝手に生きろ!』で描かれた世界にインスピレーションを受けたという「ネーム(Name.)」は、“HANK(糸束)”をテーマに、最高級綿として名高いギザ綿を用いたシャツやオリジナルタータンチェックを使用したジップコートなど、アウトローな日々を過ごしているが、小説を書く事だけには純粋でひたむき、そんな異国生まれでアメリカ育ちのキャラクターの青年期からの成長をイメージしたコレクションを展開。
その他にも、“80から90年代の古き良きアメリカ”をテーマに、アメリカ・ブルックリンのマンションの壁やカリフォルニアの悪い男達が好みそうなアイテムを描いたオリジナルのテキスタイルを用いた「アップルバム(APPLEBUM)」や、「ブラックアンドブルー(BLACK & BLUE)」は“染め”をキーに、メンズに加えて13-14AWデビュー予定のレディースラインもお披露目するなど、人気ブランドの次シーズンの展開に注目が集まった。
また、アート作品の展示や企画展などが開催された8階では、3月21日、新しいファッションのカタチを模索するファッションサイト「チェンジファッション」滝田雅樹編集長によるトークセッションが開催。南馬越一義(BEAMS創造研究所)、中川一(伊勢丹新宿店)、斉藤卓也(ゾゾタウン)、柳翔吾(キャンディー)と豪華ゲストメンバーのクロストークに多くの人が耳を傾けた。
「リアルに近い服が売れる時代。モード的なブランドは既存のチャンネルではなかなか難しい」という声が上がる一方で、独自路線でハイエンドなファッションアイテムをそろうセレクトショップ「キャンディー」の柳氏曰く、「自分達がいいと思うものをどう伝えようかと。それが結果的にお店でどうやって売っていこうかということには繋がるが、はなから売れるものをバイイングして売ろうというような考えはない」と話す。
また、「食や暮らしにお金を使う人々が増え、トレンドやエッジ的なものがデザイン性じゃなく“生活のクオリティーオブライフ”のようなところに寄っている」という意見に対しても、「うちはまずファッション。服が欲しいからごはんを我慢したり。そういう自分が通った道を若い人にも伝えたい。潜在的にはファッションに対する興味はあると思う。もともとそういう風に日本のファッションができあがってきたのだし、増やしていく取り組みをしないと先がない」という柳氏の話にゲスト一同拍手。
会期中8階ギャラリー&インスタレーション1500名、9階トレードショー2000名の計3500名を動員した。人々の価値観が大きく変わりつつある今、ファッションで重要なのは“伝えたいもの(作りたいもの)をいかにビジネスまで持っていくか”。それがニュースタンダードであり、今後の鍵となりそうだ。