イギリスは料理がマズい!という長年の定説を覆すごとく、ここ10年の間に、首都・ロンドンには個性豊かなレストランやバーが立て続けにオープンし、食をテーマにしたマーケットやイベントも数多く開かれてきた。街は今、フード&ドリンクバブルに沸き立っている。
この一大トレンドを、若手のシェフや経営者が牽引しているのも特徴だ。ヤング・ブリティッシュ・フディーズ(Young British Foodies、YBHS)http://the-ybfs.com/という、イギリスのフード業界に携わる若い才能をノミネートしてジャッジする、年に一度開催されるアワードがある。大手メディアも注目するこのアワードの創設者のひとりが、今回インタビューするリリー・ジョンズ(Lily Jones)というベーカーだ。
リリー・ジョーンズ
2008年、ジョンズは自宅のキッチンで焼いたケーキを、小さなマーケットで売り始めたところからキャリアをスタート。彼女が作るユニークかつ美味しいケーキの評判は口コミで広がり、イギリスの新聞『The Times』に取り上げられたところで一気に注目を浴びた。
その後、ビスポークケーキを専門にするベーカーブランド「リリー・ヴァニリ(Lily Vanilli)」を創設。ダウニング街10番地(イギリスの首相官邸)、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)、エルトン・ジョン(Elton John)、ヴィクトリア&アルバート博物館など、名だたるクライアントからの注文も舞い込むようになり、2011年にはキッチンを開放したショップをオープン。週に一度の開店日である日曜日には、行列を作るほどの人気を博している。
若干30歳にして、職人そして経営者として8年のキャリアを持つジョンズ。ファッショナブルでチャーミングな魅力を放つベーカーに話を聞いた。
ラフに陳列されたケーキ。サイズも小ぶりで、2つ、3つと試してみたくなる
ーージョンズさんの生まれはロンドンですか?
はい、ロンドンで生まれ育ち、哲学を専攻した大学を卒業後、しばらくオーストラリアに住んでいました。オーストラリアはとても素敵な場所で、そこでグラフィックデザイナーとしての職も得ていたのですが、企業のロゴや広告のデザインをする仕事に興味が持てず、何か別のことをやりたいと考えていました。ケーキを作り始めたのは、オーストラリアからイギリスに帰国した頃です。帰ってきたばかりで仕事もお金もなくて、ちょっとした小金稼ぎにケーキを焼き始めたんですよ。
ーー調理学校に通ったり、レッスンを受けた経験は?
まったくありません。お菓子作りは単なる趣味でした。正確にはマーケットとも呼べないような、小さな商店街にポップアップショップを出したのが始まりです。自宅のキッチンで焼いたケーキを週に数個、合計で10~15ポンドぐらいを売り上げるところからスタートしました。しばらくして、それが『The Time』のジャーナリストの目に止まって、彼女が私のケーキについて記事を書いてくれたんです。そこから一気に注目が広まり、ビジネスとして成長し始めました。
ーーリリー・ヴァニリのコンセプトを教えてください
常に新しいものをクリエイトしてくということを大切にしています。だから、これという大きなコンセプトは持ったことがないんですよ。固定したコンセプトやビジネスプランは設けず、常に変化を望み、それを楽しんでいますね。食材で言えば旬の食材を使うのが好きです。夏だったら、イギリスのベリー類とか。フレッシュなカレンズもよく使います。
ーーたとえば、飾りに使う飴細工やチョコレートをガラスの破片のように模たり、あなたが作るケーキにはユニークなアクセントが施されていますよね。そのインスピレーションはどこから来るのでしょうか?
そうですね……特にこれからというものはなくて、単純にアイデアですね。たとえば、砂糖で作ったガラスの破片。映画に出てくるガラスの破片なんかも、砂糖でできたものだったりするのですが、そういうところからヒントを拾ったりすることはあります。食とは関係ないところからアイデアを拾って、それを反映していくというのは、私のスタイルでもあると言えますね。
ーーでは、好きなアーティストはいますか?
