2015年『フィガロジャポン』は25周年を迎えた。既に昨年から周年企画を打ち出している。25周年はどんな意味を持つのか西村編集長に尋ねると、
「まず原点に立ち返ろうと思いました。それには創刊当時から『フィガロジャポン』のページにそっと忍ばせている『私、心はパリ生まれ!』という感覚を、読者と共有していきたいと思いました」という、読者へのメッセージともとれる答えが返ってきた。
そこに並んだキーワードは「パリジェンヌ気取り」「パリ好き」「(綺麗なもの、美味しいもの大好きな)パリのオプティミスト」。これらの言葉は、何割かの日本女性の心の中に確実にしまい込まれているフレーズに違いない。
「フィガロジャポンが創刊した頃のパリはまだまだ遠く、東京でパリを感じたいなら広尾のフォブ・コープに行きデュラレックスのグラスを買うだけで、もうパリ気分。パリにでも行こうものなら、キャンディーの包み紙から花屋が包んでくれた新聞紙まで持ち帰り大切にしていました」と西村編集長も懐かしむ様子。
25周年イヤーの重要コンテンツの一つも、ずばり「パリ」。パリにまつわるエトセトラというわけだ。そこで、山内マリコの小説『ここは退屈迎えに来て』を読んだ西村編集長がひらめいたのは、連載小説『パリ行ったことないの』だった。年齢も職業も違うパリに行ったことのない女性たちが「パリ」を語るショートストーリーの連載を2013年10月号からスタートさせた(この連載はすでに書籍化され、CCCメディアハウスから出版されている)。
また、「私のパリ」をイメージしてfigaro25というハッシュタグをつけてInstagram投稿を呼びかける企画だ。たくさんの応募を見ると、口に出して言わなくても、1人に一つ「パリ」のイメージが存在していることに感激したと西村編集長はいう。
時代は変わり、現在の若い女性たちは海外に憧れることもなく、インターネットのバーチャルな世界で全てが手に入る仕組みに慣れているし、ネットで検索しパリ情報なら何もかも知り尽くしている、妄想だけでパリへは何度も渡航済み、そんな女性たちにも『フィガロジャポン』が提案する「パリ」をぜひ感じて欲しいという思いが伝わってきた。
西村編集長が言う「パリ」とは、実は女性の心にある「憧れ」や「好奇心」や「キラキラとした乙女心」を指しているのではないかと思うようになった。その「パリ」に近い感覚は「モード」という言葉にも潜んでいる。だから「モード」もやめられない、のかもしれない。