京都で史上最大規模となる、国際的な現代アート展覧会「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015」が5月10日まで開催中だ。
この国際展では世界の一線級で活躍する、36組38名の作家による作品が市内で一斉に展示される。全7会場を合わせた展示スペースは1万平方メートル以上。開催に先駆けてすべての参加アーティストは京都に招聘され、この地の歴史や文化から得たインスピレーションを元に、新たな作品に挑戦している。
中でも、メイン会場となる京都市美術館では、総勢31組の作品を展示。ニューヨークを拠点に彫刻やドローイングなどを、作品の変化を通じて制作過程も含めて発表しているブラント・ジュンソー(Brandt Junceau)は今回、収蔵品の展示ケースに発想を得た人体像「Liebespaar」を出展する。
一方、原爆の被害を受けた広島市立袋町小学校の外壁に残された被爆者のメッセージに着想を得た「カフェ・リトル・ボーイ」を展示するのは、公共空間や環境の変容に注目したインスタレーションやパフォーマンスを手掛けるジャン=リュック・ヴィルムート(Jean-Luc Vilmouth)。倉智敬子+高橋悟は、関係性と意味が解体された法廷、監獄の白い構造体、庭石、白い海図の配置によって、パラドキシカルな空間(コトバの迷路)を構築した「装飾と犯罪-Sense/Common」を展示する。
また、今回がアジアでは初の展示となるグシュシュタヴォ・シュベリジョン(Gustavo Speridiao)は、米グラフ誌『LIFE』の写真集『The Great LIFE Photographers』に、言葉や絵をまるで落書きのように書き加えたドローイング作品を出展。社会理論学の領域から、詳細な調査と思想に基づく作品を生み出す徐坦(Xu Tan)は、京都での調査を元にしたビデオインスタレーションとテキストを組み合わせた読書空間「社会植物学-種と血筋」を展開する。
その他の主な出展者はレクチャー/パフォーマンスという手法で、美術作品における約束事などの関係性を解体し、そのプロセス自体を作品化しているヘトヴィヒ・フーベン(Hedwig Houben)。ハプニングやパフォーマンスを通じて、マルコム・マクラーレン賞など様々なアート賞を受賞してきたラグナル・キャルタンソン(Ragnar Kjartansson)。サウジアラビアの若手芸術家集団「イブン・アシール」のリーダーにして、中東と西洋をつなぐ現代アートの非営利組織「エッジ・オブ・アラビア」の創設者アフメド・マータル(Ahmed Mater)など。
また、会場の入り口には、やなぎみわが手掛けた巨大な移動舞台車が登場。大陳列室には高さ15mに及ぶ竹製の塔に、街の子供達が作った大量のオブジェが飾られた。これらの作品を見た後は、「アラビカ 京都」のポップアップカフェで一息つくことが出来る。なお、スタッフのユニフォームは、「クロスカンパニー」の石川康晴が手掛けた。
一方で、もう一つの主会場となる京都府京都文化博物館では、名画や映画の登場人物などを自画像的に収めることで知られる森村泰昌の写真作品を展示。今回はベラスケスの傑作「ラス・メニーナス」などを収蔵するブラド美術館を舞台とした「侍女たちは夜に甦る」、作品が疎開された第2次世界大戦下のエルミタージュ美術館をテーマとした「Hermitage 1941-2014」の2点が出展される。
これに、ドミニク・ゴンザレス=フォルステルを加えた、2名の作品が京都府京都文化博物館で公開される。その他、京都芸術センターでは、アーノウト・ミックが映像インスタレーションを発表。二条城の北に位置する堀川団地には、ピピロッティ・リストや笹本晃、ブラント・ジュンソーらの作品が展示される。更に、鴨川デルタにはスーザン・フィリップスによる音の作品が、大垣書店烏丸三条店ではショーウインドーにリサ・アン・アワーバックのアートが飾られる予定だ。
なお、芸術祭に合わせて京都府京都文化博物館フィルムシアターでは、20作品以上のシネマ作品を公開。そのうちの一つが、アレクサンダー・ザルテン(Alexander Zahlten)の「アジアを照らさないミラーボール-日本映画のアジア」だ。今回のプログラムに合わせて、ザルテンは60年代から近年までの日本映画をピックアップ。それらの作品の中で、日本と外国がどのようにイメージされてきたかを検証。東アジアにおける複雑怪奇な近代史を、非当事者のザルテンが映画を元に紐解いていく。
その他、森村泰昌とドミニク・ゴンザレス=フォルステルによるトークプログラム、蔡國強の「子どもダ・ヴィンチ」によるワークショップ、参加作家によるレクチャーなども行われ、現代アートの展示とともに京都をアーティスティックに盛り上げてくれそうだ。
【イベント情報】
PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015
会場:京都市美術館、京都府京都文化博物館、京都芸術センター、堀川団地(上長者町棟)、鴨川デルタ(出町柳)、河原町塩小路周辺、大垣書店烏丸三条店
会期:3月7日から5月10日
料金:一般1,800円、大学生/70歳以上1,000円
休館日:月曜日(5月4日は開館。京都府京都文化博物は4月27日開館)