ティム・ウォーカー(Tim Walker)の世界観がすごく好きですけど、特定の好きなアーティストはそんなにいないかな。ただ、ダークなテイストのものは好きです。ダークなイラストレーションとか……。
ーーなるほど。あなたの代表作のひとつに、ゾンビカップケーキがありますよね。グロテスクだけど、不思議と試してみたい思わせる魅力があるユニークなお菓子でした
ちょうど私がベーカーの仕事を始めた頃、イギリスではカップケーキが大ブームを呼んでいました。もし私がカップケーキを作るとしたら、ただのカップケーキじゃなくて、一風変わったものを作りたいと思ったんですよ。見た目がかわいくても、味がマズいケーキはたくさんあるじゃないですか。私はそれを逆手に取って、見た目はヒドいのに味が美味しいケーキにしようと思ったんです。
ーーイギリスのアフタヌーンティーやフランスのパティスリーなど、ヨーロッパにはさまざまなお菓子やお茶の文化が古くからありますが、そこから影響やインスピレーションを受けたことは?
ないですね。実際、トラディショナルなものはあまり良く知らないんです。フレンチ、イタリアン、イングリッシュ、アメリカン……それぞれが持つペーストリーの要素を考えた時、ぱっと頭に浮かぶのはモダンなそれなんです。フレンチパティスリーは、最近また面白くなってきていますよね。あと、フランスの伝統的なパティスリーを、日本のシェフ達が受け継いでいるのは興味深いな。
ーー現在、チームに何人いるのですか?
キッチンに3人、経理をやってくれている女の子が1人。コアのメンバーはこの4人ですね。これまでずっと少数気鋭でやってきたんですけど、今年に入ってビジネスを拡大していこうと決めたんです。自分が何をどこまでできるのか、見てみたいと思って。と言っても、私のベースにあるのはキッチンに入ってケーキを焼くこと。最近は忙しくてなかなか時間が取れないこともあるんですけど、私はベーカーであって、ビジネスマンではないので!
ーー2008年にプロジェクトをスタートさせて、2011年にはショップをオープンしています。順調にビジネスが拡大していると言えそうですが。
どうでしょう。その間にいろいろなことがあって、ずいぶん長い時間だったようにも思えます。途中、コンサルタントの仕事で、南インドに半年間ほど滞在していた時期もありました。すごく良い経験でしたね。
ーーあなたのベーカリーはいつ訪れても混雑していて、子どもから大人まで幅広い層から支持を得ていますよね。しかしながら、なぜ日曜日にしかオープンさせないのでしょうか?
あのベーカリーは、ショップというよりも、私のキッチンと呼ぶべきなんでしょうね。私のメインビジネスは、ビスポークケーキの製作です。ただ日曜日は、フラワーマーケット(※1)があって、人で溢れ返って仕事にならないので、ショップとしてオープンすることにしているんですよ。実際、私のケーキに興味を持ってくれている人達が、ふらっと立ち寄って味見できたりするし、すごく良い環境だと思っています。
テーブル席はいつも満席
ーーウエディングやバースデーケーキなど、これまでにさまざまなベスポークケーキを作られていますよね。どんなクライアントが多いのですか?
クライアントといっても、オーダーをもらえば誰にでもケーキを作りますよ。もちろん予算にも応じます。お金のためだけにケーキを作っているわけではないですから。ウエディングもバースデーも、いろいろなタイプのケーキを作る機会ができて楽しいです。もちろん、クリエイティブなブランド、アーティスト、デザイナーなどと仕事ができるのはとても魅力的です。彼らから出されるテーマは、いつもユニークなんですよ。あと、一度うちを使ってくれたクライアントは、また使ってくれることがほとんどなんです。その時々で、私がまったく異なるケーキを提供するということを理解してくれているんだと思います。
ーー目下はどのような仕事に取り組まれているんですか?
たとえば今週は、ジェイミー・オリバー(Jamie Oliver)が出す本のために、カラフルな野菜を使ったケーキを焼く予定です。ハウス・オブ・ハックニー(House of Hackney)ともコラボレーションをしているんですけど、彼らのインテリアデザインを取り入れた、大きなビスポークケーキを作る予定もあります。あとは、これまでと違う大きなプロジェクトで、スーパーマーケットとコラボレーションした商品を販売する計画を進めています。家庭でクレイジーなケーキを作るキットのようなプロダクトです。
ーーそれは楽しみですね。ちょっと話を変えますが、リリー・ヴァニリのその成長と人気と時を同じくして、ここ約10年間でロンドンをはじめ、イギリスの食事情は劇的に変わりましたよね。個性豊かなレストランやカフェが次々にオープンし、イギリスの料理はマズいという概念を打ち砕くかのごとく、見た目だけでなく味も確かな店が多いように思います。若い経営者が多いのも特徴的ですよね。そんな中で、あなたはヤング・ブリティッシュ・フディーズの創設者のひとりとしても活躍されていますね。
そう。ちょうど今日、2016年度のジャッジをメンバーとしてきたところだったんですよ!
