世界中のフェスや音楽番組のMCとして活躍する音楽・映画パーソナリティ奥浜レイラさんに今月注目すべきアーティストを訊く、音楽コラム連載。
ストリーミングサービスが広がり、国内のみならず世界の音楽トレンドもリアルタイムでキャッチできる時代。Spotifyのトップチャート(最も再生回数が多い曲)、バイラルチャート(SNSでいま話題の曲)を賑わす、いま旬のアーティストは? 今回は、「フジロックフェスティバル '19(FUJI ROCK FESTIVAL '19)」を振り返る。
今年も7月26日から28日の3日間、新潟県湯沢町の苗場スキー場で開催された「フジロックフェスティバル '19」。前夜祭も含めると、なんと13万人が来場。今年は平日である金曜日のチケットも開催の約1ヶ月前には完売し、全日程を通して会場は大盛り上がりでした。
天候とのお付き合いが欠かせないのがフジロックですが、今年は台風6号の影響もあって1日目から雨模様。2日目には雨がかなり強くなり、雨具を装備していても立っていることさえキツイ時間もありました。(個人的にも過去10回の参加で正直一番堪えるフジロックだったかも)
それでも、今年も胸にガツンと届く素晴らしいパフォーマンスを目撃でき、忘れられない景色がいくつもあるので、今回はその中から今年のフジを象徴するような3組をご紹介します!
まずは1日目のグリーンステージに登場したジャネール・モネイ(Janelle Monáe)。
今年の最大の目玉と言ってもいい、待ちに待った初来日&フジロック出演で、開催前から「今年は絶対ジャネールを観なければ! 」という意気込んだ声も多く聞かれました。もちろん私もその一人。
心の準備をしていったつもりでも、レオタードに赤いニーハイブーツを合わせ、軍物のようなジャケットと帽子という衣装に身を包んだ彼女がステージに立った時、思わず声が出てしまいましたし、大きめのため息が会場中から漏れ聞こえるくらいの神々しさとスター性。
曲によってはギターを弾いたり、ダンサーとともに激しく踊る彼女に終始釘付け。
「Primetime」という曲の最後でギタリスト(ちなみにこの方、メイシオ・パーカーの甥っ子さんだそう)がプリンスのパープル・レインをプレイし、彼女を形成しているルーツへの敬意も感じました。
何度か入ったMCの中で、人と違うことを恐れずに自分らしく生きること、自己愛を持つことの素晴らしさや、世界中の女性たちやLGBTQコミュニティー、障害を持つ人々や労働者階級の人々、移民の人々などの権利を抑圧する権力と戦わなければと力強く話していて、彼女の信念をしっかり受けとり感銘を受けました。
それだけのメッセージを込めながらも、エンタテイメントとして最後まで楽しませてくれた彼女に心からの拍手を。ちなみに私のお気に入り曲は、MVでもお馴染みの女性器の形を模したパンツで登場し歌った「Pynk」。強さと可愛らしさ、ユーモアも兼ね備えた最高のオピニオン・リーダーにパワーをもらった今年の個人的ベストアクトです。
同日レッド・マーキーのヘッドライナーとして登場したミツキ(Mitski)も、胸に迫る強烈なパフォーマンスを披露。
9月でライブ活動を無期限休止するとアナウンスされていることもあって、日本で観られる最後のステージかもしれないという寂しさを含んだ緊張感がテント内に漂っていましたし、バンドの機材とともにステージに用意されたテーブルと椅子が異様な存在感を放っていました。
白い無地のTシャツに黒い膝上のレギンス、両脚に黒い膝当てをつけた彼女がステージ袖から登場し、中央に鎮座したテーブルに向かってゆっくりと歩きながら静かに歌いはじめるとミツキ・ワールドが一気に出現。
テーブルの上で寝そべって足を動かしたり、器械体操の動きを取り入れたようなコンテンポラリーな振り付けに、心からそのまま取り出したような生々しい歌声が重なり、彼女の歌詞のやるせなさや葛藤と見事にマッチして観ている私たちも心臓が掴まれて苦しくなるのだけれど、その繊細な表現から目が離せない。「ものすごいものを観ている! 」という雰囲気が会場全体に流れていました。
