三越伊勢丹がニューヨークで開催したポップアップストア「ニッポニスタ(NIPPONISTA)」では、寛斎や東京の若手デザイナーのファッションブランド以外に、今のリアルな日本デザインという視点から、多くのクリエーションが紹介されている。その中でもバイヤーや来店者から話題を集めたのは、日本の繊細な技術をコンセプチュアルに表現した作品やアイテムだった。
今回の「ニッポニスタ」で初日最初に売れたのは神崎泰志(Hiroshi KANZAKI)のアート作品。一木彫りの巨大なファスナーのオブジェは、地元のアートコレクターが購入。木彫アートは米国でも最近注目されているジャンルだが、仏像以外の日本の現代アートの木彫アーティストはこれまであまり紹介されることがなく、クリップや安全ピンという伝わりやすいオブジェには常に人が集まった。アート作品としては鉛筆画の秋山泉(Izumi Akiyama)、陶芸の牟田陽日(Yoca MUTA)の若手女性アーティストの作品が今回紹介され、その細かな技法の背景を深く話を聞くギャラリストの姿もニューヨークならではの光景だ。
実際に売れているアイテムとしては、ラフシモンズがディオールの13SSオートクチュールコレクションで素材を使用した有松鳴海絞りのスズサン(SUZUSAN)のストールや「サチエ ムラマツ(sachie muramatsu)」の和紙のランプシェードなどリアルなインテリアや服飾品に消化したものが人気を集めた。
江戸切り子の3代目となる堀口切子の切り子のカフスも切り子ガラスのメンズアクセサリーということで初日に男性客が購入。切り子に色を使用しない作風が、「ライフスタイルに合う」とニューヨーク在住の会社役員が2個購入。浅草の靴職人が手掛ける「エンダースキーマ(Hender Scheme)」のヌメ革のスニーカーは初日、2日目と続けて購入に訪れるファンも現れた。100年以上の歴史を持つ京都祇園の履物匠・ない藤が草履をコンセプトに新たに開発したサンダル「JOJO」は、足袋や下駄など日本文化の知識をもって訪れる来店者に好評だ。
また岡山のデニムなど端材を使いリサイクルしたイコールハンガー(EQUAL HANGER)などを展開するCOLORSや、年輪の木目を活かしたビーンスツールで欧州で評価されたOGATA、留め金など機能性の制限をデザインに落とし込んだアクセサリーのSHIHARAや、日本の工芸技術をアクセサリーに生かしたSIRISIRIなどコンセプトが明快なデザインが、NYのショールームからの問い合わせも多く、同展の目的の一つだったビジネスマッチングという側面も、各ブランド、クリエーターごとに進展しているようだ。