“美”とは何かを問いかけるウェディングドレスデザイナー松居エリは、4月30日に作品集『Sensing Garment 感覚する服』を出版した。同書では松居が研究者らとコラボレーションし発表してきた服の図録やテキスト、独自のファッション哲学が収録されており、デザイナーではなくアーティストとしての才能も窺える。
6年掛かりで完成した同書に込める強い想いの礎には、デザインに対する情熱と愛情、そして未来を担う若い世代へのメッセージがあった。
ーー“美”に対するこだわりや完璧なドレスを創るまでの過程を見て、松居さんの探究心には脱帽しました。当たり前のことに対しても疑問を持ち、解明していく姿はデザイナーであり研究者であり職人のようですね。そこまで松居さんを突き動かすものは一体何なのでしょうか?
私にとって服創りの原動力となっているのは、ウェディングドレスを着て輝く女性の姿。服がしっくりきた時の女性の高揚感は、その場の空気を変え、ドレスまで官能的に息づき始めるんです。それは彼女が彼女自身に出会う瞬間、「自己」になることを許された服、“感覚する服”なのです。服がこんなにも女性にとってかけがえのない存在であるのは、服が彼女自身を創るからでしょう。そんな女性たちの微笑みをまっすぐに目指し服創りをしていると、多くの疑問が浮かんでくるんです。気になるといても立ってもいられないというか。私にとっては自然のことなんですよね、知りたいから探るっていうのは。痒いから掻くっていう感じです(笑)。
ーー同書を拝読すると、理数系が得意でない私でも美に対する新たな解釈に気づき、服を違った視点で見る楽しさに触れたような気がしています。
私も、もともと数学ができなかったんですよ。高校からアートを専攻していて、数学の授業はボイコットしていました(笑)。前述したように科学と数学との衝撃的な出会いを経て、それまでとは世界が違って見え始めたんです。思考による創造への感動を知った私はますます探求するようになりました。私が体験したように、この本を手に取り読んで下さった方が、疑問に思ったり面白いと感じてもらえれば嬉しいです。
ーー作品集の出版に至った経緯を教えて下さい。
私のファッションショーを見に来て下さった工作舎の編集の方が、声を掛けて下さったんです。それから、私とスタッフで1年ほどで構成を仕上げました。その後デザインや編集など、細かい部分にまでこだわった結果、出版までに5年も掛かってしまいましたが。
ーー6年掛かりの集大成はまさに永久保存版といった感じですね。展開図としての服のパターン、独自の衣服造形設計論など詳細に説明を加えたページもあります。同書を通して伝えたいこととは何ですか?
特に若い世代の人たちに読んで欲しいなと思っています。手書きの図や小さな文字で事細かに説明を書いたページは服創りの基礎を伝えられればと思い構成しました。既製品ではなく、オートクチュールやウェディングドレスのような体に密着する服、一人の女性のために生まれる服の創り方の指南書であり、それがまた既製品の服創りに活かされる…というような。以前、東京造形大学で特任教授をしていて、「教えるというのは学ぶこと」とは、本当だなと思いました。教科書に描かれているようなメソッドも大切ですが、それだけではなく、基盤となるものや考え方や女性の体の捉え方を伝えたいです。詳細に書き過ぎて文字が小さくなってしまったページもありますが(笑)、ファンションや造形、ものづくりを学んでいる人にとって何か参考になれば。そして思考と感覚が重なり合って、圧倒するような造形美が生まれるということを伝えたかったのです。(思考することを昔の私のように恥じないで欲しいのです。)
ーー最後に、今進行中のコラボレーション企画などあれば少し教えて頂けませんか?
図学系、アート系、映像系、デジタル系、工学系の教授たちと一緒に、生命体のような服創りをしてみたいねって話し合っています。まだ詳細は秘密なんですが、私自身もワクワクしながら進めていますよ。発表の時を楽しみにしていて下さい!
ファッション×サイエンスで示す“美の普遍性”とは。ウェディングドレスデザイナー松居エリ--1/2【INTERVIEW】に戻る。
6年掛かりで完成した同書に込める強い想いの礎には、デザインに対する情熱と愛情、そして未来を担う若い世代へのメッセージがあった。
ーー“美”に対するこだわりや完璧なドレスを創るまでの過程を見て、松居さんの探究心には脱帽しました。当たり前のことに対しても疑問を持ち、解明していく姿はデザイナーであり研究者であり職人のようですね。そこまで松居さんを突き動かすものは一体何なのでしょうか?
私にとって服創りの原動力となっているのは、ウェディングドレスを着て輝く女性の姿。服がしっくりきた時の女性の高揚感は、その場の空気を変え、ドレスまで官能的に息づき始めるんです。それは彼女が彼女自身に出会う瞬間、「自己」になることを許された服、“感覚する服”なのです。服がこんなにも女性にとってかけがえのない存在であるのは、服が彼女自身を創るからでしょう。そんな女性たちの微笑みをまっすぐに目指し服創りをしていると、多くの疑問が浮かんでくるんです。気になるといても立ってもいられないというか。私にとっては自然のことなんですよね、知りたいから探るっていうのは。痒いから掻くっていう感じです(笑)。
ーー同書を拝読すると、理数系が得意でない私でも美に対する新たな解釈に気づき、服を違った視点で見る楽しさに触れたような気がしています。
私も、もともと数学ができなかったんですよ。高校からアートを専攻していて、数学の授業はボイコットしていました(笑)。前述したように科学と数学との衝撃的な出会いを経て、それまでとは世界が違って見え始めたんです。思考による創造への感動を知った私はますます探求するようになりました。私が体験したように、この本を手に取り読んで下さった方が、疑問に思ったり面白いと感じてもらえれば嬉しいです。
ーー作品集の出版に至った経緯を教えて下さい。
私のファッションショーを見に来て下さった工作舎の編集の方が、声を掛けて下さったんです。それから、私とスタッフで1年ほどで構成を仕上げました。その後デザインや編集など、細かい部分にまでこだわった結果、出版までに5年も掛かってしまいましたが。
ーー6年掛かりの集大成はまさに永久保存版といった感じですね。展開図としての服のパターン、独自の衣服造形設計論など詳細に説明を加えたページもあります。同書を通して伝えたいこととは何ですか?
特に若い世代の人たちに読んで欲しいなと思っています。手書きの図や小さな文字で事細かに説明を書いたページは服創りの基礎を伝えられればと思い構成しました。既製品ではなく、オートクチュールやウェディングドレスのような体に密着する服、一人の女性のために生まれる服の創り方の指南書であり、それがまた既製品の服創りに活かされる…というような。以前、東京造形大学で特任教授をしていて、「教えるというのは学ぶこと」とは、本当だなと思いました。教科書に描かれているようなメソッドも大切ですが、それだけではなく、基盤となるものや考え方や女性の体の捉え方を伝えたいです。詳細に書き過ぎて文字が小さくなってしまったページもありますが(笑)、ファンションや造形、ものづくりを学んでいる人にとって何か参考になれば。そして思考と感覚が重なり合って、圧倒するような造形美が生まれるということを伝えたかったのです。(思考することを昔の私のように恥じないで欲しいのです。)
ーー最後に、今進行中のコラボレーション企画などあれば少し教えて頂けませんか?
図学系、アート系、映像系、デジタル系、工学系の教授たちと一緒に、生命体のような服創りをしてみたいねって話し合っています。まだ詳細は秘密なんですが、私自身もワクワクしながら進めていますよ。発表の時を楽しみにしていて下さい!
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