
公表されているリリースや資料などには“敬愛する画家へのオマージュ”としか記載されていないが、その画家がマティスであることはファーストルックを見れば明らか。ヒロココシノの2016春夏コレクションは15日、恵比寿ガーデンホールで行われた。
マティスの切り絵からインスピレーションされた色の洪水は、さまざまな花のプリントやレーザーカットされたモチーフに形を変えてランウェイに咲き乱れる。さらに花、ボタニカル、アニマルプリントがミックスされたコレクションは「シュールな画集」というテーマそのもの。
より光沢感を増したコーティング、パンチングやラミネート、ヒートカットのスカラップなど、最先端のハイテク技術が駆使された素材や加工の贅沢さとともに、縁に墨をにじませトンボが手描きされたフィナーレの白のシルクドレスまで、洋服のテクニックが詰まった分厚い一冊の画集で構成された。
ヒロココシノの長いコレクションの歴史の中でマティスがテーマになったのは初めてのことだという。「服に落とし込みやすいテーマだから、あえてこれまではやらなかった」とデザイナーの小篠弘子本人がショーの後、明かしてくれた。「今なら、少し辛口な表現でやれば面白いかなと思って」と笑う。次のコレクションは「自分の原点に戻る」とその声は力強い。
text:野田達哉