ノマドワーカーのためのライフスタイルをファッションとして提案する南青山のセレクトショップ「バードハウス(BIRD HOUSE)」が4月13日にオープンした。
バードハウスは、アンダーカバー青山店が1階に入るビルの2階にある。ウッドでできた大きな囲いが四方をぐるりと覆う内装で、入り口や窓付近には植物が並び、ナチュラルでクリーンなテイスト。洋服の他、雑貨類も豊富にそろう。運営はこのショップをスタートさせるために立ち上がったカム・オフ・ウェルが担う。ディレクター川崎勝元(かわさき・まさはる)氏は、自身がノマド経験者だ。
——なぜ“ノマディズム”をコンセプトに?
僕自身、8年間セレクトショップでメンズウエアのデザイナーをした後、2年間フリーでブランドディレクションやデザイナーをしていたのですが、決まった場所で仕事をしないワークスタイルだったんですね。家だったり、コワーキングスペースだったり、ワイファイ(Wi-Fi)のあるカフェだったり……煮詰まったら近くの公園を散歩して気分転換をしたり。僕の周りにもそういったノマドワーカーが多かった。居住空間とワークスペースの中間にある場所のことは一般にサードスペースと呼ばれますが、僕らにとってのサードスペースは“家”なんです。家の中でも仕事をするスペースにオブジェや植物を置いたり、アートブックなんかを置いたりすると気分が違ってくる。家で仕事をする人にとって何かインスピレーションの源になるようなものを紹介する、ライフスタイル提案をしたいと思って始めました。
——ノマドワーカーの働き方というのはたとえばどんなタイムスケジュールなんでしょうか? 実際、一日の中でどんな風に動いていらっしゃったんですか?
朝起きて朝食を食べたら、まずはパソコンに向かってメールの返信をして……日中は打ち合わせで外に出て、夕方家に戻ってきて、という感じですね。ある取引先から別の取引先のところに行く間の時間はPC片手にカフェに入ったり、という。そういう働き方をする人をターゲットにしたいな、と思っています。だから、周辺にシェアオフィスやコワーキングスペースが多い南青山というこの立地を選びました。
——入れ子構造のような店舗デザインが凝っていますね。
ショップデザイナーではなく、あえて住宅の建築家の方、玉上貴人さんという方に依頼をしたんですが、テーマは『アトリエ』です。居住空間でもあり仕事をする空間でもある、というコンセプトをお伝えして、「こんなイメージで」と僕が仕事の合間に眺める洋書を持ってお見せしたら、「じゃあロフト、ヨーロッパの屋根裏部屋みたいなのはどうですか?」と。ヨーロッパの建物って、周りを囲って“中に外がある”というつくりになっているのですが、それをイメージして周りをロフトのような囲いをつくることで建物の中に建物を建てたようなデザインにして、中庭的な、隠れ家のような空間にしました。
——洋服はどういったものを置いているのですか?
上質だけどリラックス感のあるワンマイルウエア(部屋着と外着の中間)が多いです。部屋着みたいにリラックスできるんだけど、急に取引先に呼ばれてもそのまま打ち合わせにも行けるような“ちゃんと感”もある服。ボディラインの出ない、緩いラインのものを取り揃えているのですが、シャツであればラフすぎない。オリジナル商品に関しては、僕はメンズのデザイナーだったので、メンズのデザインをそのままウィメンズに落とし込んだものをつくっています。メンズって制服から来ているので“ちゃんと感”が出せるんですよ。そういうところが合致してちょうどいい具合になっているのかな、と思います。
——洋服以外でのセレクトの何が特徴は?
見ての通り品目はすごく多いんですけど、観葉植物がシンボル的存在ではありますね。僕にとって植物が重要だったのですが、ショップをスタートするに当たって、外部のプラントショップを店内に導入するのではなく、グリーンを仕入れる“個人”を引っ張ってきました。それが、野里秀貴というランドスケープ、庭作りを専門にしている人間で、彼に植物の仕入れやグリーンと花器のコーディネートを任せています。ただ仕入れてくるのではなく、仕入れルートも特殊で、枝振りなどが個性的なものや、珍しい品種など、良いものしか置かないスタンス。一角をジャングルみたいにしたいのですが、まだ数は少ないです。花器ブランドも、ベルギーの「ドマーニ(DOMANI)」やパリの「バッグサック(BAGSAC)」をメインで扱っていて、野里の感覚で植物と組み合わせたものをそのまま買って行かれる方が多いです。また、事務所などにプラントを提案する、店舗外でも売上が立てられる事業もやっていきたいなと思っています。
——店内で企画展もやっていますね。
今は、女性クリエーター3人展「ハイブリッドウエディングの時代」というのをやっています。ジュエリー、ドレス、アクセサリーのデザイナーさんを僕がキュレーションして。来月はこの店がいろんなものを発信していく拠点にしたかったので、月1回でコラボレーション企画展をやっていきます。
——客層はどうですか?
当初は30代前半から半ばを想定していたのですが、開いてみたら20代半ばから後半の方が多く、意外でした。神宮前の客層がこっちに流れてきたような感覚がありますね。銀座との棲み分けが進んでいるように感じます。あと、外から植物が見えるのですが、ファッション関係の人間には植物がハートに刺さるみたいで(笑)。仕事柄、都会生活を送っているので癒やしを求めているんだと思います。