2019年令和最初のクリスマス、表参道ヒルズに“水の魔法”により、刻々と変化するイルミネーションが現れます。吹抜け大階段の空間全体に、約40個の特殊な水槽に囲まれた高さ約7mのクリスマスツリー。水槽に敷き詰められているのは、水中では水と一体化し見えなくなるという特性を持つ「吸水性ポリマー」です。各水槽の水位をランダムに調整することで、水槽の面によってツリーが見え隠れし、見る時間や角度によって表情が多様に移り変わります。
デザインを手掛けたのは、日常の中に潜む事象や驚きを表現し、見る人に新しい視点と価値を提示する作品を国内外で発表しているコンテンポラリーデザインスタジオ「we+(ウィープラス)」。瞬間ごとに変化し続けるクリスマスツリーは、時間を忘れてその変わりゆく様子をずっと見つめていたくなるような、幻想的な美しさです。
“水”の特性を活かし、アートやデザインの視点を取り入れ、独創的なイルミネーションを作り上げたお2人に、今回の制作に向けた想いについてお話を伺いました。
FASHION HEADLINE(以下、FH):「we+」において、お2人の役割分担はあるのでしょうか?
安藤:スタジオには僕ら含めて4人が所属しているのですが、アイデアを出し合い、実験を重ねて、ディスカッションした上で指針を立てます。そこからデザインは僕が先導し、コンセプトやコピーライトは林が先導する。ただしそこに垣根はなく、お互いの内容についても考えながら議論を続けます。
林:僕らの制作の特徴は“実験”です。あるアイデアが本当によいかどうかは実際に作ってみないと分からない。実験的に作ってみて、その結果への判断は2人で行い、実務的なところで少し分担が生じる程度です。
FH:今回のイルミネーションは、どのように発想されたのでしょう?
安藤:アイデアを出し合う中で、「吸水性ポリマー」という種がポロっと出てきました。吸水性ポリマーは透明度が高く、水中では水と一体化して見えなくなる。また、光を当てると美しく反射する特性があります。徐々に全体像が見えてきたタイミングでコンセプトをまとめ、表現との間を行き来しながらブラッシュアップしていきました。
林:難しいのが、吸水性ポリマーと水、オーナメント、それに対する光の関係です。遠くから見ると中に大きなツリーが存在しているように見えるのですが、実は架空のツリー。吸水性ポリマーに対して、適切な光の距離、オーナメントの配置などを、かなり緻密に計算しました。
FH:“水の魔法に誘われるクリスマス”という今回のクリスマスイルミネーションのテーマは、意外性がありますね。
安藤:誰も見たことのないクリスマスツリーを、前例のないアプローチで作るという、ゴールの見えない作業は面白くもあり、挑戦でもありました。水は日常的に誰もが触れている物質ですから、見る人も作品に入り込みやすい。吸水性ポリマーも、芳香剤や保冷剤として生活に溶け込んだ素材であることにも注目しました。
林:僕たちは手法として“時間”をよく作品に取り入れるのですが、変化し続けるツリーを作りたいという気持ちがありました。さらに夏のイメージが強い“水”をあえてクリスマスという空間に持ち込むことで、いつもとは違った風景が見られるのではないかと思ったのです。
FH:ぜひ見て欲しいところは?
