「奈良晒」の老舗・株式会社中川政七商店が「日本の伝統工芸を元気にする!」とのビジョンで立ちあげた全国各地の伝統工芸メーカーによる“市”のようなショップ「大日本市」が、昨年8月に初出店した伊勢丹新宿店5階に加え、渋谷パルコに9月20日にオープン、広島パルコにも10月10日にお目見えする。
新潟のニットメーカーとして有名ブランドのOEMを手掛けてきた有限会社サイフク。同社のオリジナルとして、2012年の秋冬よりスタートさせた「mino」も大日本市では人気のブランドだ。サイフクの斉藤智之氏は「雪国の冬に使われてきた蓑から着想し、使いやすいベーシックなニットのポンチョを展開しています」と話す。
正方形のニット地の中央から横方向にスリットをいれた、かぶるタイプのポンチョを「yoko」と長方形のニット地の中心から縦にスリットを入れた、羽織タイプのポンチョを「tate」と名付け展開。ほかに「tsutsu」と名付けたスヌードやアームカバーの「kote」なども。アウトドアにも着物にもカジュアルにもと、幅広くユニセックスで楽しめる「mino」の来春の新作は、「yoko」と「tate」ともに5種類のバイカラーのラインナップ。少し肌寒い春先に、軽やかで温かいポンチョはぴったりだ。
江戸時代から庶民が日常使いする器を作り続けてきた長崎の波佐見焼。日用品として作られてきた同窯の可能性を広げる有限会社マルヒロも「大日本市」のメンバーだ。
「伊万里や有田という献上窯の産地に囲まれていたから、波佐見焼は庶民に向けた日用の雑器を作ることに。庶民の道具を大量生産するため、日本でも最大級と言われる長いのぼり窯があるんです。またひとつの絵柄に2分以上時間をかけないという決まりもあったとか」とその歴史や背景を教えてくれる馬場匡平氏。
おめでたい時の引き菓子として贈られる鯛の「金菓糖」をモチーフにした祝鯛中皿は内祝いや引き出物に人気。馬場氏が手掛けるブランド「HASAMI」では、道具をコンセプトに、毎年国をテーマにした商品を展開。来年のテーマはドイツ、深淵なドイツの森を思わせる緑や青の釉薬で彩られた陶磁器製のランプやキャンドルカバーを製作。ずっしりとしたフォルムのランプやキャンドルカバーから透過した灯りは、森のなかにポッと現われた灯りのように、温かみを感じさせてくれる。また石川県の九谷焼の窯元の上出長右衛門窯とコラボレートしたコーヒーカップと灰皿の限定セットも魅力的だ。
「お椀やうちだ」は福井県鯖江市で越前漆器を8代200年にわたり作り続けている漆琳堂は暮らしのなかで使い続けられる漆のお椀が人気をよんでいる。白木の天然木(ミズメザクラ)をくりぬいた椀に色漆と拭き漆を塗り重ねることで、透明感のあれう色鮮やかなお椀を、日常使いで提案している。
中川政七商店をはじめ、マルヒロやサイフクなど日本全国の20ものパートナー企業を超える「大日本市」。個性豊かな、大日本市のメンバーの世界観を楽しみたい。