大分県立美術館(Oita Prifectural Art Museum 、OPAM)が2015年4月24日にオープンする。10月末に竣工を予定。23日に概要を披露する記者会見が都内で開かれた。
美術館のコアとなるコンセプトは、「五感で楽しむことができ、自宅のリビングと思えるようにリラックスできる、大分県民とともに成長する美術館」だ。
設計を手掛けたのは今年3月にプリツカー賞を受賞した坂茂。坂氏は、「美術館が展覧会のチケット収入のみで運営を続けることは難しく、美術館の企画や役割が展示に限らないかたちで多様化しているのは世界的なトレンド」と述べた上で、アート愛好家に限らず、社会に開かれる美術館を目指したという。ファサード1階は折り戸によって開閉し、屋外と屋内が一体化する。また、展示用のパネルは自由に配置可能で、フレキシブルな展示を実現。サイン表示やショップ・カフェカウンターなどの什器も移動式で都度様相が変わる。
「従来の美術館のように、中身が見えないブラック・ボックスではなく、世界に他に類を見ない、フレキシブルなことができる新しい形の美術館の設計を目指した」と坂氏。
館長は西武美術館・セゾン美術館勤務を経た武蔵野美術大学教授の新見隆が務める。新見氏は、「美術館というよりは、新しいライフスタイルを提案する文化施設」としてOPAMを運営していく方針を語り、年間4度入れ替わる予定の今後の展示について説明した。「大分県には、大分県立芸術会館が所蔵してきた大分に縁のある19世紀と20世紀の近・現代作家の約4,000点の作品がある。1977年に芸術会館が設立されて以来うまく活用されてこなかった、これらの作品をフル活用して展示することが、第1の目標」と述べた上で、「これらの作品と西欧の名作やコンテンポラリーな作品を織り交ぜて見せることで、従来の展示とは違った、独自の美術展を企画していく」と今後の構想を明かした。例えば、大分の仏教美術とグスタフ・クリムトの作品が並ぶような展示をみることができるという。
地方の美術館では、他の美術館で行われた展示をそのまま見せる巡回展が頻繁に行われるが、OPAMではそれら巡回展の受け皿になることは拒否し、あくまでも独自のコンテンツで勝負する。
新見氏は、「大分には高山辰雄や、宇治山哲平などの、単なる地方作家の作品に留まらない、世界レベルを誇る素晴らしい近代美術の作品がある。それらの作品を別分野の美術作品と並列させ、独自の方法で展示することによって、金沢(21世紀美術館)、瀬戸内(直島)、青森(県立美術館)、ニューヨーク現代美術館や、ポンピドゥー・メス(フランス)で見られるのとは違った、唯一無二の、日本、いや世界で一番面白い美術館となることを約束する!」と意気込みを見せた。
また、美術作品に限らないライブやダンスパフォーマンスを中心とした企画で、街中に飛び出して行くような「開かれた美術館」らしい展示も行う予定だ。
2006年開館の青森県立美術館以来、国内の県立美術館としては9年ぶりにオープンするOPAM。ミュージアムショップやカフェでも、大分の商材や食材を提供することで、地域性を発揮する。スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館が集客力を発揮し成功したように、そしてポンピドゥー・メスの来館者によって地域の活性化が計られたように、坂茂の建築そのものが大分の観光資源となって、地域産業の発展と経済効果を生むことが期待される。その中で、箱としての「ブランド美術館」の一歩先を行く新見のキュレーションに注目が集まる。
11月23日から30日には開館に先駆け「OPAM誕生祭」と称して様々なイベントが行われる。