安藤:水が溜まっていく時のツリーの変化です。設置場所での検証から多面的な見方が可能なことに気がつき、「この面白さを伝えたい! 」と思いました。ですから上から下から、各フロアから、いろいろな場所から見て頂きたいですね。
林:どのタイミングで訪れても、いずれかの水槽の水が動いています。まず全体を見て、近づいて実際に水が入っていくところを見て頂くと、ツリーの表情が劇的に変わる驚きを感じて頂けるのではないかと思います。
FH:「目置き」という造語をキーワードに制作されていますね。
安藤:「目置き」とは、焚き火であったり、水面のきらめきであったり、時間によって移り変わる形や表情を、ぼんやりと眺める行為を指しています。都市生活はつねに情報と接して頭も心も休まる暇がない。ぼんやり何かを見続ける、あるいはものの細部までよく見るという、目の前の現象に意識を集中させることが失われています。僕らのDNAに刻み込まれている感動体験は、現象に目を奪われてしまうこと。それが現代に必要だと感じます。
林:「目置き」を念頭に制作すると、立ち止まって見てくださる方が多いのも事実です。アートやデザインは「非言語コミュニケーション」。国内外問わず、言葉を介さずとも作品と鑑賞者がコミュニケーションできるのは、人の心に手が届く強いメディアだと思います。可能性を広げながら、まだ見ぬ新しい世界を開拓していきたいです。
デザインを手掛けたのは、日常の中に潜む事象や驚きを表現し、見る人に新しい視点と価値を提示する作品を国内外で発表しているコンテンポラリーデザインスタジオ「we+(ウィープラス)」。瞬間ごとに変化し続けるクリスマスツリーは、時間を忘れてその変わりゆく様子をずっと見つめていたくなるような、幻想的な美しさです。
“水”の特性を活かし、アートやデザインの視点を取り入れ、独創的なイルミネーションを作り上げたお2人に、今回の制作に向けた想いについてお話を伺いました。
FASHION HEADLINE(以下、FH):「we+」において、お2人の役割分担はあるのでしょうか?
安藤:スタジオには僕ら含めて4人が所属しているのですが、アイデアを出し合い、実験を重ねて、ディスカッションした上で指針を立てます。そこからデザインは僕が先導し、コンセプトやコピーライトは林が先導する。ただしそこに垣根はなく、お互いの内容についても考えながら議論を続けます。
林:僕らの制作の特徴は“実験”です。あるアイデアが本当によいかどうかは実際に作ってみないと分からない。実験的に作ってみて、その結果への判断は2人で行い、実務的なところで少し分担が生じる程度です。
FH:今回のイルミネーションは、どのように発想されたのでしょう?
安藤:アイデアを出し合う中で、「吸水性ポリマー」という種がポロっと出てきました。吸水性ポリマーは透明度が高く、水中では水と一体化して見えなくなる。また、光を当てると美しく反射する特性があります。徐々に全体像が見えてきたタイミングでコンセプトをまとめ、表現との間を行き来しながらブラッシュアップしていきました。
林:難しいのが、吸水性ポリマーと水、オーナメント、それに対する光の関係です。遠くから見ると中に大きなツリーが存在しているように見えるのですが、実は架空のツリー。吸水性ポリマーに対して、適切な光の距離、オーナメントの配置などを、かなり緻密に計算しました。
FH:“水の魔法に誘われるクリスマス”という今回のクリスマスイルミネーションのテーマは、意外性がありますね。
安藤:誰も見たことのないクリスマスツリーを、前例のないアプローチで作るという、ゴールの見えない作業は面白くもあり、挑戦でもありました。水は日常的に誰もが触れている物質ですから、見る人も作品に入り込みやすい。吸水性ポリマーも、芳香剤や保冷剤として生活に溶け込んだ素材であることにも注目しました。
林:僕たちは手法として“時間”をよく作品に取り入れるのですが、変化し続けるツリーを作りたいという気持ちがありました。さらに夏のイメージが強い“水”をあえてクリスマスという空間に持ち込むことで、いつもとは違った風景が見られるのではないかと思ったのです。
FH:ぜひ見て欲しいところは?