ニューヨークを拠点にしている彼女ですが、アメリカ人と日本人の両親のもと生まれ育っているので日本でのMCは日本語。雨の中テントで生活をするフジロッカーを労ったり、ライブの緊張感が少し和むMCでした。
これでお別れはあまりにも悲しすぎるので、いつでも前言撤回して戻ってきてほしいと願う気持ちで見送ったのは私だけではないはず。
そして、今年のフジロックでSIAのステージもものすごいインパクトでした。
世界的に見ても今年はライブ活動の少ないSIAが、2日目のヘッドライナーとして登場。未曾有の豪雨の中にも関わらず、この貴重なステージを見逃すまいという観客でグリーンステージはほとんど隙間のない状態。
トレードマークの金髪と黒髪のボブヘアに白ドレス、白いリボンに白いマイクでシンプルな舞台に姿を現したと思ったら、そのドレスの裾から生まれるように登場したのはSIAと同じ髪型をした彼女の分身、ダンサーのマディ・ジーグラー。
その時点で目の前で起こる演劇的なストーリーにワクワクが止まらなかった。
ステージでは歌うSIA本人が前面に出てくることはなく、物語を身体で表現するのはダンサーたちのみでしたが、その全員がSIAの意志を吹き込まれた分身であるということ、表現されることのすべてがステーリーテラーであるSIAによるものということにゾクゾクしていました。
ステージ横のスクリーンには常に舞台演劇のような映像が投影されているのですが(これがリアルタイムのものなのかどうか、注意深く観ていると色々と気づいたこともありましたが、野暮なのでここでは明言を避けようと思います)、アンコールのラストに舞台裏が映り多少の種明かしがあったのも、そしてそこにSIA本人の顔がちょこっと映っていた(! )のもチャーミングな演出でした。
とにかく彼女の歌声に圧倒され、世界観の徹底ぶりに震え、楽曲の普遍性にさらにファンになった見事と言うしかないパフォーマンスでした。
演劇的なアプローチにも重要なメッセージが詰まっていると思うので、今度はぜひ大きな屋内の会場でゆっくり観たいです。
来年のフジロックフェスティバルは東京オリンピックの関係で8月21日、22日、23日と例年と日程がズレるようなので、次の開催まで少し待たなければならないのか・・と軽く絶望しましたが、この感動を胸に来年の開催日までお仕事がんばりましょうね! そして、今年も活力をありがとう! フジロック!
Spotifyで聴けるフジロックフェスティバル '19の公式プレイリスト、配信中!
ストリーミングサービスが広がり、国内のみならず世界の音楽トレンドもリアルタイムでキャッチできる時代。Spotifyのトップチャート(最も再生回数が多い曲)、バイラルチャート(SNSでいま話題の曲)を賑わす、いま旬のアーティストは? 今回は、「フジロックフェスティバル '19(FUJI ROCK FESTIVAL '19)」を振り返る。
奥浜レイラの音楽のすすめ vol.4
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今年も7月26日から28日の3日間、新潟県湯沢町の苗場スキー場で開催された「フジロックフェスティバル '19」。前夜祭も含めると、なんと13万人が来場。今年は平日である金曜日のチケットも開催の約1ヶ月前には完売し、全日程を通して会場は大盛り上がりでした。
天候とのお付き合いが欠かせないのがフジロックですが、今年は台風6号の影響もあって1日目から雨模様。2日目には雨がかなり強くなり、雨具を装備していても立っていることさえキツイ時間もありました。(個人的にも過去10回の参加で正直一番堪えるフジロックだったかも)
それでも、今年も胸にガツンと届く素晴らしいパフォーマンスを目撃でき、忘れられない景色がいくつもあるので、今回はその中から今年のフジを象徴するような3組をご紹介します!
