新丸ビル7階レストランフロア「丸の内ハウス」にて「JAPANESE ARTISTS IN NEW YORK」展が開催されている。同フロアでは2008年より「the MOTHER of DESIGN」と題し、様々なクリエーターの展示を毎年行ってきた。過去にはヴェルナー・パントンや草間彌生らを紹介している。
6回目にあたる今回は、ニューヨークで活動する若手日本人アーティスト8名の作品をピックアップして展示している。作品は、普段ライブラリーとして使用されているコーナーとレストランフロア中央エレベーター前ロビーの2ヶ所をメイン会場に約30点が並ぶ。ライブラリーでは、銀座のメゾンエルメス1階のファサードを飾った江口悟、ミニマルな作風の大坪真美子、ショッパーを切り込み、1本の木を作り出す手法で知られる照屋勇賢らの作品を展示。中央ロビーでは、カラフルでキッチュな河井美咲、カッティングシートを用いて開口に21mに広がる壁画を出現させた大山エンリコイサムのダイナミックな作品が来場者を迎える。大山は2011年にコムデギャルソンのガーメントにペインティングを施した経歴を持つ。
開催2回目より、キュレーションを担っているM&Iアートの西山裕子氏は「日本の若者が外へ出て行かないという懸念もあり、今回は国外で活躍している70年代以降生まれの日本人作家に注目した」と話す。作品は新作に限らず、特にニューヨークらしさを感じるものをセレクトしたという。作家の世代は共通しているものの、長年ニューヨークで活動している作家から最近移住した作家まで活動の期間も移住動機も、バックグラウンドは様々だ。
ニューヨークで活動2年目の大山氏は、日本から活動の場を移したことについて「日本に留まれば、10年後の自分が予測できてしまう。あえて何が起きるかわからない、不確定な場所に身を置いてみたかった」と述懐。現地での作品の受け入れられ方については「ストリートアートと現代美術を融合させる作風は日本では少なかったが、ニューヨークでは素地ができていて、すんなりと理解される。だからこそもっとその先に行きたい」と心境の変化を語った。幼少期から米国で暮らし、ニューヨークでの活動を軌道に乗せるのに8年から9年掛かったと語る大坪氏は「ニューヨークのアートマーケットは世界一の規模。それを理由に移り住むアーティストの数は膨大」とアートをビジネスとして成立させる街としての側面を強調した。
しかし今回のように商業施設でショーケースに収めず展示を行うことは、アカデミックよりビジネスの視点が優先される感のあるニューヨークといえども珍しいこと。「ホワイトキューブとも、パブリックスペースとも違う会場と展示方法にはとまどいを感じた。作品の解釈をある程度コントロールするために、フレームのある作品も提案し、それによって作品のイメージを守った」と大坪氏。大山氏も大坪氏も今展示の作品と観客の近しい距離感が非常に「日本的」と口をそろえた。
会期は11月17日まで。作品は一部購入可能。16・17日にはヒシャム・アキラ・バルーチャ、青崎伸孝によるライブドローイングやパフォーマンスが行われる。