ーーそうだったんですか。ヤング・ブリティッシュ・フディーズについて少し教えてもらえますか。
約6年前、ちょうどブリティッシュフード&ドリンクのブームが過熱し始めた頃に、友人と共にスタートしたプロジェクトです。以前はTVに出るような有名シェフ2、3人が巷でもてはやされている程度だったのですが、食のトレンドが進化して、ローカルレベルまで浸透していったんです。その若い才能を、世に広める必要があると思ったことがきっかけでした。シェフ、ベーキング、アルコール、ストリートフードなど合計で9カテゴリーを設けているのですが、毎回数えきれないほど多くの応募があります。最終的には、それを各カテゴリー3~5人にまで絞り、年に1度開くアワードナイトで表彰しています。
ーーイギリスのメディアを見ると、アワードは多方面から反響があり、影響力も年々増しているように伺えます。ジョンズさん自身はリリー・ヴァニリ以外の仕事も多く、忙しい毎日だと想像するのですが、プライベートの時間は何をしているんですか?
ビリヤードが好きで良く行きますね。あとは釣りとか。できる限り、いろいろな場所へ旅をすることにしています。日本はまだ行ったことがないんですけど、近々必ず!日本でショップを出すという、密かな夢もあったりもして……。
ーーそれは楽しみ!いつか実現させてください。今現在、キッチンに立つ以外の仕事も多く、その内容も多岐にわたると思いますが、どんな場面で仕事に喜びを感じますか?また、将来的にはどのようなポジションに身を置きたいと考えているのでしょうか?
レシピをディベロップさせるのは好きですし、クライアントからチャレンジングなテーマをもらった時なんかもワクワクしますね。とにかく新しいことに取り組むのが好きです。今取り組んでいる目の前の仕事に、楽しみを見出せる人間なんですよ。だから将来については全く想像がつかないんですけど(笑)、ビジネスは広げていきたいと考えています。あと、お菓子作りはずっと続けられたらいいですね。
(※1)毎週日曜日に開催されるコロンビアロードフラワーマーケット。リリー・ヴァニリのキッチンはマーケットのそばにある、アンティークショップなどが集まる建物の一角にある。
【リリー・ヴァニリ】
WEB SITE
http://lilyvanilli.com/
Instagram
https://instagram.com/lily_vanilli_cake/
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この一大トレンドを、若手のシェフや経営者が牽引しているのも特徴だ。ヤング・ブリティッシュ・フディーズ(Young British Foodies、YBHS)http://the-ybfs.com/という、イギリスのフード業界に携わる若い才能をノミネートしてジャッジする、年に一度開催されるアワードがある。大手メディアも注目するこのアワードの創設者のひとりが、今回インタビューするリリー・ジョンズ(Lily Jones)というベーカーだ。
リリー・ジョーンズ
2008年、ジョンズは自宅のキッチンで焼いたケーキを、小さなマーケットで売り始めたところからキャリアをスタート。彼女が作るユニークかつ美味しいケーキの評判は口コミで広がり、イギリスの新聞『The Times』に取り上げられたところで一気に注目を浴びた。
その後、ビスポークケーキを専門にするベーカーブランド「リリー・ヴァニリ(Lily Vanilli)」を創設。ダウニング街10番地(イギリスの首相官邸)、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)、エルトン・ジョン(Elton John)、ヴィクトリア&アルバート博物館など、名だたるクライアントからの注文も舞い込むようになり、2011年にはキッチンを開放したショップをオープン。週に一度の開店日である日曜日には、行列を作るほどの人気を博している。
若干30歳にして、職人そして経営者として8年のキャリアを持つジョンズ。ファッショナブルでチャーミングな魅力を放つベーカーに話を聞いた。
ラフに陳列されたケーキ。サイズも小ぶりで、2つ、3つと試してみたくなる
ーージョンズさんの生まれはロンドンですか?
はい、ロンドンで生まれ育ち、哲学を専攻した大学を卒業後、しばらくオーストラリアに住んでいました。オーストラリアはとても素敵な場所で、そこでグラフィックデザイナーとしての職も得ていたのですが、企業のロゴや広告のデザインをする仕事に興味が持てず、何か別のことをやりたいと考えていました。ケーキを作り始めたのは、オーストラリアからイギリスに帰国した頃です。帰ってきたばかりで仕事もお金もなくて、ちょっとした小金稼ぎにケーキを焼き始めたんですよ。
ーー調理学校に通ったり、レッスンを受けた経験は?
