本や文字が気になります。
エド・ルシェ(Edward Ruscha)の新作の展示をニューヨークのガゴシアンギャラリーで観る機会があり、言葉の意味と力をユーモラスに扱った、本と文字をテーマにした作品達に、心をつかまれてしまいました。そのすぐ傍のギャラリーで観た、ドミニーク・ゴンザレス・フォルステル(Dominique Gonzales-Foerster)の作品にもドキッとしました。盛り土の上に、本が広げられて横たわっていました。
たかが文字ですが……感じることはできても、文字と言葉によってしか「考える」ことのできない……私達の切なさをそこに見てしまいます。なんともポエティックです。
出張や旅行で国外へ出た際にはスーツケースがはちきれんばかりに大量の本を購入して帰国します。作品集の類いではなく、批評やインタビューが載っている本達です。特に、美術館の本屋が大好きです。
美術館の本屋には、現代を捉えるための「考え方」が凝縮されていて、世界中、何処の美術館へ行っても同じ本が並んでいます。考え方のグローバルスタンダードをそこで確認して、必ず新しい発見をしてきます。特にアカデミックな内容の展示では、展示よりも関連するカタログや本の方が優れていたりします。並んでいる本のセレクションによって、地域の特徴を感じることも楽しみの一つです。アマゾンドットコムでは決してできないことですよね。
ちなみに海外の美術館と同じ本が並んでいないのが、唯一、日本の美術館です。
日本の美術館では日本語の本、或いは外国の書籍でもビジュアルが重視された本しか並んでいません。そこでは先端的でグローバルな考え方を扱う材料が無く、地域研究的な体験しかできません。英語の本は売れないから、でしょうか。利益の追求に限らず、文化を普及させる役割を担っている美術館として、もう少し頑張ってほしいです。そろそろ本の重さで……スーツケースがちぎれそうです。