ライゾマティクス真鍋大度が語る「アップルウォッチの創造性」--2/2【INTERVIEW】

2015.11.05




今回、ライゾマティクスの真大度さんにインタビューしたのは、東京表参道にあるアップルストア 表参道。アップルウォッチについての説明を聞きながらの取材だった。

新しいテクノロジーを駆使し、新しい表現に挑戦する真鍋さんにとって、アップルウォッチはどう創作意欲をかき立てるのか。真鍋さんの言葉は、クリエーションだけでなく、ライフスタイルの未来像をも想像させてくれた。

ーー真鍋さんにとって、デジタルガジェットやテクノロジーはどのような存在なのでしょうか?

何より新しいモノが好きなので、まずは何でも試します。もちろん紙のも読みますし、アナログレコードも未だに聴いています。制作している作品もパソコンや映像の中で閉じているものは少なくて、身体やフィジカルなものを使うことが多いですね。ただ、僕自身、気がつくとずっと携帯を触っているタイプなので、バランスや使い分けは意識していますね。

ーー今、アップルウォッチを腕にされていますが、これが作品に繋がる可能性を感じていますか?

アップルウォッチのような、ウエアラブルなデバイスは自分でも開発してきましたが、これがどう生活に役立つかというユーティリティはもちろん、楽しいかどうかが大事だと思います。率直に楽しいですし、新しい表現に繋がるとは思います。

ーー例えば、どんな可能性を思い浮かべますか?

アップルウォッチを身につけていれば、その人の心拍数や、今後は加速度も測定できるようになります。そして、ネットに繋がっているのでその数値を共有することも可能です。これを医療やスポーツに使うのが王道かと思いますが、エンタメに使えるようになってくると面白いですね。

ステージでのパフォーマンスは、観客のフィードバックもすごく大事になるのですが、今までは、手拍子など視覚的な情報しかDJには分からなかった。でも、会場で特定のアプリを入れて起動してもらえれば、観客の心拍数やモーションが分かるし、DJからの新しいアプローチも可能になるでしょう。例えば“DJ対観客”ではなく、“対それぞれ”といったように、そこにいる観客それぞれに向けたパフォーマンスが可能になるかもしれない。心拍数が上がっている人にはこういうメッセージ、ずっと座ってるだろう人にはこうと、ターゲットごとのアクションも可能になりますから。アーティストと観客の関係、フロアとステージの関係がこれで変わると思いますね。

ーーそれは、以前言われていた人工知能への興味も繋がってくるのでしょうか?

そうですね。例えば、今、音楽はネットで数クリックすれば膨大な曲を聴くことができますが、そのぶん、そこから自分の好きな曲を探すことが難しくなっていると思います。つまり、パーソナライズが必要なのですが、アップルウォッチで測定できる心拍数とそのデータベースを応用すれば、ライフスタイルにおける音楽との新しい接点を生み出すこともできるはずです。例えば、“夜中の2時に、渋谷で心拍数が140超えている人が聞いている音楽”というメタデータを音楽に付けるといったように、もし自分が渋谷で同じような状態にいたら、その音楽が聞きたいという可能性もあるわけです。そういう仕組みを提案するのも、今のテクノロジー、人工知能の使い方だと思いますね。

ーー今、人工知能は、ファッションなどのシーンにも活用され始め、今後の私たちのライフスタイルを大きく変える可能性もあります。

音楽やファッションのようにハイコンテクストなものにどこまで対応出来るかどうかには非常に興味があります。簡単なオススメは出来ると思いますが、「明日のデートに何を着ていったら良いか」というお題は、相手のファッションや遊びに行く先、旅行であればスーツケースの中身など複合的な情報が必要になりますよね。こういった情報を集めるための仕掛けがパソコンの中だけではなく、身の回りに溢れるようになってきました。人工知能はテクロジー全般に言えることですが、悪いことに使う方が簡単です。そうではない可能性を追求して、新しい表現を生み出せたらなと思っています。

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松本雅延
  • ライゾマティクス真鍋大度さん
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