甘美な香りや甘み、苦み、甘酸っぱさと、人生を映し出すような奥深いスイーツの世界に酔いしれる。3月9日、日本が誇る人気パティシエがパフォーマンスや新作を披露する「東京スイーツコレクション2013」が品川プリンスホテルで開催された。
毎年恒例、大橋健二(夢菓子工房ププリエ)がプロデューサーを務める中、今年は、和泉光一(アステリスク)、大橋圭(ププリエ)、神田広達(ロートンヌ)、白鳥裕一(キャトーズ・ジュイエ 東京)、高木康裕(菓子工房アントレ)、辻口博啓(モンサンクレール)、土屋公二(テオブロマ)、松島義典(名古屋マリオットアソシア ホテル)、鎧塚俊彦(トシヨロイズカ)の9名のパティシエが集結。約200名ものゲストを前に、ライブ感溢れるパフォーマンスや新作スイーツを披露した。
中でも注目が集まったのが、今回が初の試みとなる「トレンドスイーツ」の発表。イベント冒頭、「2013年のトレンドスイーツは“ネオ・トラッド”」と発表した大橋健二氏。「皆で話した結果、これしかないだろうと。食のみならずファッションなど様々な文化が、今、原点に返ろうとしている。スイーツも技術、デザイン、味とすべてにおいてトラッドに返る。来年、再来年としばらくの間、この潮流は続くだろう」と語った。
また、9名のパティシエが3人一組となり8分間という限られた時間でショーピースを作り上げるパフォーマンスも圧巻。「天空を駆け巡る龍が如く我が道を行くという決意表明」と語った辻口博啓氏は、イタリアンメレンゲで黒いボードにダイナミックな昇り龍を描き出した。最後にバーナーで炙って陰影をつけるという大胆な技の披露も。大橋圭は、松島義典、鎧塚俊彦と3人一丸で作品作りに挑んだ。イベントのコンセプト“日本から世界に発信” に同調し、“和”をイメージしたショーピースを製作。チョコレートの扇子を中心に飴で作った花や飾りを取り付ける繊細な技で会場を湧かせた。
パフォーマンスの最中、ゲストの元には次々と参加パティシエによるコレクションスイーツが。土屋公二氏によるティラミスを進化させた“ティラミスモダン”、和泉光一氏のフランスの伝統菓子“フレジュ”、大橋圭氏による“新感覚のオペラ”など、パティシエたちが読み解く次世代スイーツトレンドを本人自らの解説を聞きながら味わった。
最後の目玉は、パティシエとトップスタイリストの近藤亜子氏とのコラボレーションによるファッションショー。「近藤亜子さんが持つ想像力とパティシエが持つ想像力が幾重にも重なり、単なるコラボレーションを超えて、一緒に美しいもの、素晴らしい文化を創りだせるようなつながりにしたいと取り組んだ」と大橋健二氏。それぞれのパティシエの世界観を象徴するような個性溢れるファッションとスイーツで作られた小物をまとい、ランウェイに登場するモデルたちの華やかな姿にゲストから感嘆の声が上がる。
「人生においてスイーツは“幸せな時間”をともにしている。スイーツの原点は人を喜ばせることにある」と大橋健二氏。帰り際、パティシエらに見送られながら限定スイーツの土産を手にするゲストの顔には笑みが溢れていた。