まったくありません。お菓子作りは単なる趣味でした。正確にはマーケットとも呼べないような、小さな商店街にポップアップショップを出したのが始まりです。自宅のキッチンで焼いたケーキを週に数個、合計で10~15ポンドぐらいを売り上げるところからスタートしました。しばらくして、それが『The Time』のジャーナリストの目に止まって、彼女が私のケーキについて記事を書いてくれたんです。そこから一気に注目が広まり、ビジネスとして成長し始めました。
ーーリリー・ヴァニリのコンセプトを教えてください
常に新しいものをクリエイトしてくということを大切にしています。だから、これという大きなコンセプトは持ったことがないんですよ。固定したコンセプトやビジネスプランは設けず、常に変化を望み、それを楽しんでいますね。食材で言えば旬の食材を使うのが好きです。夏だったら、イギリスのベリー類とか。フレッシュなカレンズもよく使います。
ーーたとえば、飾りに使う飴細工やチョコレートをガラスの破片のように模たり、あなたが作るケーキにはユニークなアクセントが施されていますよね。そのインスピレーションはどこから来るのでしょうか?
そうですね……特にこれからというものはなくて、単純にアイデアですね。たとえば、砂糖で作ったガラスの破片。映画に出てくるガラスの破片なんかも、砂糖でできたものだったりするのですが、そういうところからヒントを拾ったりすることはあります。食とは関係ないところからアイデアを拾って、それを反映していくというのは、私のスタイルでもあると言えますね。
ーーでは、好きなアーティストはいますか?
ティム・ウォーカー(Tim Walker)の世界観がすごく好きですけど、特定の好きなアーティストはそんなにいないかな。ただ、ダークなテイストのものは好きです。ダークなイラストレーションとか……。
ーーなるほど。あなたの代表作のひとつに、ゾンビカップケーキがありますよね。グロテスクだけど、不思議と試してみたい思わせる魅力があるユニークなお菓子でした
ちょうど私がベーカーの仕事を始めた頃、イギリスではカップケーキが大ブームを呼んでいました。もし私がカップケーキを作るとしたら、ただのカップケーキじゃなくて、一風変わったものを作りたいと思ったんですよ。見た目がかわいくても、味がマズいケーキはたくさんあるじゃないですか。私はそれを逆手に取って、見た目はヒドいのに味が美味しいケーキにしようと思ったんです。
ーーイギリスのアフタヌーンティーやフランスのパティスリーなど、ヨーロッパにはさまざまなお菓子やお茶の文化が古くからありますが、そこから影響やインスピレーションを受けたことは?
ないですね。実際、トラディショナルなものはあまり良く知らないんです。フレンチ、イタリアン、イングリッシュ、アメリカン……それぞれが持つペーストリーの要素を考えた時、ぱっと頭に浮かぶのはモダンなそれなんです。フレンチパティスリーは、最近また面白くなってきていますよね。あと、フランスの伝統的なパティスリーを、日本のシェフ達が受け継いでいるのは興味深いな。
ーー現在、チームに何人いるのですか?
キッチンに3人、経理をやってくれている女の子が1人。コアのメンバーはこの4人ですね。これまでずっと少数気鋭でやってきたんですけど、今年に入ってビジネスを拡大していこうと決めたんです。自分が何をどこまでできるのか、見てみたいと思って。と言っても、私のベースにあるのはキッチンに入ってケーキを焼くこと。最近は忙しくてなかなか時間が取れないこともあるんですけど、私はベーカーであって、ビジネスマンではないので!
ーー2008年にプロジェクトをスタートさせて、2011年にはショップをオープンしています。順調にビジネスが拡大していると言えそうですが。
どうでしょう。その間にいろいろなことがあって、ずいぶん長い時間だったようにも思えます。途中、コンサルタントの仕事で、南インドに半年間ほど滞在していた時期もありました。すごく良い経験でしたね。
ーーあなたのベーカリーはいつ訪れても混雑していて、子どもから大人まで幅広い層から支持を得ていますよね。しかしながら、なぜ日曜日にしかオープンさせないのでしょうか?
あのベーカリーは、ショップというよりも、私のキッチンと呼ぶべきなんでしょうね。私のメインビジネスは、ビスポークケーキの製作です。ただ日曜日は、フラワーマーケット(※1)があって、人で溢れ返って仕事にならないので、ショップとしてオープンすることにしているんですよ。実際、私のケーキに興味を持ってくれている人達が、ふらっと立ち寄って味見できたりするし、すごく良い環境だと思っています。
テーブル席はいつも満席
ーーウエディングやバースデーケーキなど、これまでにさまざまなベスポークケーキを作られていますよね。どんなクライアントが多いのですか?
