メンズブランド「ザ サカキ(theSakaki)」は闊達だ。ひょっとこや天狗などのお面を被ったルックブックは楽しげで愉快。しかしそのアイテムたるや生地から切り替え、タック一つに至るまで熟慮された抜きの無い仕様で作られている。仕立てられたクロージング達は砕けているように見えてどこか凛とした緊張感を放つ。
デザイナーは榊弘太郎。彼は、大野知哉手掛けるディテールの利いたブランド「オーギュストプレゼンテーション(AUGUSTE-PRESENTATION)」を経て独立。12SSからtheSakakiをスタートした。
私は“今注目している日本のブランドは?”と聞かれたら、必ずtheSakakiを挙げる。理由は単純、デザイナーの創造力と日本という場所性を鑑みて限りなくオリジナルなメンズクローズを作り出しているからだ。thebangやimagiなどのアイテムネーミング、自身の家紋という桔梗のブランドロゴ、ゆとりのあるシルエット、スタジャンやスウェットなどのアイテムから和とストリートの要素を取り入れたテイストと見做されることが多いだろう。しかしtheSakakiの真骨頂は純然たるテーラードの美しさにある。
「和と言われても全然気にしません。縛られたくないんですよ」と嘯く榊。その天邪鬼の面に隠されたクリエーションを探るべく、年末氏に時間をもらった。表出されたのは、実にクリエーターらしい個性あふれる男の美学である。
2/5「ひょっとこがお道化る」に続く。