思いがけない人との出会い、遭遇といった意味を持つ“encounter”。FASHION HEADLINEのENcounterプロジェクト2回目は、宮城県栗原市で日本最古の藍染め「正藍冷染(しょうあいひやしぞめ)」を継承する千葉まつ江さんを訪ねてきました。
申し遅れましたが、わたくし編集部の重松です。子供のころから「色」や「染め」に興味があって、高校の修学旅行で訪れた沖縄では、紅型の図録を買い集めるような女子高生でした…。(ちなみに、成人式も紅型風の着物で写真を撮りました)
染織が継承され、生み出されていく様を間近に見させて頂く。さらには、作り手の方々の暮らしや言葉に刻まれた思いを伝える機会を頂き、昔の自分に会えたなら教えてあげたいような、幸せ者です。
さてさて、今回も夏に訪れた八丈島で「黄八丈めゆ工房」を営む山下芙美子さん、誉さんへの取材と同様、元禄元年創業の京都の西陣織の老舗「細尾」のみなさんとご一緒させて頂きました。
では、ここからは細尾の細尾真孝さん(以下、H)と編集部重松(以下、S)のダブルトークでお届けします!
S:いやぁ、前回の八丈島で訪ねた山下さんご夫妻の黄八丈に続いて、今回お伺いした宮城県栗原市で千葉まつ江さんが作り出す「正藍冷染」も素敵でしたね。
H:なんだか、どちらも通じるものがありましたよね。
S:なんていうんでしょう、包容力というか…。自然の恵みも、厳しさもそのまま受け止めながら暮らしていく潔さを感じました。
H:最近、フランス出張でカルティエの工房を見学する機会がありました。カルティエの工房では、職人がとても大切にされていて、職人たちも誇りを持って働いているんです。それは、バカラやエルメスにも共通する姿で、印象に残っています。
S:そうですね。日本でも、世界でも、職人たちが“誇り”を持って働くためには、どんな環境が必要なんでしょうか?
H:まず稼げるマーケットであることが重要ですね。そして、職人というのはとてもクリエイティブな仕事なので、クリエイティビティを発揮できる環境というのも大切です。
S:確かに、職人たちの技と感覚を目の当たりにすると、本当に繊細で創造性に満ちていますね。
H:例えば、カルティエでは職人たちの部屋が、工程ごとに用意されています。石留めの職人の部屋は、完全防音の部屋で手先に集中した状態で石留めをする環境が用意されています。
S:本当に職人が大切にされているんですね。だからこそ、そんな職人になりたいという後継者が現れて、技術を継承できる。
H:実際、カルティエでも3世代に渡って職人だという家族にも出会いました。
S:それは、すてきですね。せっかく職人が試行錯誤しながら継承してきた技が、いまの暮らしの中でも、未来の暮らしの中でも、様々なカタチで活用できたらすてきだなと妄想してしまいます。
H:日本各地の素晴らしい染織の技を継承し、新たな作品を創造する人たちにこれからも会いに行きたいですね。
という訳で、FASHION HEADLINE「ENcounter」では、素敵な出会いを求めて、日本全国津々浦々旅をしながら、そこで出会った物語を伝えていきたいと思います。
次回は、鳥取県米子市で弓浜絣を継承する田中博文さんの工房と、弓浜絣の素材となる和綿「伯州綿」の栽培に挑戦する境港市の取組みを紹介します!