【ファッション再生】“機械・ファッション大国である日本”イエリ社長×兼松繊維社長2/3

2014.10.18

T:今はファストファッションが多くあるじゃないですか。我々は、あの商品を製造して売って利益を追求していることに大しては企業として悪いことだとは思わない。ただやり方、ルールに関しては色々考えることがある。国内から巣立っていった企業の生産基準が全て海外へ行っている。付属品、原材料、フィニッシュまですべて海外というのは、そろそろナンセンスだと思う。

やはり、国内で育った企業は、国内に還元していくという仕組みを作らなければならないだろう。例えば、素材を開発していくだとか、リユース、リサイクルに積極的に参加していくとかで。法的な規制を設けなければいけない段階なのかもしれない。大手からは反対意見が出てくるかもしれないが、日を守っていくためにはやらないと。

家電製品の年間の粗大ゴミってどのくらいあるか知ってます?日本だけで65万トンもあるんですよ。これは公表もされていて、かなり正確な数字です(家電は必ず買い取らなければならないから)。じゃあ、衣料品ってどのくらいの数字だと思います?衣料品は、公表されているだけて100万トンです。多分、自宅の分別ゴミ(穴開いた靴下とか含めて)で捨てられているものでも100万トンあるので、約200万トンくらい捨てられているだろうと言われています。

家電ゴミの中からのアルミの再生率が約78%。一方洋服の200万トンはどれくらいがリユース、リサイクルされているかというと12・13%しかないんです。しかも、軍手とかロープとか車のシートとかそういうものにしか再生されず、ファッション衣料に戻るというのはほぼ皆無。これ、200万トン分廃棄されているのってほぼ天然素材だから。

先日、ジーンズ協会の会長さんがおっしゃっていたんだけど、2025年にはデニムを作る綿が世界中からなくなると言われているらしい。それはなぜかというと、人口が増え100億人に達したときに食料不足が起きて、綿畑を作ることより食料畑を作ることが優先される。よって綿畑は世界中から消えていってしまうのです。あり得る話だよね。石油と同じですよ。少なくなってくれば搾取が始まり、戦争が始まり…。まあ、コットンの場合だと代わる素材を探すということになるかもしれないけどね。紙とか。

となると、食料のことももちろん問題だが、我々は食品業界の人間ではないのでアパレルの原材料不足問題は本当に深刻。それをどうするのって考えたときに、やはり企業レベルではなく携わっている人間達がそこに対する問題定義に参加していかねばならないと思う。

でも日本はダサい感じでやっていると広がらない。例えば、リサイクルした糸から製造した生地を、ラグジュアリーブランドとかに使ってもらった段階でやっとムーブメントになるんです。ちょっと高くても世界的に当たり前、スタンダードとなるでしょう。

あと、パリニューヨークなど、どこの国の人と話をしていても、リサイクルの原料を作る機械を発明するのは日本人にしかできないと言われますよ。ドイツは機械大国ではあるが、ファッション大国ではないから。機械大国であり、ファッション大国であるのは世界中を探しても日本にしかない。例えば、ホールガーメントの編み機を作った島精機とか。実際に島精機の人とも話したけど、絶対作れるはず。そういう企業に立ち上がってほしいと思います。難しい問題は出てくるとは思うけど、それを改善していけるのが日本人のいい所だと思っているから。こと技術に関しては。

だから、今からでも行政とそういう企業が手を挙げてやってくれれば枯渇するなんてことにはならないだろうし、このままでは本当に悲惨な目に合うことが目に見えている。

80年代から90年代前半に会社を成してきた人達に対して、今の世の中に対して責任を取りなさいと言いたい。再生とかというキーワードに対して、今の60・70代の人達に率先して立ち上がって頂かないと。だって立ち上がって頂けるレベルに皆さんいるじゃないですか。社長や役員をされているんですから手筈を整えて頂かないと。我々は現場で動く人間だから、やっぱり利益、売り上げだけを考えて生きていける世の中ではなくなってきているからね。そこは是非貢献したい。こんな話をすると長ケ部社長は耳が痛いかもしれないけど(笑)。

O:いやいや私もこの業界で生きてきた責任はやはり感じますのでそのためにもやりたいと思います。僕らがまず思い起こさないといけないなあと思うのは、30年前はきっと瓶だとか缶だとかの分別もしていなかったですよね。これもリサイクルの意識が社会的に盛り上がってきて今や当たり前の様に分別しています。ところが衣料品は取り残されていて、本当に、このままでいいのかと思っています。このままでいい訳ないからどうにかしないといけない。そう思っている人はいっぱいいるのにリーダーシップを取ってやっていこうとはなかなか出来ない。我々は微力ではあるのですが何かの役に立てないものかと思っています。

あまりにテーマが大きく、例えばこういった話を同業の方にしても「言うことは解るけれどそりゃあ無理ですよ」と言われてしまう。無理でない様にしていくためにはやはり業界あげて意思をもつことが先決なのでしょうが、更に言えばマスコミに協力してもらってリサイクル、リユースのムーブメントとして盛り上げていくことが出来て、最終的には政府が動いて“衣料品リサイクル法”までいければこの問題のスタート位置に立てるかと思います。

T:他業種では電力の買り取り自由化とかありますよね。うちもソーラーパネルで発電していて、電力買ってもらったんですよ(笑)。

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3/3に続く。
編集部
  • 兼松繊維社長・長ケ部良一氏
  • イエリデザインプロダクツ社長・手塚浩二氏
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