5月12日、伊勢丹新宿店にて販売がスタートした「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」の新アクセサリーブランド「ディスコード(discord)」。当日行われた記者発表でデザイナー・山本耀司が発言した内容全文を紹介する。
僕が特に最近気にしているのはジャパンクール。(これは)日本発信の世界に影響を与える非常に高いレベルの、感覚の鋭い日本の工業技術の最先端と同じようなレベルのもの。要するに世界にはないレベルの高いクリエーティブな感覚だ。これを商売ではソフトと呼びますが、ソフトしか日本には輸出する物がない。その中で日本政府はアニメとかキャラクターだけを大事にしている。
僕にとっては残念な状況が続きました。僕が残念だなぁと思っていたところへ伊勢丹さんからお声を掛けていただいて、小物・バッグ・スカーフなどをやってみないかと言われました。伊勢丹さんは去年に改装が終わってから、アーティスティックな百貨店になっていくというお話を伺っておりました。なので、ぜひ協力したい、やらせていただきたいということで引き受けたんです。即行で引き受けました。
ところが、私自身、服を作り続けて37、8年、バッグってデザインしたことがなかったんです。パリコレクションで発表する男のデザイナーで女性のことが大好きなデザイナーはほとんどおりません(笑)。私はファッション界の化石と呼ばれています。女好きのデザイナーは化石なんです(笑)。だから女心が分からないんです。バッグをどう持つのか、どうショルダーにして背負うのか、どのくらいの分量が良いのかが分からない。なので、急遽自分の周りに(バッグを持つ女心を)フォローしてくれる女性デザインスタッフを集めました。大きな方向性は僕が決めましたが、実際のバッグの大きさとか革の柔らかさ、ベルトの長さとかハンドルの具合とか細かいことを全部女性スタッフと相談しながら作りました。
(ディスコードは)半年間、三越伊勢丹さんでエクスクルーシブで取り上げていただきます。その後は継続してヨウジヤマモトブランドのアクセサリー部隊・部門としてずっと継続して行くつもりです。このブランドは日本だけじゃなくて世界でどこまで伸びるか、頑張るつもりでいます。みなさんどうぞ僕を助けてください!よろしくお願いします。
フォトコールでは、“フェイスブックで拡散して”との発言も。
■会見終了後、記者から受けた質問に対して
――伊勢丹と組まなければできなかったことはありますか?
もちろんあります。この百貨店は世界で一番新しい物がいつもあるんですよ。
――クールジャパンではアニメやキャラクターを推しているのが残念と言っていましたが。
だって、残念じゃありませんか?日本にはもっとハイレベルな正しい意味でのクールな物があるのに。
――日本の本当の意味でのクールな物というのはどんな物だと思いますか?
日本的な文化。日本的な美しさ。これがクールです。外国ではそういった物は作れませんから。いわゆる引き算の文化、間(ま)の文化、行間を読む、崩れを美しいと思う、歪みが美しいと思う、そういうところに美しさを発見できるのは日本だけなんです。
――そういった感性が生かされた技術、または埋もれてしまっている日本の技術はありますか?
沖縄返還の時に、秘密協定で繊維産業が壊滅的な打撃を受けて以来、日本政府は繊維産業に全然力を入れておりません。本当に細々と職人さんが京都とか北陸とか様々なところで作っています。到底他の工場ではできない世界的なレベルの織り物とか染め物とか、ちょっと年長者の職人の方々ですがまだまだ頑張っています。私が伊勢丹さんと取り組みをすることで、こういう商品が消費者の手元に届くんだと言うことが分かれば、その零細な工場も跡継ぎが出てくるんじゃないかと。そうすれば日本の将来はあるぞと。ちょっと大げさですが、そのために頑張るぞというような考え方でやっております。
――次世代につなげるためにも、このブランドを立ち上げたという思いもあるのでしょうか?
そうですね。それがこの業界で長いことやらせていただいて自分の役割だと思っていますし、できるだけ早く若い人達に引き渡して行きたい。