クライアントといっても、オーダーをもらえば誰にでもケーキを作りますよ。もちろん予算にも応じます。お金のためだけにケーキを作っているわけではないですから。ウエディングもバースデーも、いろいろなタイプのケーキを作る機会ができて楽しいです。もちろん、クリエイティブなブランド、アーティスト、デザイナーなどと仕事ができるのはとても魅力的です。彼らから出されるテーマは、いつもユニークなんですよ。あと、一度うちを使ってくれたクライアントは、また使ってくれることがほとんどなんです。その時々で、私がまったく異なるケーキを提供するということを理解してくれているんだと思います。
ーー目下はどのような仕事に取り組まれているんですか?
たとえば今週は、ジェイミー・オリバー(Jamie Oliver)が出す本のために、カラフルな野菜を使ったケーキを焼く予定です。ハウス・オブ・ハックニー(House of Hackney)ともコラボレーションをしているんですけど、彼らのインテリアデザインを取り入れた、大きなビスポークケーキを作る予定もあります。あとは、これまでと違う大きなプロジェクトで、スーパーマーケットとコラボレーションした商品を販売する計画を進めています。家庭でクレイジーなケーキを作るキットのようなプロダクトです。
ーーそれは楽しみですね。ちょっと話を変えますが、リリー・ヴァニリのその成長と人気と時を同じくして、ここ約10年間でロンドンをはじめ、イギリスの食事情は劇的に変わりましたよね。個性豊かなレストランやカフェが次々にオープンし、イギリスの料理はマズいという概念を打ち砕くかのごとく、見た目だけでなく味も確かな店が多いように思います。若い経営者が多いのも特徴的ですよね。そんな中で、あなたはヤング・ブリティッシュ・フディーズの創設者のひとりとしても活躍されていますね。
そう。ちょうど今日、2016年度のジャッジをメンバーとしてきたところだったんですよ!
ーーそうだったんですか。ヤング・ブリティッシュ・フディーズについて少し教えてもらえますか。
約6年前、ちょうどブリティッシュフード&ドリンクのブームが過熱し始めた頃に、友人と共にスタートしたプロジェクトです。以前はTVに出るような有名シェフ2、3人が巷でもてはやされている程度だったのですが、食のトレンドが進化して、ローカルレベルまで浸透していったんです。その若い才能を、世に広める必要があると思ったことがきっかけでした。シェフ、ベーキング、アルコール、ストリートフードなど合計で9カテゴリーを設けているのですが、毎回数えきれないほど多くの応募があります。最終的には、それを各カテゴリー3~5人にまで絞り、年に1度開くアワードナイトで表彰しています。
ーーイギリスのメディアを見ると、アワードは多方面から反響があり、影響力も年々増しているように伺えます。ジョンズさん自身はリリー・ヴァニリ以外の仕事も多く、忙しい毎日だと想像するのですが、プライベートの時間は何をしているんですか?
ビリヤードが好きで良く行きますね。あとは釣りとか。できる限り、いろいろな場所へ旅をすることにしています。日本はまだ行ったことがないんですけど、近々必ず!日本でショップを出すという、密かな夢もあったりもして……。
ーーそれは楽しみ!いつか実現させてください。今現在、キッチンに立つ以外の仕事も多く、その内容も多岐にわたると思いますが、どんな場面で仕事に喜びを感じますか?また、将来的にはどのようなポジションに身を置きたいと考えているのでしょうか?
レシピをディベロップさせるのは好きですし、クライアントからチャレンジングなテーマをもらった時なんかもワクワクしますね。とにかく新しいことに取り組むのが好きです。今取り組んでいる目の前の仕事に、楽しみを見出せる人間なんですよ。だから将来については全く想像がつかないんですけど(笑)、ビジネスは広げていきたいと考えています。あと、お菓子作りはずっと続けられたらいいですね。
(※1)毎週日曜日に開催されるコロンビアロードフラワーマーケット。リリー・ヴァニリのキッチンはマーケットのそばにある、アンティークショップなどが集まる建物の一角にある。
【リリー・ヴァニリ】
WEB SITE
http://lilyvanilli.com/
https://instagram.com/lily_vanilli_cake/
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