安藤:水が溜まっていく時のツリーの変化です。設置場所での検証から多面的な見方が可能なことに気がつき、「この面白さを伝えたい! 」と思いました。ですから上から下から、各フロアから、いろいろな場所から見て頂きたいですね。
林:どのタイミングで訪れても、いずれかの水槽の水が動いています。まず全体を見て、近づいて実際に水が入っていくところを見て頂くと、ツリーの表情が劇的に変わる驚きを感じて頂けるのではないかと思います。
FH:「目置き」という造語をキーワードに制作されていますね。
安藤:「目置き」とは、焚き火であったり、水面のきらめきであったり、時間によって移り変わる形や表情を、ぼんやりと眺める行為を指しています。都市生活はつねに情報と接して頭も心も休まる暇がない。ぼんやり何かを見続ける、あるいはものの細部までよく見るという、目の前の現象に意識を集中させることが失われています。僕らのDNAに刻み込まれている感動体験は、現象に目を奪われてしまうこと。それが現代に必要だと感じます。
林:「目置き」を念頭に制作すると、立ち止まって見てくださる方が多いのも事実です。アートやデザインは「非言語コミュニケーション」。国内外問わず、言葉を介さずとも作品と鑑賞者がコミュニケーションできるのは、人の心に手が届く強いメディアだと思います。可能性を広げながら、まだ見ぬ新しい世界を開拓していきたいです。
【プロフィール】
we+ (ウィープラス)/ コンテンポラリーデザインスタジオ
林登志也と安藤北斗により2013年に設立。リサーチと実験に立脚した独自の表現手法で、新たな視点と価値をかたちにするコンテンポラリーデザインスタジオ。Gallery S. Bensimon(パリ)やRossana Orlandi(ミラノ)などのデザインギャラリーに所属。国内外での作品発表の他、多様なバックグラウンドを持つメンバーそれぞれの強みと、日々の研究から得られた知見を生かし、インスタレーションをはじめとしたコミッションワーク、ブランディング、プロダクト開発、グラフィックデザインなど、様々な企業や組織のプロジェクトを手掛ける。「ELLE DECOR Young Designer of the Year」他、「KUKAN DESIGN AWARD」金賞、「DSA Design Award」金賞など、国内外で受賞多数。
オフィシャルサイト: https://weplus.jp/
Instagram:@weplus.jp
【問い合わせ】
OMOTESANDO HILLS CHRISTMAS 2019
期間 : 11月13日〜12月25日
点灯時間 : 11:00〜23:00
※特別演出は、初回11:30〜最終回22:30(約5分間・30分ごとに実施)
※日曜日(12月22日を除く)は点灯時間が22:00までとなり、特別演出の最終回は21:30となる。
問い合わせ先 : 03-3497-0310(総合インフォメーション)
イベント詳細:https://www.omotesandohills.com/events/event/2019/006148.html
we+ (ウィープラス)/ コンテンポラリーデザインスタジオ
林登志也と安藤北斗により2013年に設立。リサーチと実験に立脚した独自の表現手法で、新たな視点と価値をかたちにするコンテンポラリーデザインスタジオ。Gallery S. Bensimon(パリ)やRossana Orlandi(ミラノ)などのデザインギャラリーに所属。国内外での作品発表の他、多様なバックグラウンドを持つメンバーそれぞれの強みと、日々の研究から得られた知見を生かし、インスタレーションをはじめとしたコミッションワーク、ブランディング、プロダクト開発、グラフィックデザインなど、様々な企業や組織のプロジェクトを手掛ける。「ELLE DECOR Young Designer of the Year」他、「KUKAN DESIGN AWARD」金賞、「DSA Design Award」金賞など、国内外で受賞多数。
オフィシャルサイト: https://weplus.jp/
Instagram:@weplus.jp
【問い合わせ】
OMOTESANDO HILLS CHRISTMAS 2019
期間 : 11月13日〜12月25日
点灯時間 : 11:00〜23:00
※特別演出は、初回11:30〜最終回22:30(約5分間・30分ごとに実施)
※日曜日(12月22日を除く)は点灯時間が22:00までとなり、特別演出の最終回は21:30となる。
問い合わせ先 : 03-3497-0310(総合インフォメーション)
イベント詳細:https://www.omotesandohills.com/events/event/2019/006148.html