まずは1日目のグリーンステージに登場したジャネール・モネイ(Janelle Monáe)。
今年の最大の目玉と言ってもいい、待ちに待った初来日&フジロック出演で、開催前から「今年は絶対ジャネールを観なければ! 」という意気込んだ声も多く聞かれました。もちろん私もその一人。
心の準備をしていったつもりでも、レオタードに赤いニーハイブーツを合わせ、軍物のようなジャケットと帽子という衣装に身を包んだ彼女がステージに立った時、思わず声が出てしまいましたし、大きめのため息が会場中から漏れ聞こえるくらいの神々しさとスター性。
曲によってはギターを弾いたり、ダンサーとともに激しく踊る彼女に終始釘付け。
「Primetime」という曲の最後でギタリスト(ちなみにこの方、メイシオ・パーカーの甥っ子さんだそう)がプリンスのパープル・レインをプレイし、彼女を形成しているルーツへの敬意も感じました。
何度か入ったMCの中で、人と違うことを恐れずに自分らしく生きること、自己愛を持つことの素晴らしさや、世界中の女性たちやLGBTQコミュニティー、障害を持つ人々や労働者階級の人々、移民の人々などの権利を抑圧する権力と戦わなければと力強く話していて、彼女の信念をしっかり受けとり感銘を受けました。
それだけのメッセージを込めながらも、エンタテイメントとして最後まで楽しませてくれた彼女に心からの拍手を。ちなみに私のお気に入り曲は、MVでもお馴染みの女性器の形を模したパンツで登場し歌った「Pynk」。強さと可愛らしさ、ユーモアも兼ね備えた最高のオピニオン・リーダーにパワーをもらった今年の個人的ベストアクトです。
同日レッド・マーキーのヘッドライナーとして登場したミツキ(Mitski)も、胸に迫る強烈なパフォーマンスを披露。
9月でライブ活動を無期限休止するとアナウンスされていることもあって、日本で観られる最後のステージかもしれないという寂しさを含んだ緊張感がテント内に漂っていましたし、バンドの機材とともにステージに用意されたテーブルと椅子が異様な存在感を放っていました。
白い無地のTシャツに黒い膝上のレギンス、両脚に黒い膝当てをつけた彼女がステージ袖から登場し、中央に鎮座したテーブルに向かってゆっくりと歩きながら静かに歌いはじめるとミツキ・ワールドが一気に出現。
テーブルの上で寝そべって足を動かしたり、器械体操の動きを取り入れたようなコンテンポラリーな振り付けに、心からそのまま取り出したような生々しい歌声が重なり、彼女の歌詞のやるせなさや葛藤と見事にマッチして観ている私たちも心臓が掴まれて苦しくなるのだけれど、その繊細な表現から目が離せない。「ものすごいものを観ている! 」という雰囲気が会場全体に流れていました。
ニューヨークを拠点にしている彼女ですが、アメリカ人と日本人の両親のもと生まれ育っているので日本でのMCは日本語。雨の中テントで生活をするフジロッカーを労ったり、ライブの緊張感が少し和むMCでした。
これでお別れはあまりにも悲しすぎるので、いつでも前言撤回して戻ってきてほしいと願う気持ちで見送ったのは私だけではないはず。
そして、今年のフジロックでSIAのステージもものすごいインパクトでした。
世界的に見ても今年はライブ活動の少ないSIAが、2日目のヘッドライナーとして登場。未曾有の豪雨の中にも関わらず、この貴重なステージを見逃すまいという観客でグリーンステージはほとんど隙間のない状態。
トレードマークの金髪と黒髪のボブヘアに白ドレス、白いリボンに白いマイクでシンプルな舞台に姿を現したと思ったら、そのドレスの裾から生まれるように登場したのはSIAと同じ髪型をした彼女の分身、ダンサーのマディ・ジーグラー。
その時点で目の前で起こる演劇的なストーリーにワクワクが止まらなかった。
ステージでは歌うSIA本人が前面に出てくることはなく、物語を身体で表現するのはダンサーたちのみでしたが、その全員がSIAの意志を吹き込まれた分身であるということ、表現されることのすべてがステーリーテラーであるSIAによるものということにゾクゾクしていました。
ステージ横のスクリーンには常に舞台演劇のような映像が投影されているのですが(これがリアルタイムのものなのかどうか、注意深く観ていると色々と気づいたこともありましたが、野暮なのでここでは明言を避けようと思います)、アンコールのラストに舞台裏が映り多少の種明かしがあったのも、そしてそこにSIA本人の顔がちょこっと映っていた(! )のもチャーミングな演出でした。
とにかく彼女の歌声に圧倒され、世界観の徹底ぶりに震え、楽曲の普遍性にさらにファンになった見事と言うしかないパフォーマンスでした。
演劇的なアプローチにも重要なメッセージが詰まっていると思うので、今度はぜひ大きな屋内の会場でゆっくり観たいです。
来年のフジロックフェスティバルは東京オリンピックの関係で8月21日、22日、23日と例年と日程がズレるようなので、次の開催まで少し待たなければならないのか・・と軽く絶望しましたが、この感動を胸に来年の開催日までお仕事がんばりましょうね! そして、今年も活力をありがとう! フジロック!
世界中のSNSで今一番話題の曲を知れるバイラルチャートは毎日更新! ぜひチェックを。
【プロフィール】
奥浜レイラ
音楽・映画パーソナリティ。映画の舞台挨拶や、音楽番組のMCとしても活動中。現在、女性誌『GINZA』の新譜紹介コーナーの執筆を担当。海外の音楽フェスに足を運ぶのが趣味。
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奥浜レイラ
音楽・映画パーソナリティ。映画の舞台挨拶や、音楽番組のMCとしても活動中。現在、女性誌『GINZA』の新譜紹介コーナーの執筆を担当。海外の音楽フェスに足を運ぶのが趣味。
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