【サスティナブルな社会科見学】農業とコスメの意外な親和性を知る。奈良で生まれたオーガニックコスメの物語

2016.05.21
吉野から車で小1時間。若草山が遠くにかすむ奈良市内にお目当ての会社はあった。1993年の創業時から、「米ぬか」や「へちま」など日の伝統的な植物系原料を使用してオーガニック化粧品の先駆けともなった奈良の化粧品会社「クレコス」。奈良の銘茶・大和茶を原料とした「QUON(クオン)シリーズ」の発売や、数々の社会貢献活動を行っている。

化粧品会社を超えた活動、また化粧品会社だからこそできること。クレコスの目指すところは?これらの活動をリードするCEOの暮部達夫氏に話を聞いた。


―― 事業開始以来、一企業としてメイクアップボランティアや井戸掘り基金などさまざまなボランティア活動をされていますが、その意図とは?

もともと、創業者である暮部恵子が社会活動に意欲的であり、企業として社会に貢献することを心がけてきました。2003年にスタートさせた「いのちの森倶楽部」では、吉野の十津川村や天河村など放置林の問題をなんとかしたいと思い、自分たちで守れる山を持ちたいという意見もあったのですが、いや、待てよと。それは持続可能だろうか?というところに立ち返って、企業として森を守る人たちのサポートをしようということになり、現在の形になりました。

―― 持続可能なスキームで社会貢献を行う一つの転機となったのですね。そのあたりから考えが変わりましたか?

社会活動と営利活動を結び付けられないかと考えました。たとえば、弊社の化粧品に使用している手漉き和紙のパッケージなのですが、これは自分たちで木を切って、その間伐材を奈良の福祉支援施設に持ち込み、手漉き和紙を作ってもらっています。

また新潟の福祉支援施設では、蒸留システムを導入して、化粧品の原料となる葉やを蒸留するアロマの原料加工を担当してもらっています。私達の行う営利活動の中間加工や最終加工を任せることで、彼らの雇用も確保でき、工賃も最低工賃の3倍程お支払いできています。

―― 化粧品の素材を生産する契約農家さんが全国にいるなど、農業との結びつきも密ですね。

1997年に「ピュアヘチマエッセンス」という化粧水を発売し、2000年には熊本の無農薬有機ヘチマエキスの使用を開始しました。農家さんの横のつながりも広がって、奈良では八木酒造製造の米ぬか発酵エキスを配合したり、生駒市の養蜂場と自社契約したり、奈良以外にも静岡の無農薬有機大豆栽培農家など関係が広がりました。特に最近では2010年に契約した大和茶の健一自然農園は、その後のブランド「QUON」に繋がる大きなものでした。

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GOOD DESIGN AWARDを受賞したQUONのオールインワンセラム


―― QUONプロジェクトは現在貴社の大きな柱になっていますね。

本業である化粧品のプロダクツを通して社会貢献しようというものです。農業・森林・福祉の面から考えています。たとえば、「QUON」では、無農薬・自然農栽培の大和茶をつかっていますが、本来ならお茶農家さんは11月から4月は閑散期になります。でも、茶葉だけでなく実や花の収穫もお願いしているので、これまで休んでいた時間も仕事になるというわけです。

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シーズナルなアイテム「QUON 初摘シリーズ」


――ボランティアではなく、化粧品を売る、つくる過程でお互い協力するのですね。農業とコスメ、意外と親和性がある気がしてきました。

はい、肌から吸収されるというのは食と同じですからね。ショコラティエの野口和男氏が厳選したオーガニックカカオを使ったフェイスパックなど、一見食べられそうな商品もありますよ。

―― 企業の利益に繋がることが、持続可能で循環していく活動なのですね。

はい。自分たちだけで抱えるのではなく、共有して発信していくことが出来ればと思います。ちなみに、QUONプロジェクトのクオンとは「久遠」。仏教用語であることがいつまでも続くことをあらわしているんですよ。

―― まさしく「サスティナブルである」というメッセージが込められているんですね。

【プロフィール】
株式会社クレコスCEO 暮部達夫氏
大学在学中から創業者である母と共にクレコスの仕事を始める。いまではQUONプロジェクトの推進責任者として全国を飛び回る。
和田安代
  • 【サスティナブルな社会科見学】農業とコスメの意外な親和性を知る。奈良で生まれたオーガニックコスメの物語
  • スキンケアブランド「QUON」
  • 「QUON」では、大和茶の3大成分を使用している
  • 毎年季節限定で販売される「QUON初摘シリーズ」
  • 福祉施設で作られた手漉き和紙を化粧品のパッケージに採用している
  • 株式会社クレコスCEO 暮部達夫氏
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