11月27日、東京・代官山T-SITEの蔦屋書店で、「“デザインで文化を創る” 世界を変えるための新しいスタイル、建築学的方法」と題したトークショーが開催された。
登壇したのは、イタリアデザイン界を代表するピニンファリーナ社のCEO、パオロ・ピニンファリーナ(Paolo Pininfarina)と、TSUTAYAなどを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の社長兼CEO、増田宗昭。ピニンファリーナ社は、パオロ・ピニンファリーナの祖父が創業したデザインファクトリーで、グローバル企業の自動車のデザインを中心に、数多くのプロダクトを世に生み出している。その代表的な仕事が、カーブランド「フェラーリ」の一連のデザインだ。一方、増田宗昭は、TSUTAYAを通じてライフスタイルへの提案を行う中で、カーライフの提案や、代官山T-SITEでのクラシックカーレースを開催するなど、車の愛好者としても知られる。
2人によるトークセッションは、車への関わりを通じて、デザイン、教育、人々と文化の繋がりについて考えさせられる場へと進展した。
増田:私が学生時代、イタリアのローマを訪れた時にバスで移動していると、とてもカッコイイ銀色の車がそのバスを追い抜いていって、とても印象に残っていたのですが、それがピニンファリーナの代表作であるフェラーリ社の『ディーノ』でした。以来、自分で稼ぐようになったらディーノのオーナーになるのが夢でした。
パオロ:ディーノは私の父、セルジオ・ピニンファリーナが、初めて自身の責任でデザインした車です。子供の頃、父親にそのディーノに乗せてもらってドライブに行くのが楽しみの一つで、とても思い入れがあります。今年、フェラーリが発表した「セルジオ」は、そのディーノと父に対するオマージュでもあります。
――ディーノは、発表当時にフェラーリがF1で採用していたエンジンを車の中央に据えるシステム(ミッドシップ)が最大の特徴で、セルジオ・ピニンファリーナは苦労の末、フェラーリを説得したという。今では、ミッドシップはフェラーリのカーデザインにおいて当然のつくりとなっている。
パオロ:ピニンファリーナのデザインの特徴は、大きく二つあります。一つは、機能とデザインの整合性・一貫性があること。もう一つは、びっくりするような革新性を持っていることです。エッセンシャル(本質的)な点を押さえつつ、エレガンスであることが大事だと考えています。それは車以外のピニンファリーナのプロダクトデザインにも込められていることですね。
増田:エレガンスさというのは、どういったものだと考えていますか?
パオロ:余計なものを削り、シンプルかつ機能的でありながら、そこに美しさを実現するのは、とても大変ですが、そこがピニンファリーナにとって他社と競える点だと考えます。エレガンスの定義は難しいですが、自然につながり、自然を大切にしていることでしょう。一つ例えると、あるゴルフ好きの友人が言った、「ゴルフで一番大切なのは、エレガンスに振ること」という言葉があるのですが、自然に、力を入れず、静かにクラブを振れることがエレガンスだということです。
――そして話は、そのデザインフィロソフィーをどう共有し、または発信していくかという話題に移っていく。
(2/2に続く。)