日々進化を続けるIT技術で、ファッション業界でのイノベーションを試みようとするベンチャー企業を取材・レポートする本連載。第2回目の中編ではBASEの提供するサービスの内容について紹介する。
事業計画は後回しという型破りな形でスタート、そして1か月で1万人もの登録者を集めたBASE。そのアイデアを思いついたきっかけは、婦人服小売業を営む鶴岡氏の母親の一言だった。
「母親が、数年前に既存のECサービスで商品を売りたいと言い出したんです。母親はインターネットに詳しくないので、それで僕に手伝ってほしいと。でも楽天で始めたら、僕がずっと面倒見なきゃいけない、それじゃ大変だと思って、お金も技術もない人でも使えるようなサービスを作ろうと思いました」
3、4年後にはインターネットで誰でもビジネスできるようになる時代がくる、という確信している鶴岡氏は、売る技術がない人にとって、「夢をかなえるプラットフォーム」(同氏)だという。
「BASEのユーザーの約6割は学生や主婦など個人です。今までネットショップに興味がなかった層がどんどん市場に入ってくることで、新しいお金の流れができています。また、今まで市場に流通していなかったものがオンラインショップに並ぶことで販売・購入が可能な商品になり、新たな価値が生まれています」
資本や、店舗を持ったことがない個人によるネットショップの運営を可能にするBASEは、既存のECサービスとは全く違う市場を狙っている。注目すべきは、商品が価格順に並べられて比較されたり、広告料を払ったショップが先に表示されてしまったりする従来のECのポータルサイトでは埋もれてしまいがちなモノたちがきちんと消費者に知られる状況があるということ。ここでのキーワードは「コミュニケーション」だ。
あるショップのオーナーは、BASEでショップをオープンしてから自分の友達に呼び掛けたり、SNSのフォロワーに直接宣伝。そして、購入者ともハガキを通じてコミュニケーションをすることで、徐々に認知されるようになり、購入につなげていった。その様子を見て、鶴岡氏はネットショップ運営におけるコミュニケーションの大切さに気付いたのだという。
「BASEでは、サイト上でいくつかのショップを紹介する以外、特に宣伝を行っていません。オープンすると、ユーザーが自分の友達や、SNSのフォロワーに伝え、ビジネスが始まります。個人の周りに小さい経済圏を作っていって、日本中の人々にリーチしたいというのがBASEの目的でもあります。実は、“拠点”という意味である“BASE”という名前には、経済活動の拠点という意味が込められているのです」
BASE自体も、コミュニケーションを通して広がっている。スタートしてからあっという間に多数の会員を集め注目されてきたが、これまでの広告費用はゼロ。Twitter、Facebook、メディアへの露出がPRを担ってきた。
コミュニケーションに支えられたBASEというビジネス。どういうショップが成功するのかという質問には、「オーナーががんばっているところですね。BASEもそんなオーナーさんたちと一緒に成長していきたいです」と鶴岡氏は答えた。
次回後編では、気になるBASEの今後のビジネス展開について話を聞く。