木曜日連載、アート・ブックショップ「NADiff(ナディッフ)」各店による今読むべき1冊。今週は、森山大道、鈴木一誌の『絶対平面都市』。東京・恵比寿の東京都写真美術館内にあるミュージアム・ショップ、NADiff BAITEN(東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内 東京都写真美術館2F)によるご紹介です。
■『絶対平面都市』森山大道、鈴木一誌
「自分がトリップ状態にハマった感じのときは、かぎりなく街の表面だけをペラペラに撮りたい、タタミイワシのように撮りたいっていう気持ち、ありますね」
これまで様々な街を撮り、数々の写真集を出版してきた、森山大道。その写真には「時」を感じないのはなぜなのか?なぜリアルであるはずの都市が、森山の写真の中では限りなくグラフィカルに見えるのか?森山は、カメラを通してどのように都市を見ているのか?
こうした疑問を紐解くべく、ブックデザイナーの鈴木一誌がインタビューした対談をまとめた本書。2005年以降の既出の3つの対談に、さらに本書が初出の対談が5本集録された。
写真を通して「都市の平面図をつくりたい」という森山大道の、写真の撮り方の話に始まる2人の対談。コントラストが強く、粒子の粗い写真でおなじみの森山。その作風から「ワイルドに見られる」というが、実は写真を撮るとき「内実はひるみっぱなし」と、率直に語られる言葉には、意外な素顔も垣間見られる。
写真集の話では、「なぜ断ち切りが多いのか」「なぜノンブルをいれないのか」「タテ位置二枚の組み合わせに編集の力量が知れる?」といったブックデザイナーならではの、マニアックな視点で森山の写真集をとことん掘り下げる。
マニアックな視点で語られる話から、やがて浮き彫りになる森山大道の「写真観」。写真の中の「平面都市」の秘密を知ったとき、きっとあなたも森山大道よろしくノーファインダーでカメラを構えた気分で、見慣れた街をペラペラにしたくなる。ファン必読の1冊。
現在、東京都写真美術館では、リニューアルオープン後初となるコレクション展として、「東京・TOKYO」展が開催中。森山大道の写真も出品されている。「東京」というわたしたちにとって見慣れた都市をテーマにしながら、写真を通して様々な角度でその全容を掘り下げようという試みだ。本書は、そうした写真を見るにあたって、新たな見方を提示してくれる1冊となるのではないかと思う。
【書籍情報】
『絶対平面都市』
著者:森山大道、鈴木一誌
出版社:月曜社
432ページ/190×126mm
発売日:2016年11月
価格:2,750円